1ノ①
初投稿です。続きは出来次第投稿させていただきます。
数多の星が輝く、宇宙という名の海。その星空を駆け抜け、先人達の残した遺物を見つける者達が存在していた。
彼らは未知への情熱を胸に秘め、己が船で星を巡り、未知への探求を続ける。人は彼らを「快族」と呼んだ……
太陽系第三惑星地球。
その地球がある太陽系に一隻の「船」が地球に向けて航行している。
その船は翼を広げたような船体に、純白のパーソナルカラーが太陽光を反射して輝いており、船とは思えない美しさを持っていた。
その船の名はシュヴァーン。白鳥の名を持つ宇宙を翔ける快族船である。
そんなシュヴァーンのブリッジは通常の快族船よりも比較的小さく、中心にある艦長席にそこから左右に広がった所にある二席のみ。その艦長席にはキャプテンハットを目深に被り、青のジャケットを着崩して腰には熱線銃[ブラスター]のホルスターを巻き、コンソールに、両足を置いて鼾をかいている男がいる。
男はかなり熟睡しており、夢見心地であったが、そんなブリッジへと入ってきた150センチほどの背丈をした四角形や三角形、円形などが複雑に組み込まれた物が、艦長席で惰眠を貪る男を見るや否や、なんと、声を発したのだ。
『キャプテン、そろそろ第三惑星に到着しますぞ!!そちらの準備はでき……って起きるのですぞ!?』
その機械のスピーカーから甲高い音声が放たれ、熟睡していた男をめざめさせる。
キャプテンハットに隠れていた顔は整っており、誰の目から見ても好青年を彷彿とさせる。のだが、寝起きで髪はボサボサで、無精髭も生えているこの男こそシュヴァーンのキャプテンであるケンジ・タカダである。
「んがっ!?………ゴホンっ!寝てない寝てない。寝てないぞー?ハコマルよ……ついに頭までバグったか?」
『酷い!?悪いのはキャプテンですぞ!それに自分がおかしいのはこの言語システムだけですぞ!それよりも、船の頭である艦長がそんなグータラでどうするのですぞ!?だいたい……』
ハコマルの説教を聴き流しながらケンジは手元のコンソールを操作してと、前方のモニターに1人の少女が映し出される。
その少女は髪も白、身に纏うワンピースも白、透き通る様な肌も白であり、唯一違うのはその瞳。開かれた瞼から現れた深い海のような蒼が、ケンジ達を見て、口を開いた。
『はいはい、ハコマルもそこまでにしなさい?確かに、私達のキャプテンは好きな事以外にはだらしないわ。だけどね……普段からしっかりしているキャプテンなんて、キャプテンの形をした恐ろしい何かよ!!』
『た、確かにそれは恐ろしすぎですぞ!?』
「お前らぶっ壊されたいかのか!?バグロボにアホAI!!ったく……アホな事言ってないでコントロールこっちに渡してくれ。突入角調整やるから。」
『了解よ、キャプテン」
白の少女のドヤ顔発言から続く言葉に衝撃を受けながらも納得したハコマルに思わず突っ込んでしまう。が、すぐに調子を取り戻し、手元のコンソールを操作してモニターと操縦桿を展開し、少女からコントロールを託される。
「………んん?こいつは一体、なんだ……?」
手馴れた様子で大気圏への突入角度調整を行っていると、視界の中に映るモニターに妙なものを見つける。
怪訝に思ったケンジはそれを拡大すると、太陽光が反射したデブリなどてはない見慣れない光が動いていた。
宇宙空間にて光るソレは凄まじい速さでシュヴァーンに近づいて来ている。
「……おいオルロ、前方に妙な光が見えるぞ?……いや、こっちに近づいてくる!オルロ!回避するぞ!対ショック体制だ!!」
ケンジの指示を聞いた白の少女-シュヴァーンの人工頭脳、オルロ-は首を傾げ、ハコマルもケンジの言葉に疑問符が頭に浮いていた。
『何を言ってるの?【何も無い】じゃない。』
『そうですぞ?計器及びモニターに【異常無し】ですぞ。』
耳を疑った。このお気楽だが頼りになる人工頭脳と、口調はおかしいが力となってくれているメカの一言にケンジは驚きを隠せない。そんなケンジを尻目に、光はシュヴァーンに迫る。ケンジは舌打ち1つして急遽操縦桿を握り、機体を急速旋回させる。
走るGの衝撃に歯を噛み締めて耐える、ホログラフであるオルロはともかく、急な旋回にハコマルは思わず吹っ飛んでしまう。
『ちょ、キャプテン!?何してるのよぉ!?いきなり船を反転させて!?』
「緊急措置だ!今はあの光から逃げる!!緊急停止とかすんなよ!?」
『だから!光って何の事なのよ!!というか、さっきの緊急旋回で格納庫がめちゃくちゃになっちゃったじゃないの!あの子が工具ブチまけて思い切り工具の下敷きよ!?』
「あいつなら大丈夫だろ!頑丈なんだしっ!!くっ、このスピードでも引き離せないだと!?」
シュヴァーンは機関を最大に稼働させながら、自らを追ってくる謎の光を引き離そうとするも、離れずにむしろ近づいて来ている。ケンジ自身、自身の操舵の腕はかつて快賊の頭目をしていた先代の万分の一も無い。だが、これまで快賊として培ってきた経験から裏付けられた操船技術は、そこらの軍艦ならあっという間に引き離しているだろう。しかしそのシュヴァーンは今、謎の光に追い詰められていた。それだけでなく、計器にも異常が見られ始める。
そこまできて、オルロやハコマルも異常に気がついていく。
『何これ!?周辺宙域に重力異常!?さっきまで何もなかった筈なのに……』
「考える暇があるなら機関全開で廻せ!今のままじゃあの光に追いつかれる!!」
『無理ですぞ!もういっぱいいっぱい!これ以上はシュヴァーンが持ちませんぞぉ!?!?』
ケンジ達の奮闘空しく、シュヴァーンはついに光に追いつかれてしまい、そのままシュヴァーンを呑み込み、光はこの宇宙から消えてしまった。
その後、彼らを見た者がいたかは、定かでは無い。
『………キャ……ン……キャプ……』
「くっ、痛ぅ……」
『キャプテンっ!!』
馴れ親しんだ声に霞みがかった意識が目覚める。
二日酔いみてぇで気持ち悪ぃ……」
痛む頭を押さえ、ブリッジの床から立ち上がったケンジはオルロを見る。視界に映る景色は変わらないが、唯一変わっていたのがモニターだ。先ほどまでは青い星が写っていたモニターは、今は真っ黒だ。
『それだけ言えるなら大丈夫ね、ならみんな集まってから状況を確認しましょうか。ハコマルが呼んでくれてるから、もう直ぐ来るわ。それまで待ってなさい』
白の少女の言葉を聞くとケンジは艦長席に腰を下ろす。
何が起こったのか、皆目見当つかないが、宙族としての己の感は「未知なる物」と出会う高揚感をケンジに与えていた。
続きもすぐに投下させていただきます。