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オンラインで間違って最弱な鬼を選んでしまった件  作者: あるすれっと
俺、吸○鬼になりました 受難の始まり?
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1-7



──モンスタットビレッジ 入り口──






「疲れた……」


あの戦いから約30分後、俺は何とか次の村に到着していた。


本来なら10分も満たない距離なのだが、最強の敵によって三倍もの時間がかかってしまった。


そう我が宿命の魔王、スライムである。


あれからエンカウントすること計16回。


石投げが先制攻撃+超威力だったから何とかなったところはあるのだが、正直言って疲れた。


「にしてもこんなに疲れたのは初めてかもな」


毎回そのような効果なのか確証が持てなかった為、道中物凄い慎重に進んでいたからだろう。


匍匐(ほふく)前進や忍び足などを使って、ひたすらエンカウントしないようこっそりと。


まぁそんな努力虚しく、残念な事に出会ってしまっていたのだが。


戦闘も戦闘で、いつ先手をとられ死亡(ゲームオーバー)になる恐怖が常に付き纏っていた。


そんなストレスと緊張感の板挟みで疲労していた。


あーあ、前作が懐かしい。


あの時は強力なドラゴンをバッタバッタ倒していたっけ。


少ししんみり過去の栄光に思いを馳せつつ、俺は入り口の門番に挨拶をしてから村に入った。


さてその村だが、スタートビレッジより大きい村で、町と呼べるくらいのものだった。


中世ヨーロッパのような、レンガ造りの建物が規則正しく並び、等間隔にガスタイプの街灯がある。


1人、もといモンスター通りも多く、結構賑わっている印象だ。


これなら小イベントやアイテムとかが期待できそう。


「けれど疲れているな」


道中がすごく疲れたのもあるが、HPが残り少ない。


というのも最初の怪我を治していないからなのだが。


「とりあえず休むか」


そう決めた俺は、直ぐ宿屋に向かうことにした。


親切にも、入り口近くのモブであるトカゲマンさんが場所を教えてくれたので、宿屋へすぐに着くことができた。


……うん、着くことは出来たんだ。


でも入らなかった。


いや、入れなかったってのが正しい。


理由は簡単。


「嬢ちゃん、こっちに酒をくれ!!」


「こっちも頼むぞー!」


「はーい!」


「ガッハッハ!今日は敵ユーザーを大勢始末できたからな、最高の1日だ。じゃんじゃん飲めよ、てめえら!!」


「「おー!!!」」


皆さんはお気づきだろうか。


そう宿屋の中にモンスター系のプレイヤー様方がいらっしゃるのだ。


しかも相当広い部屋なのに、ひしめき合う程にたくさんの人数が。


コミュ障の私は思わず気絶しかけましたね、はい。


「ど、どうしようか、な」


恐らくこの人たちはここを泊まるだろう。


そうなったら部屋数的な意味もなのだが、この人数がいる環境というのもコミュ障の俺には辛いところがある。


うん、正直言って泊まれない。


かといって他に泊まるような場所もないし、田舎に泊まろう的なノリは俺には絶対できない。


「おい、どけろ雑魚」


そんな感じで入り口前で悩んでいると、えらいマッチョで強そうな、顔が恐い鬼さんのプレイヤーが背後に立っていました。


「…………」


正直言って絶句しました。


突然話しかけられたからというのも勿論あるが、主原因はそれじゃない。


恐い、強そうではなく、ただただプレイヤーが話しかけてきたから。


「俺様をシカトするとはいい度胸だ。余程痛い目にあいたいようだな」


いや、もうプレイヤーに会ってしまっただけで充分なんです。


申し訳ないけどお腹いっぱいなんです。


なんて思っているがそれが相手に伝わる事はなく。


話しかけられずモジモジしていると、ふとましい鬼の手が俺の頭を掴み取り、俺の体は宙に浮いた。


いたいいたい、これやられちゃう!


「待ちなさいな」


そんな俺死にかけかつ、はた目からしたら絶対に関わりたくないだろう状況に、マントを深くかぶった人物が近寄ってきた。


しかも恐らくまたプレイヤー。


ふふ、追加により動悸が早くなってきたぜ。


「確かに彼に非はあるわ。けどそこまですることでもないんじゃない?」


「俺に口答えとは、死にてぇようだなクソガキ」


突然とんできた正論に対し、鬼さんはフードの人に明確な憤りを見せた。


そして俺をそこら辺の適当な場所にポイッとし、フードの人の目の前に立って睨めつける。


それは普通なら恐怖するくらい恐い睨み。


「たかがそれくらいでキレるような人物に、ガキなんて言われたくないわ」


だがあの人は平然と鬼をけなした。


しかも余裕の表情でだ。


これにより完全に激怒した鬼は、その筋肉の塊と化している腕をあの人に振り下ろした。


──が


「攻撃はそちらからですから……これは正当防衛ですわ」


気が付くと鬼の背後にあの人が立っていた。


超スピードなのか、テレポートは知らない。


だがこれは感じる。


あの人絶対強い、と。


そう思ったとおり、刹那の瞬間に鬼さんは宙を高く舞い


「ジ・エンド、ね」


“鬼”の固有技である鬼砲で、鬼さんを消し炭にした。


──その時にはだけたフード。


金髪灼眼の少女の姿だった。


「大丈夫だった?」


一息ついたのち、爽やかな笑顔をこちらに向けて訊ねる少女。


だが、その顔は一瞬で青ざめた。


腹部貫通、右腕・右足複雑骨折、左腕打撲、脳震盪、あばら骨折などなど。


え、何を言っているかって?


鬼さんにポイッされたせいで()った俺の怪我です。


そりゃあそうやって青ざめるよね。


だって俺が、真っ青でボロボロの滅茶苦茶になってる顔で見てるんだもん。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


そんなあの人の叫び声を聞きながら、俺の視界はシャットダウンしました、とさ。

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