第8話 服飾装備の耐久値
ユリカから重量武器の装備の仕方を教わった俺は今、床に正座させられている。
「エリア、俺達は今どこにいるんだ?」
「コルナ村の宿屋です……」
俺は俯いていた顔を上げ、ユリカの顔を見る。
相変わらず彼女は笑顔で俺を見つめていた。
だが、目は笑っていない。
「そうだよな~? ……言いたいことわかるだろ?」
「……はい」
明るい口調から一転してどすの利いた声でユリカが俺に再度質問してくる。
少女の可愛らしい声でも恐怖を感じた。
それでもなんとか彼女の顔を見る。
先程まで最高潮だったテンションは、今や零を通り越してマイナスだ。
ユリカに見せられた一連の動作に目を輝かせ、自分でも一通りやってみた。
ただ、あまりにも騒ぎ過ぎたため正座させられてお叱りを受けているのだ。
「……次はないぞ?」
「……はい」
俺は恐怖に震える心でユリカを見ながら頷く。
(ユリカ、めっちゃ怒ってる……。すごい怖いんですけど!?)
怯えるような目を向ける俺を見て、ユリカは溜息を吐いた。
「はぁ~……、もう正座崩してもいいぞ」
元の声音に戻ったユリカにそう言われた俺は尻を乗せていた両足を左右に広げ、床に尻をつく。
足が痺れて立てなかったからだ。
「もうしません、ごめんなさい」
若干目元が潤んでいる。
おそらく、俺の顔は今涙目になっているんだろう。
(なんか、この体になってから涙腺が緩くなってる気がするな……)
俺がそのまま見つめていると、ユリカが俺の頭に手を置き撫でてくる。
「反省してるなら、それでいい。二度目はないがな……」
頭を撫でながら、優しい声音で俺にそう言った。
暫くして、涙と足の痺れが落ち着いた俺は自分のベッドに腰掛けた。
そして、自分が腕輪の機能を確かめていたことを思い出すと、腕輪に触れメニューを呼び出す。
もう一度、装備の項目をタッチして武器欄を確かめる。
武器欄を確認するとそこには愛用の大鎌がセットされていた。
(よかった、ちゃんと装備できてるみたいだな)
武器欄の確認を終えた俺は次に防具欄を確認することにした。
装備中の防具の内の一つをタッチして詳細を表示する。
防御性能に、付与された能力、耐久値とゲームだった時と違いはない。
念のため、他二つも確認したが違いはなく何も問題はないようだった。
次に服飾欄の確認するために装備している服にタッチすると、ゲームだった時にはなかった項目が増えていた。
「え……?」
俺が思わず声を出すと、ユリカがこちらを向き不思議そうな顔で見てくる。
ゲームだった時にはなかったが、今の服飾系装備の項目には耐久値の項目が増えていた。
これらはキャラの服装とかを変えるだけのものだったので、耐久値などなかったのだ。
「ユリカ、なぜ服飾装備に耐久値があるのですか?」
「いや、それは分からない。気づいたら耐久値という項目が増えてたんだ」
どうやらユリカにも分からないらしい。
ふと気になることができた俺はもう一度防具欄の防具の耐久値を確認し、その後再度服飾欄の服とアクセサリーの耐久値を確認する。
すると、どちらも耐久値は100であった。
俺が気になったのは耐久値が減る優先順位だ。
全て100なのでどちらの耐久値が優先で減るのかが判断できない。
「防具と服飾装備両方に耐久値がありますけど、どちらが優先で減るのですか?」
「どうも、服飾装備優先みたいだぜ? 俺も以前戦闘で結構攻撃受けたことがあってな。その時に見てみたら、防具の方は減ってなくて服の方がごっそり減ってたからな」
それを聞いた俺は少し考えを巡らせているとあることに気づき、表情を強張らせる。
「ということは、服の耐久値が0になったら……」
「うん、まあ……そういうことになるだろうな」
ユリカの言葉を聞き、つい状況を想像してしまった。
そして、頬が熱を帯びてくる。
(それはさすがに恥ずかしすぎる。そういう事態は絶対に避けなければ!)
俺は絶対に気を付けようと、心に刻んだ。
「防具の耐久値にはかなり注意しないといけませんね!」
「いや、武器も注意しろよ?」
そう言うと、ユリカは腕輪を操作し数枚のカードを取り出す。
そして、こちらに手渡してきた。
俺は受け取ったカードを眺める。
表面にはハンマーのようなもので打たれている剣が描かれている。
おそらく、鍛冶だろうか?
裏面はトランプのように他にも同じ柄のカードがありそうな感じだった。
「これはもしかして……?」
「ああ、装備の耐久値を回復させるアイテムだ。使い方は装備画面で回復したい装備にアイテム欄からドロップするか、実体化させて直接装備品に貼り付ければいい。少し多めにあるからやるよ」
「ありがとうございます!」
俺は受け取ったカードをアイテム欄にしまい、装備欄の確認に戻っていった。
しばらく装備欄を確認していたがお昼頃になったのだろうか、お腹がくぅ~っと鳴き空腹を感じた。
「ユリカ、そろそろお昼ご飯にしませんか?」
俺がそう言うと、ベッドで暇そうに横になっていたユリカが上体を起こす。
「じゃあ、おっちゃんに頼んでお昼にするか」
「はい!」
俺達は下の階に降りておっちゃんに昼飯を頼み、お昼にするのだった。