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寝落ち転移~寝落ちして起きたらマイキャラで異世界にいたんだが!~  作者: 水菜
第1章 異世界へ、そして運命の出会い
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第19話 初めての共闘戦

 心が落ち着いた俺は村に帰ろうか? とユリカに聞こうかと思った時だった。

 突然、外から大きな地響きに似た音が聞こえてきた。


「……何の音でしょうか?」

「音が近づいてきてるな……。……魔物か?」


 俺達が疑問に思っているとユリカが立ち上がりこちらを向いた。

 

「少し外の様子を見てくる。お前はここで待ってろ」

「待ってください! 私も……」


 俺がそう言うと、ユリカは俺を睨み付ける。


「……お前、反省してないのか?」

「……!? 違います! ……でも、ユリカが心配で……」


 ユリカが凍るような声でそう言ってきたが、俺は少し怯みながらも反論する。

 彼女はしばらく睨んでいたが、溜息をつくと渋々妥協案を出してきた。


「……仕方ない。エリア、部屋から外の様子を見張っていてくれ。俺は直接外を見てくる。これならいいだろう?」

「……分かりました。でも、その前に……」


 ユリカの妥協案に俺は頷く。

 だが、彼女が出る前に補助魔法三種をかけておくことにした。


「ユリカに補助魔法をかけます。ストレングス! ディフェンス! シルフィードベール!」

 

 俺はユリカの方へ右手を突き出し、補助魔法三種をかける。


「効果時間はおよそ五分です。移動速度上昇がかかってますから、移動の際は気を付けてください」

「わかった、さんきゅ! それじゃ、ちょっと見てくる。来い(オーダー)! ハードブレイカー!」


 ユリカは頷き、俺に礼を述べた。

 そして、右手を前に突き出しながら武器を呼び出す。

 突き出した右手に光が集まり、右手に柄が来るようにハルバードの形が形成されていく。

 そして、完全に形成されると光が弾けハルバードが顕現する。

 彼女は顕現したハルバードを右手で持ち、小屋の外に出て行った。

 俺はドア側にある窓の前に身を隠しながら、外の様子とユリカを見守る。

 見える範囲を見渡してみるが、今のところ特に異変は見られない。


(あの地響きなんだったんだ?)


 俺は警戒するように、慎重に見える範囲を見渡す。

 ユリカの方も周囲を見渡しているが、何か見つけたわけではなさそうだった。

 小屋に一旦戻ろうと思ったのか彼女はこちらに向かって歩き出して、突然歩みを止める。 

 そして小屋の屋根の方を見上げて、驚愕の表情を浮かべていた。

 一瞬屋根の方を見つめたまま固まっていたが、我に返ると慌ててこちらに向かって叫ぶ。


「エリア! 急いで小屋から逃げろっ!!」

「え……?」


 ユリカが突然叫んだので、一瞬困惑してしまった。

 だがすぐにユリカの指示通りに急いで小屋から出て、ユリカの元へ駆け寄る。

 そして後ろを向こうとした時、背後から凄まじい破壊音がした。

 俺が慌てて振り返ると……。

 小屋が潰れており、辺りにすごい土煙が上がっていた。


(え……? なんだ!?)


 俺は驚いた表情のまま、辺りを警戒する。

 しかし、土煙のせいで小屋の辺りが良く見えず状況が把握できない。


「ユリカ、一体何が……?」

「……見たことない大型の魔物が小屋を叩き潰したんだ」


 ユリカは強張った顔でそう答えた。

 そして土煙が段々晴れていき、魔物の姿が現れる。

 その魔物は大型の猿というかゴリラのような魔物だった。

 全身が黒い毛で覆われており、身長はおそらく三~四メートルはあるだろう。

 左肩の辺りには何やら小さな物がぶら下がっており、頭には赤い何かが引っかかっている。

 目は真っ赤で血走っており、口から二本の牙が下顎歯から生えていた。

 そんな大型の魔物が二体いた。

 俺は急いで武器を呼び出す。


来い(オーダー)! ソウルイーター!」

 

 俺は右手を前に突き出す。

 すると、そこに光が集まり右手に柄が来るように大鎌の形が形成される。

 そして、完全に形成されると光が弾け大鎌が顕現した。

 俺はそれを両手で構えると、俺とユリカに補助魔法をかける。

 

「ストレングスゾーン! ディフェンススクエア! シルフィードランディング!」


 俺が範囲型補助魔法三種をかけると、俺達の体が赤、青、緑の順に光る。

 そして、俺の体から何かが抜け一瞬ふらついた。


「……!?」

「おい! 大丈夫か!?」


 俺が一瞬ふらついたためユリカが心配そうに寄ってきたが、大丈夫という風に右手で制する。

 俺がちゃんと立っていることを確認すると、彼女は敵に向き直る。

 

「エリア、無理はするなよ?」

「はい」


 ユリカが心配そうに注意してきたので、頷いた。

 しばらくこちらの様子を見ていたゴリラ達が動き出す。

 でかい図体の割にはかなりの速度でこちらに接近してくる。

 そして、挟むつもりなのか左右に散っていく。

 俺達もそれに合わせて、俺は左にユリカは右に散り一対一に持ち込む。


 俺は左側から迫るゴリラと対峙する。

 敵との距離がだいぶ縮まってしまっているが、牽制のつもりで遠距離攻撃を放つ。

 

「ショックウェーブ!」


 俺はスキルを宣言しながら、両手で大鎌を振り上げ思い切り地面に振り下ろした。

 すると地面に振り下ろした大鎌の先端から、地面を砕く様に衝撃波が走る。

 そしてかなりの速度でこちらに迫っていたゴリラに直撃し、その魔物は悲鳴を上げ足を止める。


「ウガァァァっ!」

「よし!」 

 

 先制攻撃がヒットし魔物が足を停めたので、俺は一気に決めるために接近しようと構える。

 だがゴリラが足を止めたのは一瞬だけで、すぐにこちらに向かって迫ってきた。

 俺は慌てて迎撃体勢に切り替える。 


(……!? 近接防御が高いのか? ……魔法攻撃試してみるか)

「ホーリーランス!」


 俺は距離を取りながら、ホーリーランスを発動する。

 先程の一撃で近接攻撃スキルより魔法攻撃スキルのが有効なのではと思ったからだ。

 俺は左手を上に上げ出現した六本の光の槍を頭上に六角形になるように配置する。

 そしてゴリラの心臓の辺りに角度を調整し、腕を振り下ろす。

 それが合図となり六本の光の槍が一斉に発射される。

 すると相手は大きく跳躍し、それらを全て回避した。


「うそっ!」


 そしてゴリラは跳躍した勢いそのままにこちらに拳を打ち込んできた。

 俺はバックステップしてその一撃を避ける。

 敵の拳が地面に打ち付けられると凄まじい音を立て辺りに土煙が上がった。

 これにより視界が塞がれてしまう。

 

(まずい!? 見失った!)


 俺は周囲を警戒しながら、土煙が晴れて行くのを待つ。

 しばらくして視界が晴れてきたが、魔物の姿が視界から消えていた。

 

「……あれ? どこに……」


 俺が周囲を確認しようとした時、突然背後から凄まじい衝撃を受けた。


「がぁっ!?」


 俺はそのまま吹っ飛び近くにあった木に思い切り叩きつけられる。

 そして叩きつけられた時の衝撃でぶつかった木は倒れ、大きな音を立てた。

 俺はそのまま地面にうつ伏せに倒れてしまった。


「あっ……ぐぅ……」


 俺は呻いて体を起こそうとするが痛みですぐには動けなかった。

 顔だけなんとか敵の方に向けると、こちらに迫っている姿が見える。

 俺は立ち上がるため、自分の傷を癒すことにした。

 痛みで声がなかなか出せなかったが、気合で絞り出す。 


「……ヒールっ!」


 俺がヒールを発動すると、体が光に包まれ傷が治り痛みが徐々に引いていった。

 痛みが引いた俺は慌てて立ち上がり、近くに投げ出された大鎌を構えて迎撃体勢を取る。

 

「ブラッディサークル!」


 俺は大鎌を両手で持ち、その場で独楽の様に回転しながら大鎌を振り回す。

 それを見た魔物は急停止をかけたが、止まり切れず俺の方へ突っ込んできた。

 そして、そのまま振り回している大鎌に左腕を突っ込み切り刻まれる。


「ウガァァァァゥゥ!」


 振り回された大鎌は突っ込まれたゴリラの左腕を切り刻み、辺りに血を撒きながら肉片へと変える。

 左腕を失った魔物は苦しみと怒りを顔に浮かべながら膝をつく。

 隙ができたので、俺は急いで敵から距離を取る。

 

「ウグゥゥゥゥルル!」


 俺を睨みながら唸り、立ち上がったゴリラが再びこちらに向かってくる。

 だが左腕を失い安定しない状態で走っているためか、先程よりは移動速度が落ちていた。

 

「ホーリーランス!」


 俺は再びホーリーランスを発動する。

 少しして、出現した六本の光の槍を先程と同じように左手を上げ頭上に展開する。

 そして、今度は腹部の辺りに狙いを定め腕を振り下ろす。

 それを合図に六本の光の槍が魔物目掛けて発射される。

 ゴリラは避けようとするが、左腕を失い不安定な状態では避けきれず光の槍に串刺しにされる。


「ウガァァァァッ!」


 光の槍に串刺しにされた魔物は叫びながら地面に倒れ、しばらくすると動かなくなった。

 槍の数本がゴリラの心臓を貫いているようだった。


「……ふぅ……」


 俺はなんとか倒せたことに安堵する。


(ユリカ、大丈夫かな……)


 ユリカの方を見ると距離があるのでかなり小さくだが確認できた。

 激しい音が響いてくるためまだ戦闘中のようだ。

 俺は急いで彼女の方に向かって駆けて行った。


 ユリカの方に向かって走っていると、段々その姿がはっきりと見えてくる。

 ユリカとゴリラは死闘を繰り広げていた。

 彼女らの間にはほぼ距離はなかった。

 ユリカはハルバードを振り下ろしたり突き出したりして攻撃している。

 対する敵の方も突きを腕で弾いたり振り下ろしを横に移動してかわしたりして、拳を打ち込んでいた。

 

(この魔物、まるで知能があるみたい)


 俺は魔物の動きを見ながらそんなことを思ったが、ユリカに声をかけ加勢する。

 

「ユリカ! 大丈夫ですか!」

「エリア! ……!?」


 俺はユリカに声をかけ彼女がそれに反応したが、そのせいで隙ができてしまった。


「ウガァァァッ!」 


 ゴリラは拳をユリカに叩き込んだ。

 

「がぁぁっ!」

 

 ユリカは避けることもできず、直撃してしまった。

 拳の一撃によりそのまま地面に跳ね飛ばされる。

 跳ね飛ばされたユリカは血を流しながら苦しそうに呻いていた。


「ぐっ……!」

「ユリカっ!?」

 

 俺は思わず叫んで駆け寄り、目元を潤ませる。

 

(どうしよう……、俺のせいで……。……いや、そんなこと言ってる場合じゃない!)


 俺はすぐに袖で涙を拭うと、気持ちを切り換えた。

 俺は一度小さく深呼吸してユリカに回復魔法をかける。

 

「ハイヒール!」


 俺は回復魔法を発動する。

 すると少ししてユリカの体が光に包まれ、見る見るうちに傷が治っていく。

 光が納まると彼女が立ち上がった。


「ユリカ! 大丈夫ですか!!」

「ああ、大丈夫だ! 助かった!」


 俺が心配そうな顔をして声をかけると、彼女はこちらに顔を向けて笑いながら答える。

 そして、武器を持ち直して魔物に向き直った。

 俺はユリカの様子に安堵すると、同じく敵に向き直る。


「あっちは終わったみたいだな」

「はい、向こうは倒しました」


 ユリカが確認してきたので、俺は頷く。

 

「あとはこいつだけだな。俺が前に出るから援護を頼む」

「分かりました、前衛はお願いします」


 俺はユリカの言葉に頷くと、後方に下がり敵との距離を取る。


「ストレングスゾーン! ディフェンススクエア! シルフィードランディング!」


 俺は左手を前に突き出して自分達に範囲補助魔法三種をかけ直す。

 一瞬ふらつきそうになったが、なんとか耐えた。


「さんきゅ! それじゃ、いくぜぇぇっ!!」

 

 ユリカは礼を述べた後、叫びながらゴリラの方へ接近していった。


(補助はかけ直したし、俺は攻撃魔法で援護かな。ホーリーランスを使いたいところだけど射線上にはユリカがいるし、ここはシャイニングで……)

「シャイニング!」


 俺は左手を振り上げてシャイニングを発動する。

 すると少しして空が光輝き、魔物の頭上から半径二mくらいの光線が降り注ぐ。

 光線の速度が速く敵の死角だったということもあって、ゴリラは気づくことすらできず直撃を受けた。


「ウガァァァァァァ!」


 光線を受けた魔物は叫びながら、光線に焼かれていく。

 その後、ゴリラは膝をつきその体からは少量の煙が立ち上る。

 そして、動きが止まった隙にユリカが一気に接近していく。

 彼女は高く飛び上がり、動きが止まった敵の頭目掛けてハルバードを思い切り振り下ろした。


「おりゃぁぁぁぁっ!!」

  

 ハルバードは魔物を頭から一気に真っ二つにし、辺り一帯に血と潰れた臓物を撒き散らす。

 それを見たユリカが慌ててバックステップして距離を取る。

 そして、自分の衣服を確認していた。

 

(よかった、倒せた……)


 俺は無事に倒しきれたことに安堵する。

 俺がそうしていると、衣服の確認を終えたユリカがこちらに戻って来た。

 

「無事に倒しきれたな。血とか一気に飛び散って最悪だったが、運よく服にかからなくてよかったぜ……」

「ほんとに無事に倒せてよかったです。あと、血が付かなかったのはたぶんシルフィードランディングのおかげだと思いますよ? 風の膜みたいなのが血避けしてくれてるみたいなので」


 俺がそう言うと、ユリカは自身の体を見回し始める。

 そして、どうやら気づいたようだった。


「なるほど、これか! 移動速度上昇と攻撃速度上昇効果があるのは知ってたがこんな効果もあるとはな。シルフィード便利だな! 血が飛ぶのはよくあるから、こういうのは非常にありがたい」

「ですよね! 私も初めて気づいた時は株価急上昇でした!」


 ユリカが嬉しそうな顔で風の膜を見ながらそう言うと、俺も若干興奮混じりに同意する。

 

「さてと、それじゃあ目的も果たしたし村に帰るか」

「そうですね、かえりま……」


 俺がそう言いかけた時、突然前方が光始める。

 光源の方を見てみると、先程真っ二つにされた魔物の死体の真下に魔法陣が浮かび上がっていた。

 

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