第12話 下着パニック
夕食を終えた俺は部屋に戻ってきていた。
ユリカは体を拭くためのお湯をもらうため、まだ一階にいる。
俺は自分のベッドに腰掛け、満腹になったお腹を軽くさすりながら彼女が戻ってくるのを待っていた。
しばらくしてお湯を入れた桶と数枚の布を持ったユリカが戻ってきた。
「お待たせ。お湯と布もらってきたぞ」
「ありがとうございます」
ユリカがそう言いながら布を数枚俺に手渡してきたので、お礼を述べながら受け取る。
俺は布をお湯で濡らして絞ってから、彼女に背を向けた。
そして、腕輪を操作してモニターを出し装備の項目をタッチする。
その項目をタッチすると腕輪のモニター画面が装備欄に切り替わったので、装備の服飾装備欄にある自分が着ている服を外しアイテム欄に移す。
すると、着ていた服が光に包まれた後に消え、下着だけの姿となった。
(昨日は自分で脱いで着てをしたけど、腕輪の装備機能使えば着脱簡単だな。おまけにこれで服の洗濯も済むんだから楽だわ~)
そんなことを思いながらモニターに目を向けた時、アイテム欄にあるとある服飾装備が目に入る。
そして、自分の体を見下ろした。
その目に映るのは、豊かな双丘を覆う純白の下着。
(そういえば、この服飾装備使ってなかったけど……。ど、どうなるのかな……)
少しどきどきしながらアイテム欄にあるとある装備に手を触れ、その装備を服飾装備欄に装備する。
すると双丘を覆っていた純白の下着が光に包まれ、光が消える。
俺が自身の体を見下ろし確認すると、深紅の下着を身に付けていた。
ただし、先程まで双丘を覆っていた下着に比べて覆う面積が小さくなり、さらに胸の谷間が強調される。
次に下の方を脱いで確認してみると、両サイドが紐になっていて尻側を覆う布面積も先程の下着よりも小さくなっていた。
(うおおお! まじで変わってるし!? すげー!!)
俺は若干興奮気味に手にした下着を眺めていた。
そう、俺が装備したのは下着を変える服飾系装備だった。
これも歴っとした課金装備である。
なぜこんなものがあるのかって?
運営も紳士なんでしょう、たぶん……。
運営にはグッジョブと言わざる負えない。
しばらく興奮気味に眺めていたが、背後からの物音で我に返る。
一気に興奮は冷め、途端に恥ずかしくなり頬が一気に沸騰していく。
後ろにユリカがいたことを完全に失念していた。
(やばっ!! てか、昨日も似た流れあったぞたしか……。デジャヴか……?)
そんなことを思ったが、急いで元の純白の下着に戻すために装備欄に装備した服飾系装備をアイテム欄に戻す。
最初に身に付けていた純白の下着はデフォルトなので、装備した下着の服飾系装備を外せば元に戻るのだ。
深紅の下着が光に包まれ、そして消えた。
俺は自分の体を見下ろしてみる。
すると、豊かな双丘には積雪が確認できずその山肌を晒し頂上が見えていた。
その光景に目が点になる。
俺はその双丘に手を触れる。
すごく弾力があって柔らかいが、積雪は確認できなかった。
「え……?」
思わず声が漏れる。
そして、思わず漏れた声にユリカが反応した。
「ん? どうかしたのか?」
突然のユリカからの声に俺は思わずびくりと体を震わせた。
「だ、だいじょぶ! だいじょぶでふ!!」
そして、慌てて返事をした俺は舌をかんだ。
俺の反応に対して、ユリカが背後で動く気配がした。
その後に、彼女が動揺したような声で尋ねてくる。
「ほ、ほんとにどうした? 大丈夫なのか?」
「だいじょぶ! だいじょぶですから!!」
俺は慌てて再度返事をした。
ユリカの方が気になってしまいちらりと背後を見てみると、彼女はこちらに背を向けてベッドに座り体を拭いているようだった。
それを見た俺は安堵の息を吐く。
そして、全裸になってしまっているので濡らした布で体を拭いていく。
途中、双丘の辺りで止まってしまったがなんとか済ませることができた。
俺は濡らしていない布で水気を拭き取っていく。
そして腕輪を操作して服を着ようとした時、ふと手が止まった。
(下着、どうしよう……)
デフォルトの下着がなぜか戻らなかったので、どうするか困った。
とりあえず、アイテム欄を確認していく。
すると、デフォルトよりは上下ともに布面積が小さいが、着れなくはなさそうな水色の下着が見つかった。
とりあえず、装備欄に装備してみる。
豊かな双丘を覆う下着は深紅の下着と比べると布面積は同じくらいで、谷間をはっきりと見せる。
ただ、こちらは深紅の下着に比べるとレースが少し付いていて可愛らしい。
下の方は深紅の下着と同じく両サイドが紐のようなのは変わらないが、尻を覆う部分はデフォルトより少し小さいくらいで特に問題はなさそうだった。
そして、下も上と同じくレースが付いておりこちらはさらに白い小さなリボンが付いていた。
(これなら、深紅の下着を着るよりは全然いい。なんとか着れそうでよかった……)
そう思い、腕輪を操作してこの下着を装備したまま服を着た。
気になったので、一応スカートを捲り上げて確認してみる。
すると、下着は先程の水色の下着になっていた。
(とりあえず、これなら大丈夫そうかな……)
捲り上げたスカートを下し、整えた。
ユリカに声をかけようとして、自分の服装を見直す。
(昨日寝る時に着た服に着替えておくか)
俺は昨日着た白い半袖のTシャツと青いホットパンツを装備欄に装備した。
そして、着替えが終わったのでユリカに声をかける。
「ユリカ、終わりました」
しかし、ユリカから返事がなかった。
不審に思い背後に振り向き、向き直って確認する。
彼女はすでに終えているようで、長袖のジャージ姿でこちらに背を向けてベッドに座っていた。
俺はもう一度ユリカに声をかけてみる。
「ユリカ? 終わりましたよ?」
「ひゃいっ!! お、終わったか!?」
何やら、変な声を上げて慌てて返事をしてきた。
不審に思い尋ねてみる。
「ユリカ? どうしたのですか?」
「い、いや・・・、なんでもにゃい・・・!」
俺が尋ねると動揺した様子で返事をしてこちらに向き直る。
こちらを向いたユリカを見てみると、顔が真っ赤になっていた。
俺は一瞬目が点になったが、慌てて近寄って額に手を当てる。
「ゆ、ユリカ!? 顔真っ赤ですよ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ! 心配いらない!」
ユリカは額に当てた俺の手を払い除けた。
だが、相変わらず顔は真っ赤なままだ。
俺は心配そうに彼女を見つめるが、その間にもどんどん赤くなっていってる気がする。
しばらく見つめていると、再び俺に背を向けてしまった。
「ユリカ……」
ユリカに拒否の姿勢を取られ少し悲しかったが、しばらくそっとしておいたのだった。