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第33話 カリーサ大森林

 カリーサの北口からカリーサ大森林へ出発した俺達は、街道をおおよそ一~二時間歩きカリーサ大森林の入り口に到着した。

 これから森の中へ入って行くために準備をする。


来いオーダー! ソウルイーター!」

来いオーダー! ハードブレイカー!」


 俺達はそう宣言し、右手を前に突き出す。

 すると、右手に柄の部分を持っているかのように光が集まり、俺のは大鎌の形を、ユリカのは槍斧の形を模していく。

 そして、それぞれの光が大鎌と槍斧を形成すると、光が弾け俺達の武器が姿を現した。

 その光景を見たリーズさんは、驚いた表情をしている。


「二人とも、今のはいったい……」

「今のは仕舞っていた腕輪から武器を出しました」

「俺達のストレージリングは少し特殊でな」

「ストレージリングはそういうこともできるのですね。初めて見たもので驚きました」


 しばらく、驚いた顔をしていたリーズさんだったが、我に返ったのか太ももとコートの間に手を入れる。

 そして、左手に黒い銃を、右手に銀色の銃を構えた。


(二丁拳銃か……、なんかかっこいいな!)


 俺はリーズさんの取り出した二丁の銃を見つめる。

 俺の視線に気づいたリーズさんは俺の顔を覗き込んだ。


「エリアちゃん、どうかしましたか?」

「えっ? えっと……。ごめんなさい、かっこいいなと思って見ていました」

「そうですか、それならよいのですが……。もしかして、銃が怖いのかなと思いまして」


 俺の顔を覗き込むリーズさんが、少し不安そうな表情で俺を見つめる。

 俺は慌てて手を振りながら否定した。


「そ、そういう訳ではないので大丈夫ですよ。それより、準備ができたらカリーサグラスを探しに行きませんか?」

「そうですね、私はいつでも大丈夫です。ユリカちゃんは、行けますか?」

「最後に戦闘時の確認だけしておきたい。前線は俺とエリアでリーズさんは銃で後方支援、それでいいか?」

「はい」


 俺はユリカの案に頷く。

 俺の武器が大鎌で、ユリカがハルバード、リーズさんは銃なのでこれが妥当なところだと思う。

 だが、リーズさんは少し不満そうな表情を浮かべていた。


「お互いの武器を見る限り、それがよいのは分かりますが……。やはり、少し不安ですね」

「何か気になることがあるのですか?」


 俺は首を傾げる。

 リーズさんが何を不安に思っているのか、分からなかった。


「エリアちゃんとユリカちゃんが前に出て、怪我とかしたらという不安が止まらないのです! いえ、その時は私が二人の治療を……、……ああっっ!」

「「…………」」


 リーズさんは何を考えているのか一人で悶え始めた。

 俺はどうしたらいいか分からず、ユリカの方に顔を向ける。

 ユリカも困ったという表情をしていた。

 

「リーズさん、もどってこーい!」


 ユリカがリーズさんの肩に手を伸ばし、揺さ振る。

 しばらく揺さ振ると、ようやく戻って来たようだ。


「失礼しました、不安は消えました! 行きましょう、いざカリーサ大森林へ!!」


 さっきまで不安そうな表情をしていたとは思えないくらいに、リーズさんは元気良く森の中へ入って行った。


「……見失う前に、行こうか」

「はい……」 


 リーズさんを見失う前に俺達も森の中へ入って行く。

 今度は逆に俺達の方が不安になってきていた。


 リーズさんに追いついた俺達は、ユリカ、俺、リーズさんの並びで森の中を進んでいた。

 しばらく何もなく進んでいたが、突如ユリカの足が止まる。


「どうしたのですか?」

「この先に魔物がいる」


 ユリカは姿勢を低くして、前方を指差す。

 俺とリーズさんも姿勢を低くし、その先に目を向ける。

 その先には、円形の緑色をした頭に大きな口、その頭の下は無数の蔓を生やした植物型の魔物だった。

 俺はスタゲの記憶の中からあの魔物を推測する。


「もしかして、あれはマンイーターですか?」

「ああ」

「そのようですね」


 俺が尋ねるとユリカとリーズさんが頷く。

 そして、徐にリーズさんが俺達の前へ出る。


「私の銃でここから攻撃しますか?」

「結構距離があるが、ここから届くのか?」

「おそらく、距離的には問題ないと思います」

「なら、頼む」

「はい!」


 リーズさんは頷くと姿勢を低くしたまま、両手の銃を構える。

 そして、銃弾を放つ。

 その弾丸は光の塊のような見た目で、まるで魔法のようだった。

 弾丸はマンイーターの頭部に当たると、そのまま貫通して風穴を開ける。

 すると、マンイーターは地面に倒れ、蔓も動きを止めた。

 

「これは、倒せたのですか?」

「蔓の動きが止まっていれば大丈夫だ」

「外れなくてよかったです」


 俺達三人はマンイーターに近づいて行く。

 そして、ユリカはマンイーターの傍でしゃがみ込むと、腰のベルトから短剣を取り出し、蔓を切り始めた。

 ある程度の量を切ると、半分くらいを俺に渡す。


「あの、これはどうするのですか?」

「腕輪の中に仕舞っておけ。後でギルドに買い取ってもらうから」

「分かりました」


 俺は頷くと、腕輪を操作し受け取った蔓をアイテム欄に仕舞う。


「それじゃあ、この調子で奥まで行くぞ」

「「はい!」」


 こうして、俺達三人は森の中を進んで行った。


 俺達三人は道中、所々で出会った魔物を倒し、素材となる部分を仕舞いながら、奥へ進む。

 森に入ってから結構な時間が経っている。

 ずっと歩き通しだった俺達三人はちょうど休憩に良さそうな場所を見つけ、そこで休憩をしていた。


「入ってから結構進みましたけど、奥地まではどれくらいあるのですか?」

「たしか、もうすぐ奥地だったはずだ」


 俺は水を飲みながら、ユリカに尋ねる。

 喉を通る水が冷たくて気持ちいい。


「大森林なだけあって、なかなかの広さの様ですね。これは一人で入らなくて正解でした」

「そうだな、最悪道に迷う可能性もあるからな」

 

 リーズさんは携帯していた食料を食べていた。

 ぱっと見ただけだと何か分からない。


「リーズさんが今食べているのは何ですか?」

「これはドライフルーツです。果物を乾燥させたものですね」

「そうなのですか、美味しそうですね」

「一つ食べてみますか? よろしければ、ユリカちゃんもどうぞ」

「ありがとうございます、いただきます」

「それじゃあ、一つもらうな」


 俺達は一つ分けてもらったドライフルーツを口に入れる。

 果物の甘みがあり、とても美味しかった。

 味は苺に似ている。


「美味しいですね、これ」

「ああ、甘さがちょうどいい」

「気に入ってもらえたならよかったです」


 それからしばらく休憩した後、探索を再開した。


 それからも時々出てくる魔物を倒し、奥へ奥へと進んで行く。

 魔物との戦闘中に俺が魔法を使ったら、リーズさんに驚かれた。

 俺の方もリーズさんが魔法を使ったので、びっくりしていた。


「リーズさん、魔法も使えるのですね」

「はい、これでもシスターとして修業していましたからね。それよりも、エリアちゃんの方が驚きですよ。武器がそれなので、魔法は使えないと思っていましたから。それに、無詠唱で魔法を使っていますよね? それ、すごい高等な技なのですよ」

「そうなのですか? 私は他にも……」

「エリア」


 リーズさんと話をしていると、突然ユリカに呼ばれる。

 俺がユリカの元へ行くと、ユリカはしゃがめとジェスチャーした。

 俺がしゃがむと、ユリカも少し腰を下げ俺に耳打ちする。


「エリア、余計な事は喋らないようにな。特に回復魔法のことはな。リーズさんはその辺知ってそうだし」

「わ、分かりました」

 

 ユリカの言葉に、俺は頷いた。

 すると、ユリカは立ち上がり前を進んで行く。

 俺も立ち上がると、リーズさんが俺の傍に寄って来た。


「何かありましたか?」

「いえ、何でもないですよ。ちょっとしたことなので」


 リーズさんの言葉に、俺は首を横に振る。

 リーズさんはしばらく俺のことを見つめていたが……。 


「何かあったら、言ってくださいね」


 その後、優し気な表情を浮かべる。

 その雰囲気は、初めて会った時の様だった。 


 「は、はい」


 俺はその雰囲気に飲まれながら、頷く。

 俺とリーズさんがそんなやり取りをしていると、前方から声がした。


「二人とも、どうかしたのか?」


 立ち止まっていた俺とリーズさんにユリカが声を掛ける。


「何でもないですよ」

「ごめんなさい、すぐに行きますね」


 俺とリーズさんは、ユリカの元へ走って行った。


 森に入ってからどれだけ歩いただろうか……。

 そのくらい奥地へ進むと、さらに木陰の範囲が広がり薄暗くなってきていた。

 先頭を歩いていたユリカが足を止め、こちらに振り返る。


「この先が奥地だ」

「ようやく着いたのですね」

「なかなかの距離がありましたね」


 俺達三人は木の陰から前方を覗く。

 すると、その先はさらに暗くなっており、何かの植物達が光っていた。


「あの光っているのは何ですか?」

「あれがカリーサグラスですよ」


 俺が尋ねると、リーズさんがその植物を指差して答える。


「じゃあ、後は採取して帰るだけだな」

「そうですね。採取してしまいましょう」


 ユリカの言葉にリーズさんが頷く。

 俺達は、カリーサグラスの生えている場所に向かう。

 その時だった――。

 

「シャアァァァァァ!!」


 魔物が声と共に姿を現した。


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