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寝落ち転移~寝落ちして起きたらマイキャラで異世界にいたんだが!~  作者: 水菜
第1章 異世界へ、そして運命の出会い
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第16話 コルナの森

 俺は村の入り口から出て、コルナの森を目指し歩いている。

 コルナの森へ行くことにした俺は、念のため村の人にコルナの森のある方向を尋ねた。

 そして、現在教わった方向へ歩いているのだ。


 村を出てから約十分くらいだろうか、見覚えのある森の入り口が見えてきた。

 そして、森に入ろうとしたところで思わず立ち竦んでしまう。

 どうやら、一昨日親玉狼に襲われた時の恐怖心がまだ心に残っているのだろうか。


(ここまで来て何びびってんだ俺! こんなんじゃユリカと一緒に行けないぞ!)


 俺は不安な気持ちを追い払うように首を何度か横に振り、両手で軽く両頬を叩いて気合を入れた。

 そして、腕輪から武器を呼び出す。

 

来い(オーダー)! ソウルイーター!」

 

 俺は右手を前に突き出す。

 すると光が集まり、右手に柄の部分がくるように大鎌の形を形成していく。

 そして、形成が完了すると光が弾け愛用の大鎌(ソウルイーター)が出現した。

 俺はゲームの時にマイキャラ(エリア)が構えていた時のことを思い出し、真似する様に両手で持ち水平に構える。

 試しに一振りしてみようと思い、足を開き膝を少し曲げて腰を低くし、水平に構えた大鎌を腰を捻る様に一度腰の右後ろ辺りに下げた。

 そして、右足から左足に体重移動させつつ、腰の捻りを利用して右下から左上に振る。


「はぁっ!」


 ブンっ!と大鎌が風を切った。

 そして、刃を反転させ追撃するように左上から右下に振る。

 その後、これを何度か繰り返し素振りをした。

 何回か素振りした後、大鎌の頭を地面につける。

 

(背中に背負った時は全く起き上がれないくらいの重量だったけど、実際に両手で持ってもそこまで重いって感じはないな。これなら両手に持ったまま探索するのも大丈夫そうだし、武器として使うにも問題はなさそうだな。腕には何かしら補正みたいなのがあるのかな……)


 何度か持ったり素振りしたりしてみた感想は、そんな感じだった。

 武器の確認が終わった俺は、森の中へ入ろうとしてふと思い出す。


(そうだ、スキル確認してゲームの時と変わってなかったんだった。なら、入る前に一応補助魔法を使っておこうかな)


 思い出した俺は、自分自身に補助魔法をかけることにした。


「え~と……。ストレングス! ディフェンス! シルフィードベール!」


 俺は自分自身を対象にするように念じながら、単体補助魔法三種をかけた。

 すると俺の全身が赤色、青色、緑色の順に何度か光る。

 色取り取りの光が納まった後全身を見ると、体全体と大鎌を風の膜が覆っていた。

 ストレングスは攻撃力系アップ、ディフェンスは防御力系アップ、シルフィードベールは攻撃速度及び移動速度を上げる補助魔法だ。

 ゲームの時と同じで効果時間は三分。

 俺の場合、ビショップのパッシブスキルで補助の効果時間を延ばすスキルを持ってるので五分くらいは効果が持続する。

 効果時間が五分に延びたとはいえ、あまりのんびりできないのは変わらない。

 切れかけたら再度かければまた五分延長できるはずだが、MPがなくなってくると眩暈などの症状が出てくることは分かっているので無駄にかけ直しはできない。


(とりあえず、慌てずに急いで残党を見つけないと……)


 そう思い、地面に頭をつけていた大鎌を持ち上げようとした時に違和感を感じた。

 先程素振りした時よりもすごく軽く、ひょいっと持ち上がる。

 試しに片手で振ってみるが、それでも特に問題なくブンブン振り回せた。

 片手で持った感じはフライパンより少し重い程度だった。

 一瞬呆気にとられていたが、すぐに原因が思い当たった。


(あ~……、もしかしてシルフィードベールか? スキル説明がゲームの時と一緒だったから気づかなかったな。攻撃速度上昇ってそういうことね)

 

 予想外の発見だった。

 そして、大鎌が軽くなった理由が分かったところで森の中へ入って行った。 

 

 俺はとりあえず真っ直ぐに進んでいく。

 すると、早速狼がお出迎えしてきた。

 歩き始めてまだ一分も経っていないというのに。


(早速出てきたな。それじゃ武器を使っての初戦闘、行ってみようか!)


 俺は大鎌を両手で構えると狼に接近していく。

 狼の方も俺が向かってくるのを見て、こちらに走ってきた。

 どうやら、勝負するつもりのようだ。

 俺は一気に勝負を決めようと思い、加速しようとして問題が起きる。

 シルフィードベールの補助を受けた走る速度が速すぎて上手く歩幅が合わず俺は木の根につまずいてしまった。


「ふぎゅっ!?」


 そして、顔面を派手に地面に打ち付けた。

 俺は起き上がると、痛みで顔を押さえる。

 俺が多少なりとも走って距離を縮めていたせいか、狼はすぐ飛び掛かれる位置まで迫っていた。

 俺は袖で顔を拭うと、慌てて立ち上がり構える。

 ちょうど構えたところで狼が俺に飛び掛かってきた。

 

「よっと! ……はぁっ!」 

 

 噛み付こうと飛び掛かってきた狼を俺は左に避け、大鎌を振い口から一気に切り裂く。

 切り裂かれた狼は口を中心に背中側と腹側に真っ二つになり辺りに血と臓物をぶちまけた。

 

「ちょっ!?」

 

 一気に飛び散る狼の血に俺は嫌な顔をしながら、慌てて距離を取る。

 体を見下ろすと服に血が付いたりはしていなかった。

 どうやら、シルフィードベールが弾いてくれたみたいだった。


(そうか、近接戦闘は血が跳ねるのか。そこは予想できなかったな、これも現実になったせいか。……シルフィードベールが超優秀スキルに見えてきたぜ)


 俺の中でシルフィードベールの株価が急上昇した瞬間だった。


 狼を倒した俺は森の中を進んでいるとまた狼が現れた。

 今回は二頭のようだ。

 

(攻撃スキルの方も試してみるか)


 俺はちょうどいいので、攻撃スキルも試し打ちすることにした。


(とりあえず、ソニックスラッシュ試してみるか) 


 ある程度の距離があるので射程のある攻撃スキルを使用することにした。

 ソニックスラッシュはスキルランク1の攻撃スキルだ。

 近接系の1st職業ファイターが一番最初に習得できるスキルで、近接職をしている人なら皆習得しているスキルである。

 一番最初のスキルだけあって威力はそんなに高くないが、射程が結構あり攻撃範囲が少し広いため使い勝手がよく初心者から廃人までお世話になるスキルである。

 俺は先程武器を構えた時同様ゲーム時のマイキャラ(エリア)の動きを思い出しながら真似をしてみる。

 大鎌を水平に構え、思いっきり振りぬく。

 ブンっ! と風切り音がする。

 しかし、何も出なかった。


「あれ……?」


 俺は思わず首を傾げる。

 俺の今の動きを敵対行動と見たのか、二頭の狼が二手に分かれ挟むように迫ってきた。

 俺はその様子に焦りながら、もう一度スキルを使おうと大鎌を振る。

 しかし、何も起きない。


(おいぃぃぃー!? なんで、スキル発動しないんだ!? ……スキル名言わなきゃ駄目なのか?)


 敵が迫っているにも関わらず発動しないスキルに混乱し出したが、ふと原因に思い当たる。

 そうこうして間に敵が両サイドから飛び掛かってきた。

 狼達がすぐ傍まで迫っていたので、俺は違うスキルを使うことにした。

 

「やばっ!? ブラッディサークル!」


 俺はスキル名を宣言しながら、自分を軸とし遠心力を利用しながらその場で独楽の様に回転し大鎌を両手で振り回す。

 すると、体から何かが抜ける感覚とともに大鎌を振り回しながら回転する速度が増したような気がした。

 二頭の狼は回転しながら両手で大鎌を振り回す俺の方に突っ込んでそのまま切り刻まれる。

 そして、辺り一帯に肉片と血を撒き散らした。

 俺は狼の肉片を確認すると回転を停止させる。

 

(なるほど……、スキルを使うには動作とスキル名を言う必要があるのか)


 俺はそう考え、先程狼達に使おうとしたソニックスラッシュを試しに発動する。


「ソニックスラッシュ!」


 スキル名を宣言しながら、先程と同じ様に構え大鎌を振り抜く。

 すると、振り抜いた大鎌から横長の真空刃が発生し森の中を飛んで行った。

 そして、発生した真空刃の通り道にあった木が綺麗に切れ、次々と倒れていきすごい音を立てる。

 俺は真空刃が通り過ぎた先の光景を見て、呆然としていた。


(……これ、スキルランク1のスキルだよな? 現実だとこんなに威力あったのか……)


 ゲームだった時を思い出しながら、そんなことを思っていた。

 マイキャラ(エリア)は職の組み合わせ的に他の攻撃特化職ほどは補助魔法を使ったとしても火力がでなかったので、ある程度敵が強いとソニックスラッシュで一確できないことが結構あったのだ。

 だから、ソニックスラッシュの威力がこんなにあるとは予想外だった。

 

(これは他のスキルを使う時もよく考えてから使わないといけないな)


 ソニックスラッシュを使った後の惨状を見ながら、そう心に刻んだ。

 

 その後も移動してる最中に何頭かの狼と遭遇した。

 ある時は武器で一刀両断にしたり攻撃スキルを使用し、またある時は攻撃魔法を試しながら戦闘をした。

 俺はたまに補助魔法三種をかけ直しながら、森の中を進んでいく。

 おかげで少しは近接戦闘や補助魔法の支援を受けた状態での走行、攻撃魔法の使用にも慣れてきた。

 森に入ってからしばらく歩いていたが、突如前方に明るい場所が見えてくる。

 近くに寄ってみると辺り一帯は多くの切り株があり、日が差し込んだ広場のような場所だった。

 

(あ……、ここは……)


 その場所は、俺が助けられ初めてユリカと出会った場所だった。

 

 俺はとりあえず近くの切り株の辺りから順に調べてみることにした。

 昨日の雨のせいか所々ぬかるんでいる。

 俺は泥で滑らないよう気を付けながら調べていく。

 すると、すぐに足跡が見つかった。

 見つけた足跡を辿ってみると、俺と同じ方角から来て真っ直ぐに進んでいるようだった。


(この足跡、もしかしてユリカのか? 村の方角から続いてるしな)


 このコルナの森にいるのはユリカか確定ではないが盗賊の残党だろう。

 それで足跡が村の方角から来ているのでそうなのではないかと思ったのだ。

 一旦ユリカのものらしき足跡は置いておいて、他に何か手掛かりがないか調べることにした。


 しばらく広場一帯の地面や切り株を調べてみたが、特に何も手掛かりが見つからなかった。

 昨日の雨のせいで残っていたであろう痕跡も消えてしまっているようだ。

 俺は一旦村の方角側の木の木陰に入り、休憩しながらどうするか考えることにした。


(一応調べてみたけど手掛かりなかったな、どうするか……。一旦引き上げて村に戻るか? それとも、ユリカらしき足跡が行ってない方向を調べてみるか?)


 俺は立ったまま木に背中を預けながら、頭を悩ませる。

 しばらく悩んでいた時、ふと思い出したことがあった。


(あれ……? そういえば、初めてここに来た時たしか……)


 俺はこの世界に来てしまった日のことを思い出した。

 

(確か、この広場を調べて足跡を見つけて人がいると思ったんだよな。その後、狼達に襲われてピンチのところにユリカが来て助けてくれたんだよな。で、ユリカの案内で村へ……)

 

 そこまで思い出したところで気づいた。


(あの日俺が見た足跡、もしかして……?)

 

 確かに足跡を見つけたことははっきりと覚えている。

 そして、続いていた方向を思い出すために状況を整理することにした。


(確か……、俺は出てきた方角を背にしたままユリカに助けられて、俺から見て右の方に行ったんだったよな? で、足跡が続いていたのがその時の俺の正面だったから……)


 そう考え、俺はその時の正面……つまり今の俺の位置から見れば右の方向に顔を向ける。

 

(あの足跡が残党の足跡だって決まったわけじゃないけど、可能性はあるよな……。行ってみるか!)


 状況からそう考えた俺は、広場を抜け村の方角から見て右方向の森へ入って行くのだった。


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