普通の夫婦
力石と言う新しいエネルギーは資源が少ない我が国としては是が非でも獲得したいものであり、生成できる人材を育成・確保するのは当たり前であると言う考え方は間違ってはいないとは思う
ただ、保護と言う名目で連行してきた人間達が作る力石の質によって養成する人間・普通・良質と分けたのも間違ってはいない対応で有ったが、良質を生成する人間は手厚く管理し普通は共同生活ができる建物のなかに押し込めて管理をしていると言えない状況で力石だけを作らせると言うのはどう言うものかとは思っていたが、家にいても同じような環境で有ったが為に特に気にせずに過ごしていた
そのなかで自分も青い顔をしながら他人が食べれるよにと食事を用意したり大浴場に湯をいれて入れるようにしたり。時間を見つけては掃除をしたりしている人がいた
どうしてだと聞いたら
「人が困っているなら気になるのが性分。やれないことはしないけれどもできる範囲の偽善ならやった方が自分のためだから」と笑っている
では、と手伝いをし始めるとありがとうと良い他の人の手伝いをしていく彼女
それからしばらくして自動で掃除をする機械を力石でできるように改造してくれた人がいて掃除が楽になり回りも自分ができる範囲でといった風に食事を用意したり風呂の準備や掃除をしたりと自分達で生活環境を整えれるようになった
それから10年が経ち粗悪と言われて再養成されていた人間や素質があるとして要請学校を経た人間が増えていくなかで我々は必要がないとされ希望者以外は解放されることとなった。いわゆるぽい捨てである
10年間も利用するだけ利用して利用価値がなくなったので捨てるとか道理がなっていないと怒っていた彼女だが
「そんなこと言っても、あの人達には理解できないだろうし。このあと出ていった人間が世間に現状を流出させたらどうなるかと言うことすら予想できない人間なんだから無理だよね」と薄笑いしながら荷物をまとめている
荷物と言ってもほぼないと言っても過言ではなく持ち物は報酬が入った通帳と携帯電話だけのようだ
どこへときけば実家に戻ると頬を緩めて嬉しそうに話す彼女。実家が家族が大好きだと公言しているだけある
自分はどこへいこうかと考えていれば
「一緒に来るか?帰る場所がないと以前いっていたよね?」と聞いてくる
大丈夫か?と訪ねれば
「大丈夫じゃない?親にも一応連絡はしておくから。居心地がよかったらどこか部屋でも借りれば良いだろうし。ダメだったら違う場所を探せば良いだろうから」と言ってくれたのでお邪魔することにした
なにもないといっていた通り何もなかった。あるのは田んぼと漁港と数件の商店であったが、力石・祈り石を生成するために必要な自然はたくさんあった
どこになにがあるのか分からないだろうからと老犬と散歩しながらここが小学校。警察・店・漁港と案内してくれたり
散歩だと言ってここが5号の浜とか言いながら隣村まで続く海岸を案内してくれた
彼女と家族の間では結構話題に上るのでどういう場所なのか疑問に思っていたので大変たすかった
祭りなどでは一緒に参加しながら知り合いを紹介してくれて気がついたら婿のポジジョンになっていたが、それも悪くないと思いプロポーズし結婚し娘目が生まれ現在もう一人妻のお腹に宿っていて幸せだなと感じている
ある日の事だ、1才の娘と散歩して帰ってきたらどこかで見たことがある人達が玄関先に立っている
誰だろうと思いながらも娘がその横を走り玄関に入っていくのを見て驚いている客?
「家になにかご用ですか?」と声を掛ければ更に驚いているが誰だろうと思いながら娘が靴を脱ぐのを手伝う為に玄関へ
靴を脱いだ娘がお義母にお母さんは?と妻のことを聞いている。二人目を妊娠しながらも大黒柱として祈り石を生成しているので、幼いながらも仕事を邪魔しないよう気を付けているのをみて成長したなと思っていれば
「武利か?」と名前を聞かれたのでそうですが?と答えればさらに驚いている。何だろうと怪訝に思っていれば妻が玄関まで出て来て
「ネグレクトが今さらなんのようですか?」と言いつつサンダルを履き逆に対峙する
「私の夫に今さらなにようですか?結婚式も遥が生まれたときも一応連絡しましたが音沙汰がなかったくせに。自分等が少し生活が困ったからと言って押し掛けるなどどういう了見で?」家族を守る体勢に入った妻は頼もしいが、背中で守られている訳ではない。微かに緊張している妻を後ろから抱きしめて
「俺の両親かこの人たちは。きちんと認識していなかったからわからなかった」と言えばため息をつきながら
「長年ネグレクトされていたから認識すらしていなかったの?まあ、致し方がないと言えばそうだけど」
「それに彼らを養う義務は俺にはないから。家族はお前と遥。義父・義母だけだと思っているし。親戚はお前の方だけだろ」と拒絶を口に出して言えば困った人だと言う表情をする妻
「と言うことだから俺にすがろうと思うな。あと、俺の妹だと声高に言っている女はお前達の自慢の娘・妹なんだってな。迷惑している。今後そんな事を言って問題を起こしたら詐欺として訴えるかなら」そう言って妻と家に入る
驚いた顔しか見せなかった自称家族達を放置してソファーに妻を座らせていればお義母から
「何かあったの?」と言われたので
「自称家族がまた」
「最近多いわよね。その手の人達が」とあきれている。こちらに来て妻と結婚し仕事はまあまあ。家族が出来て幸せを噛み締め始めた頃から金目当ての人間が押し掛けて来はじめた。
力石の需要も有るからだと思うが、我々夫婦は祈り石しか売買した記憶がないのだが、何処からともなく湧いて出てくる
「困りましたね。警察にお願いしても民事不介入と言われますし。落ち着けば良いのですが」
「そうよね。そろそろ生まれてくるから静かにしてほしいところよね」とお茶を出してくれている。娘にはジュースを出して一緒に飲んでいれば漁に出ていたお義父が帰って来て
「まあまあだった」と出せなかった魚を捌きながら話している。
「一夜干しが食べたい」と妻が言い出し娘が賛成しているのを見て嬉しそうな義父が刺身作りビールを片手に楽しんでいるのも幸せな家族団らんである