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寝落ち転移~寝落ちして起きたらマイキャラで異世界にいたんだが!~  作者: 水菜
第1章 異世界へ、そして運命の出会い
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第23.1話 コルナ村での最終夜~見守るユリカ編~

 おやすみと挨拶をした俺はベッドに入り目を瞑っていたが、なかなか寝付けずにいた。

 

(眠れねえな……)


 眠れなかった俺は一度上体を起こした。

 隣に顔を向けてみれば、澄み渡る空のような綺麗な水色の髪をした少女が穏やかな寝息を立てている。

 こちらに顔を向けるように横になっており、安心したような表情をしていた。


(ほんとに眠かったんだな。あっという間に寝やがって、まったく……)


 俺は隣で早々に眠りについた少女を羨ましく思いながら、優しい表情で見つめていた。


 隣で眠っている少女の名前はエリア。

 一昨日、コルナの森で盗賊の残党を探している最中にワイルドウルフに襲われているところを助け保護した。

 その後、エリアがスターゲートオンラインの元プレイヤーだと分かり、俺が分かる範囲でいろいろ説明などをした。

 それから、いろいろあってこれからも行動を共にすることになった。

 最初見た時は正直、ここまで関わる気はなかった。

 あんな服装をした少女が、あの森で武器も持たずにうろついているなど怪しすぎたからだ。

 その後、転移者(プレイヤー)だと分かって納得はしたが。

 しばらく一緒に過ごした感じだと中身は見た目相応か少し幼いくらいだと思うが、ちょっとしたことですぐ泣きそうな顔をする辺り自キャラ(エリア)よりもっと幼いのかもしれない。

 多分現実(リアル)は中学生か贔屓目に見ても高校生成り立てくらいなんだろう。

 本人は男性プレイヤーで話し方はRP(ロールプレイ)だと言っているが、全然そうは見えなかった。

 そもそもスターゲートオンラインのチャットはテキストチャットでありボイスチャットではない。

 パソコンで文字を打って会話するのと、実際に話しながら会話するのは完全に別物だ。

 なので、彼女の話し方が丁寧なのはRP(ロールプレイ)ではなく素だと思っている。

 きっと、裕福な家庭で育ったんだろう。

 会話してもまったくボロが出ないのはそういうことだと思う。

 男性プレイヤーだと言ったのも、おそらくは面倒事を避けるためだろう。

 ゲームだった頃からそうしていたのかもしれない。

 とまあこんな感じで、中身はおそらく俺と一回り近くは違う女の子だろうと予測している。

 そのため、何かと気を遣わなければならないが見捨てるわけにもいかない。

 同じ転移者(プレイヤー)でもあるし、それにエリアの場合は放置したらあっという間に死んでしまいそうな嫌な予感がしている。

 それはさすがに寝覚めが悪すぎるため、放って置けないのだ。

 ここ三日くらいで、彼女に対してはすっかり兄のような感覚になってしまった。

 

「……はぁ~……」


 頭の中でいろいろ状況を整理していた俺は溜息を吐いた。

 これからの事を考えると、エリアに関してはかなり不安が大きい。

 今日の残党討伐の時も、宿屋で待ってろと言ったにもかかわらず森へ行き、挙句の果てには残党に捕まる始末。

 一応、厳しく叱ってはおいたがどこまで理解したかは分からない。

 怖い目には遭ったのだから少しは反省してくれるといいのだが。

 まあ、彼女に不安を抱かせてしまった俺にも問題があったか……。

 

「でもまあ……、悪い事ばかりじゃないか……」


 俺はエリアの寝顔を見つめながら、小さく呟いた。

 俺は普段は一人で行動している。

 勿論、誰かとパーティを組んだりしたこともあるし他の街にも知り合いはいる。

 だが、大抵は一人だ。

 なので、誰かと楽しく寝食を共にするのは久しぶりだった。

 他にも、彼女のスキルには助けられた。

 今日戦ったあの謎の魔物も、エリアがいなければ俺がやられていたかもしれない。

 彼女の職構成がゲームだった時なら器用貧乏なだけの微妙扱いの構成だったが、現実(リアル)となってしまった今ではなかなか頼りになる構成に思えた。

 特化型には及ばないものの、攻撃・回復・補助を並以上にはこなせるので戦闘では頼りになっていた。

 それに、エリアのおかげで少し理解できたこともあったからだ。

 

(姉貴も……、いつもこんな気持ちだったのかな……)

 

 俺は自分の右手を見つめながら、物思いにふけっていた。


 俺の家族は親父と六つくらい年上の姉貴と俺の三人だ。

 母親は俺が小学生の頃に親父と離婚し、俺達姉弟は親父に引き取られた。

 親父は優しかったが、仕事が忙しく家を留守にしがちだった。

 なので、俺の面倒や家事はほとんど姉貴がしてくれていた。

 あの頃は特に何も思っていなかったが、今にして思えば姉貴には感謝の気持ちでいっぱいだった。

 あの頃は俺もガキで結構我がまま言って、よく姉貴を困らせたりしたものだ。

 たまに、喧嘩もした。

 まあ、姉貴が笑顔のまま無言でこちらを見つめるのはすごく怖くて喧嘩の度に俺は泣いてたな、そういえば……。

 そして、その後は決まって泣いていた俺の頭を優しく撫でてくれていた。

 そういえば姉貴だけじゃなくて、友達と喧嘩したりして泣いて帰った時もそうだったな……。

 だから、俺は姉貴が大好きだった。

 もちろん、家族として好きなだけでそういうのではない。

 だからもちろん、シスコンとかそういうんじゃないぞ、間違えるなよ。

 絶対に違うからな!

 そんな俺だが、もうすぐ姉貴に恩返しができそうだった。

 大学を出て数年、フリーターだったがようやく就職できそうだったのだ。

 その目前で、こんな状況になってしまった。

 だから、俺は元の世界に戻る方法を探していた。

 元の世界に帰って、姉貴に恩返しするために……。


 俺は、しばらく見つめていた右手を握りしめる。

 

(俺は必ず帰るぜ、姉貴! それに……)

 

 俺はベッドから静かに抜け出して、エリアが寝ているベッドの傍まで行く。

 そして、体を屈めて寝ている少女の頭を優しく撫でる。

 

 「……ん……」

 

 俺が頭を撫でると、エリアが少しくすぐったそうに身を動かす。

 だが、それも最初だけで後は安心したような表情で気持ちよさそうに眠っていた。

 

エリア(おまえ)の事は俺が守ってやるからな! 帰る方法が見つかるまで、必ず……!)


 俺は少女の頭を優しく撫でながら、心に誓う。

 そして、頭から手を離した俺は自分のベッドに入り目を閉じる。

 気持ちの整理ができたせいか、それとも単純に時間が経ったせいか。

 どちらかは分からないが、眠気がやってきた。

 俺はそのまま眠気に身を任せ、意識を闇の中に沈めた。

 

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