1ノ⑥
とりあえず、ストックはここまで。
また書き溜めなければ……
ケンジの可笑しな一言から1時間ほど経ち、ケンジ達は町外れにあるクーゴ、エッジ、モミジの三人は彼らの使う訓練所に立っていた。
「それで?ここに来て一体何をするんだよ。」
「まあまあ、もうすぐ来るから待ってなって。ほれ、あそこ」
エッジの棘のある物言いに気にせずに、あっけらかんとしたケンジは空に指を指す、キョウを覗く全員がその方向に目を向けると、空から四角い物体がこちらに向かって降ってきている。それは近くにつれてだんだんと大きくなっていき、こちらに向かってきている。
「お、おい……こっちに向かって来ているアレはなんだ?」
「俺の部下だ。」
「は?」
「俺の部下だって。そいつがいればそのゴブリン達がこっちに向かって来てるのを見せれるんでな?って、んん?」
呑気にそういいながらも物体は落下してくる。落下するスピードは緩まず、さらに早くなっている。何か嫌な予感を感じ、クーゴはケンジに大丈夫なのかと尋ねようとするがそれはできなかった。
振り向いたクーゴの瞳に映るのは先ほどまで楽観的なケンジの顔が引きつり、汗を流している。そして顔にはデカデカと「あ、これヤバイ」と書かれているのだ。
そんな予感が的中したのか、当のケンジは叫ぶようにその言葉を発したのだ。
「緊急事態っ!総員退避ーっ!!」
「はぁっ!?」
「キョウっ!!」
「……ん」
「きゃっ!?」
「てめっ、うおっ!?」
「旦那、失礼っ!」
「なにをぉっ!?」
掌を返した発言に唖然となるクーゴ達を横目にケンジとキョウの対応は早かった。
棒立ちとなるエッジとモミジをキョウが米俵のように抱えて飛び、ケンジはクーゴの首根っこを掴んで思い切り引っ張る。次の瞬間にはケンジ達が立っていた場所に何か硬いものがめり込む鈍い音が聞こえてくる。
いきなりの行動にむせるクーゴやキョウに抱えられたエッジ達が見たのは、自分達がよく使う訓練場の真ん中に人二人は入れるだろう深さの穴と、その穴から勢いよく出てくる四角くて黒い物体。
そんな黒い物体にを見るやいなや、物体に向かって走り出すケンジ。その顔には怒りの表情が浮かべながら、物体へと跳び込む。
『キャプテン!キョウ殿!このハコマル、言われた仕事をきちんとこなして定刻通りにさんじょ「このボケロボがぁーっ!!!」デスゾーっ!?!?』
そのまま飛んだケンジは、四角い物体-ハコマル-へと思い切りドロップキックを叩き込み、その衝撃で吹っ飛ばされ、自分の開けたクレーターに落ちてしまうのであった。
「いやぁ、悪いな。うちのボケロボが。」
『申し訳ありませんですぞ……このハコマル、一生の不覚っ』
「いや、構わんが……彼?は…一体?」
「うんにゃ、こいつはドロイド……言うなれば意思を持った人形みたいなモンか」
『ハコマルと言うのはあだ名みたいなものですぞ!』
あの後、自力で這い上がって来たハコマルに自己紹介を済まさせたケンジは、早速と言わんばかりのハコマルの頭を小突いてからサングラスを渡す。
「ハコマル、ここにくる前に向かった場所の映像……バッチリ撮れてるよな?そのためにお前を呼んだんだし」
『キャプテン!心配せずとも自分は任務を遂行して来たでありますですぞー!』
ハコマルはその小さな腕からコードを伸ばすとサングラスに接続する。そしてサングラスを操作すると先ほどとは違う映像が流れ出す。雪により白銀一色に染まった大地、空からはしんしんと雪が降り積もるその映像を見たエッジは既視感を覚え、ぽつりと呟く
「ここは…ノールド山脈か?」
「ノールド山脈…って確かあっちの雪積もってる山だよな?」
エッジのつぶやきに反応したケンジが指を指した方向にはそこにのみ雪が降っている白に染まった広大な山が広がっており、映像に映る場面とその山が一致する。
「ああ。そして、お前さんが地図に移したジャイアントゴブリン達が来ている方向でもある……真実ならな。」
「へいへい、ならささっと早送りするか。ハコマル、奴らが映り始めるのはいつ頃だ?」
『それについてはもうすぐ出てくるですぞ。ただ……』
「ただ?」
『キョウ殿が戦った個体の群れの中に一体だけ、他とは違うのがいたのですぞ?』
そう言うとハコマルは映像を操作し、ジャイアントゴブリンの群れが行進する映像が映し出される。そんな映像にモミジが息を飲むが、クーゴとエッジの目にはおびただしい数のジャイアントゴブリンよりも、恐ろしいモノを見たかのような顔になる。
ジャイアントゴブリン達が突き進む中心でそこにジャイアントゴブリン達が作ったのか、無骨な形の神輿の上に座っている装飾を纏ったゴブリンが写っていて
「こいつは、ゴブリンロードか!?」
「ゴブリンロードぉ?名前からして、ジャイアントゴブリンよりヤバイ奴みたいだけど……ジャイアントゴブリンより強そうに見えないが」
「ゴブリンロードの恐ろしさは戦闘力じゃない。奴は周りのゴブリンを鼓舞し、強化させる。奴が率いたただのゴブリンでも、皇都の騎士団クラスを壊滅させた事がある……」
「ふぅん……」
クーゴからの説明を聞いたケンジだが、実際はよくわかっていない。ただわかるのはこいつが率いるジャイアントゴブリン達は、ここで暮らす者達にとっては驚異のようだ。
そう考えていると、クーゴはいきなり頭を下げてきた
「……すまなかった、疑ったりして。」
「あん?いいよ別に。それよりもこいつらをなんとかする方が先だろ?」
「ああ……そうだな」
そんなクーゴの謝罪を気にせずにこれからの事を考え始めるケンジに、クーゴは苦笑を浮かべるのであった。
本日はここまで、もしかしたら修正するかもしれません。