1ノ⑦
久しぶりの投稿、続きはまた明日に
話がまとまり、今ここに来る驚異に一丸となって対処することになったケンジ達だが……
「さってと、そんじゃあささっと片付けるかぁ。キョウ、ハコマル行くぞー?」
「まずは周辺の村々に報告し、そして皇都にも伝えねば……って、ちょっと待て!!?」
キョウとハコマルを引き連れて何処かへ行こうとするケンジを慌てて引き止めるクーゴ、そんなクーゴに訝しげな顔を見せるケンジ
「なんだよ旦那?早く対処しないとヤバイんだろ?」
「いや、それはそうだがお前……さっきの言い分だとお前さん方にはゴブリンロード率いる大軍をすぐになんとか出来るような言い方をしているが……」
「おう、出来るぞ。一日もかかんねぇだろうな。」
「」
開いた口が塞がらないというのはこういう事か。クーゴは酷い頭痛を感じて頭を抱えたくなったが、それをグッと我慢して重たくなった口を開き、尋ねた
「お前さん達の言い分を聞くとだ……お前さん達にはこの窮地を脱する為の手段があり、なおかつそれはすぐさま実行出来ると……?」
「その代わり派手になるがな!ま、人命優先だし仕方ないね!!」
この能天気とも取れる発言に今度こそクーゴは頭を抱えた。確かに先ほど自分はこの男に対して共に戦うと言ったがこうまであっけらかんと言われるとは。さらにこれまで見せられてきた摩訶不思議な魔道具の数々のおかげで、解決できそうなのがあながち間違いでも無いのが困る。
そんな時である
『ちょーっと待つのですぞ!!』
その小さな手(……手?)を高く上げて自己主張するハコマルに視線が集まる
『どうせキャプテンの事だから、実に大雑把な方法で片をつけて後先の事など考えてないのですぞ!』
「…………確かに」
「おいぃ!?キョウくぅん!?」
思わぬ援護攻撃に思わず止まるケンジと何食わぬ顔でいるキョウ、そんな二人を尻目にハコマルはクーゴ達に話しかける
『と、言う訳なので、この辺りの情勢を教えて欲しいのですぞ!」
「わ、わかりました……」
ラビ族の村から現在ゴブリンロード達が進行してきているノールド山脈を含めた領地を収めるのはリードルフ皇国と呼ばれ、ここから東に向かうとエルスィーン達が住むという妖精郷が存在するという。
「だけど、ここからリードルフ皇国までは早馬を休まずに走らせても四日はかかります。」
「それだと間に合わねえ。だからこそ村の奴らと俺たちだけでなんとかしなきゃいけねぇ……」
そう言ってモミジとエッジは押し黙る。例え共に戦う彼らが御伽噺に出てくるような英雄だとしても、あの大群相手に無傷は済まないだろうと。クーゴの顔にもそれが浮かんでいる。そんな三人を見たキョウだが、顔を曇らせる事はなく笑みを浮かべていた。
「そう言う暗い話はおしまいだ。まだ始まってすらいねぇんだから。そんで、これをなんとかする為の作戦会議なんだ。もっと明るく行こうぜ?」
「………ノー天気」
『実に考え無しな所がキャプテンらしいですぞ!』
「お前ら俺を褒めてるのか貶したいのかどっちかにしろよ!?」
(本当にこいつらで大丈夫なのか……?)
そんな三人の漫才を見ているエッジは、本気で心配するのであった。
だがエッジの内心を知ってか知らずか、すぐに真面目な態度に変わるケンジはクーゴに問いかける
「旦那、そのノールド山脈にゃ村とか集落とかあるのかい?」
「いや……ノールド山脈は極寒の吹雪に閉ざされた山であり、ビースティアンは寒さに弱いんでな。あそこに近づこうとするビースティアンはいない。それのせいもあってモンスターが住み着くには絶好の場所だが……」
「あまりに寒すぎて寒さに強い魔物しか寄り付かなかったんです。ゴブリンも、本来なら暗い地下や洞窟に生息してるんです……」
『実に謎ですぞ〜!本来ならいない生息地に現れた大群とか、厄いことしか考えられないですぞ。』
「それを考えるのは後回しだ、ハコマル。まずは目の前の問題解決だ。ノールド山脈やその周囲に人里が無いなら好都合。キョウ、任せたぞ!」
「……了解」
クーゴとモミジからの説明を聞いてハコマルは顔面にあたるディスプレイに汗のマークを出しながらつぶやくが、ケンジはそれを制するとキョウの肩を叩く。キョウはそれにうなづくが、クーゴが慌てて待ったをかける
「ちょっと待て!その言い方だと、彼一人に任せるつもりなのか!?無茶だ!あの大群をたった一人で相手をするなど……!」
「それは、相手と同じ土俵だった場合の話だろ?ま、見てな。健康優良宇宙育ちの戦い方を、さ!」
その日の夜、ピーター達の計らいでクーゴ達が寝泊まりしている宿に泊まることなったケンジ達、ハコマルはその特異な姿から宿の子供達の玩具となっておりキョウは寡黙ながらも進んで宿の薪割りなどを手伝っているようだ。
そして、当のケンジはと言うと……
『それで、その厄介ごとを片付ける為に《アクィラロッソ》を使うつもりなの?』
「ああ、さっさと終わらせて早くこの星を冒険したいからな。」
『全く……この冒険おバカさんっ♪」
「うるへーよ。で、うちのエンジニアの様子はどうだ?」
案内された部屋のベランダから満天の星空を見てニヤつきながらオルロへとこれまで起こった出来事の報告と、船に残しているリョーコ及び異変が無いかの報告を受けていた。
『不満はないわねぇ。むしろこれを機にこれまで整備出来なかった所も整備するーって、ご満悦よ?』
「げっ……オーバーホールする気なら、アクィラは後に回してくれって伝えてくれ。」
『了解っ♪って言いたい所だけど……それを言うにはすこーし遅かったわね?』
「……何?」
オルロのその言葉を聞いた途端に 背中がむず痒くなる。
こういった時は大抵嫌な予感がして、それが的中する時だ、と内心思いながらオルロの言葉を聞いた瞬間、予感は確信へと変わったのだった
『ちょうどオーバーホール真っ最中だから、使えるのは早くても四日後よ。』
「おおぅ……」
その一言でケンジは倒れてしまいそうになるのであった。
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