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あなたは運命のつがい  作者: 緑翼馬
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ジンキス国から齎されたのは、暗雲が直ぐそこに迫っている事


社交界から半年後、ジンキス国で内部分裂が勃発。


無駄な争いを好まない者達と常に暴れていたい者達との間で、長い間張り詰めていた琴線が切れてしまったのだ。好戦的な者は同志を同じくする者達を引き連れ、ジンキス国とログス国を隔てる、大河の様な広大な湖の中洲に強固な砦を築き上げ籠城、湖を渡ろうものなら、問答無用で数え切れぬ程の矢が降り注ぐ。

甲板は、対抗するには狭すぎるし、降りれば身動きの取れない水の中だ、それこそ狙い放題の的に成り果てる。

無論、迂回ルートは存在する。

強靭な足腰とスタミナを誇るケンタウロス一族が、休み無しの全速力で駆けて7日以上、移動手段が限られる者や馬車しか無い者はどれだけ掛かるのか分からぬ陸地に。


船を使えば直進で3日の距離が……だ。



故に、出会いから11年。

国同士の行事が無ければ容易に行き来する事が出来なくなり、マノンとセイが出会えた日は片手で足りる。


「セイ様。お久しぶりです。お元気でしたか?」


「あ……あぁ。はい!えっ、えっと……。はい。元気です。マ、マママ……。マノン様も、元気で、嬉しい……です」


久々に顔を合わせても、義務とマナーに縛られた当たり障りの無い会話。

滞在は、最長5日程あるが直ぐに帰路に着かなければ国務が滞ってしまう。その間に誘うなど不器用なセイが実行出来る筈が無い。



「ワシ等が動かんから、反戦国の連中が不穏な動きを見せ始めよった。陸地では無双のケンタウロス一族も水上は苦手じゃろ?十分に気を付けてくれ」


「騎士団も全力を尽くしていますが、砦の築かれた場所が悪く、戦況は芳しくありません。王も、先手を取られたと、非常に憤慨しており事態の収拾を急いでおります」


「ああ。水中ではこの足は無用の産物。踏ん張りが利かないと弓も放てず、走る事も出来ん」


「デカいだけの的は、さぞかし射ち甲斐がありましょうよ。あぁ。マノン?セイと遠駆けに行ってらっしゃいな。身体が動く内は、小難しい話なんて親の役割よ?」


双方の親の後ろで直立不動だった二人は、気恥ずかしさで同時に顔を伏せたので、お互いの顔が赤くなっている事に気付きもしない。


マノンが視線だけ上げると、セイが父親から許可を貰ったのが確認出来たので、扉へ向かって一歩を踏み出した時、足を絡ませてよたつきながらも失礼に当たらない速さで走り、先に扉を開けて待ち構える姿に驚き呆然としてしまう。でも、焦りで垂れてしまった耳と喜びで激しく揺れる尻尾を見付けてしまい思わず、彼女が声を出して笑ってしまうと、彼も釣られて笑い出した。



笑い声が遠ざかって行くなか、若い二人の背を押した親達と部屋に残った者は、盛大な溜息を同時に吐いた。


「幼き時に両者は恋に落ちているというのに、何故、思いを告げないのか?本当に、歯痒いです」


「気軽に睦言を紡ぐお前と一緒にしてやるな。とは言え、成人して尚、何時までも仔犬のような態度と性格で参る。一体、誰に似たのか……」


「我が娘マノンも、一族では珍しく穏やかな性格だ。兵法に興味が無い上、幾ら武術を教えても全く身に付かず華奢な身体のまま。大きな戦は近年起こっていないとはいえ、不安が拭えん」


「一度、身体を動かせば、性別など関係無く本能に引き摺られて大きくなり、男を負かす女がゴロゴロ居るのがケンタウロスの特色なんですけどもね」



当人達の与り知らぬ所で、二人の先行きに思い悩むは大人ばかり。

願わくば、今日こそ仲が進展して恋人同士になりますように。


口には出さないが、思いは皆、同じである。




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