無題
さてはてと思いながらも目の前で私が作った力石を罵りどう見ても品質が最低ランクしかない力石を褒め称えている軍人を見る。罵りも終った所で
「では、今後一切あなたの部隊に私の力石やその関連機材をを卸しませんので。では」そう答えてその人の前から立ち去る。
周りはざわめいているが、交渉決裂だということだけで特に騒がしくする必要性はない。軍はお得意様であるが、別に卸すところがひとつ減っただけでは特に問題はない。というか仕事のしすぎだと医者から言われているので減った方がよかったりする
私の力石でいいといってくれる部隊に定期依頼をうけた数を納品してから余った力石は持ち帰るか競売にかけてもらうことにして国経営の売買所に持ち込もう。どうせ他の癒し石と守り石を企業や国経営の施設に納品しにいくのだからちょうどいい
考え事をしながらも通いなれている場所に足を向けて市電で4駅。売買所に行き依頼書を出して納品・お金を受け取った後に依頼以外で作った力石などを売買するところへ向かう。珍しそうに見られているが、全くないわけでもないし甥や姪におもちゃを購入したり親にプレゼントを送るために余分に作ることも有るのですごく注目されることもなく何かを誰にかプレゼントするんだなという顔をされただけである
上質な力石を5個売却トレイにのせて鑑定を待つ。鑑定士はいつもの様に品質を確認して金額と買い取れない力石をのせて戻してくれる。小さなものは買い取れたみたいだがちょっと大きなものは駄目だった(価値が高すぎて)らしく150万円ほど乗せたトレイが出てきた
「うちではこれ以上は」と言われてまあそうだろうなともいながらも大きなものを袋にお金も袋に入れて受けとりサインをして銀行へ
1万だけ引いてあとは貯金に回す。お一人様だから老後の資金は沢山ためておいた方がいいとの考えである
帰宅するための電車の時間がまだあるので本屋で漫画と技術雑誌を買って暇を潰す。最新鋭の論文や力石を生成する魔方陣がのったもので色々と面白い視点で研究している人や便利な魔方陣・魔道具がのっていたりしてとても楽しいのである
定期講読しているものは別の雑誌だからたまに違う雑誌を読んでみるものも楽しいものである。移動中も雑誌を読みながら時間を潰す。
売買所があるところは自宅から交通機関を利用して1時間ほどかかる田舎にすんでいる
緑豊かで騒がしくない自宅は親と同居している実家でもある。一度都会に独り暮らしをして普通の仕事をしていたが、性格に合わないのとパワハラ?モラハラ?じみたことをされて堪忍袋のおが切れたので正式な手順に則って仕事をやめて帰ってきたのは3年前。家でごろごろしているのも厭きたので、昔とった杵柄とばかりに力石を生成し売買することで生計をたてることにしたのである
品質がよかったら大人の小指大の力石で30万ほどする力石。元々趣味で生成していたので品質は高いものしか作らないし力石だ
けではなく守り石や癒し石も生成出来るので勘を戻したら特にお金に困ることもなく生活できるのである
依頼は手元にあるのものを売却するときや定期依頼として各種類の石を何個何ヵ月後とにというものがあり大手から中小企業が依頼を出していたり国の機関や軍からも依頼がでいているのでそれをチマチマとうけている現状である
軍からは小さな部隊から3つから定期依頼をあとは病院や中小企業からも半年で数個の依頼をうけていたりする。
癖のある石なので使用するところが限られてしまうのが難点だが、生成する人間が癖のある人間なので改善はできない。それでもいいという人たちに納品しているので特に問題がないが途中から文句をつけられても困りますである
まあ、部隊のトップが変わったので仕方がないことである
帰宅してから母に話をしていると軍の人から連絡があった。昼間にあったことに関しての謝罪だったので、文句をつけてきた部隊には下ろさないけれども他の部隊には今まで通りに下ろすから心配は依頼ないと答えればホットしている様子が電話口から聞こえる
私以外にも軍に納品している人もいるのだが如何せん軍が要求する品質を作り上げる人間は少なく癖の強い私のような人間が作った力石でも納品が途絶えたら大変らしいのである
今後もよろしくお願いします的な事を言って電話を切ってから母と会話を再開してのんびり過ごす
その後も何件か私の力石に関して文句をいってくるところがあったのでそことは契約をしないようにした。
同じ子会社でも納品できるところとそうではないところが出始めたが、私の力石を断ったところはなぜか業績が悪くなったりよい噂が聞かれなくなったりしていたのだが、何でだろうと思っていたのだ。何でだと知り合いに聞いてみれば他の職人にも同じような事をして納品してくれる職人を一人に絞ったみたいであるとの答え
「別にそういうことは多々あるから誰も気にしていなかったけれども。製品の質が落ちたりそれほどいい機能がついていないにも関わらず値段が高かったりしてね。そうなれば」
「客足は遠退くね」でしょと同意してくれた知り合い。
「にしてもあんたも気にしなさすぎじゃない?」そういわれたが
「仕事のしすぎだと言われていたから減っても特に問題はないし。私のでもいいといってくれるお客さんは未だに居るからね。
別にそこに固執する理由はない」きっぱり断れば
「まあ。あんたの力石の品質は高いし守り石や癒し石は品質が特にいいと言われているだけあって契約を切るという馬鹿げた事をするところはないだろうね」
「うん。ガン治療とか難病とかそういう治療に使うからと言われて国からも依頼はあるし。寄付として内戦をしている国の病院とか学校とかに守り石とかもあげているからね」
「そういうあんたに喧嘩を売る人間たちに仕事を依頼するか?と言われたらしないだろうという答えを出す人たちが多いということだろうね」
「私はただの自己満でやっているだけだけど。やらない偽善よりやる偽善だろうと思うんだよね」
「だからこそ外国で我が国の評価がいいんだよね」
「天然資源とそういう資産があるけど開発ができていない国に協力をして技術提供と力石や守り石を提供して国益に繋げるからって時々外交の人からも依頼があるし」
「そう考えれば、小口が少しなくなっても」
「気に止めない」だろうね。といっているけれども知り合いだって国に特別な依頼をうけていることだってある。
というか力石を生成する人間ならばある程度の品質を作れる程度の力量があれば誰だって国からの依頼をうけているので私が特別というわけではない。
「当たり前の事だけしてるのにいちゃもんつけられたくないわ」そういえば、納得したように頷いている知り合い
「まあ、君を切った馬鹿たちは相応の報いを受けてるし。そもそも職人を馬鹿にしたらどうなるかっていう話なんだよね」話す知り合いも同じようなことをしている。対等な関係だと言っているのにも関わらず下に見た彼らが悪いのだから誰にも文句はいわれない




