4-1
えー皆様ご機嫌麗しゅう。
古見遊ショウでございます。
現在我々は、オタ杯闘争という国を挙げての祭りに参加するべく、えっちらおっちら向かっていました。
そう向かって“いた”
ある二つの事案が発見され、悪化するまでは、ね。
事案その1。
宇佐美さんがポンコツだった件。
旅をしていく中、彼女の天然という名のミスがとにかく多くあった。
お使い頼むと間違いなく買うもの間違えるし、売らないで欲しいものを売っちゃうし。
フィールドに出れば、転ける転ける転けるの三連コンボ。
そして一人はぐれて迷子。
ダンジョンに入ろうならば、有る分だけの罠を全部作動させてしまう。
これでも一例だ。
全部言うと長くなってしまうので割愛するが、酷いって事が分かってくれればいい。
あのエイレが引くくらいの酷さだし。
まぁこれはゆっくり直していくしかない。
それよりも事案その2が問題だ。
俺らは大陸を渡るため、船と飛行挺の両方あるモムポートシティーに行った。
そしてどちらに乗るか決める為、財布と料金表から話し合いをしようと思ったのだが……
不思議なことにね、無いんですよ。
俺が勝って手に入れた筈の150万円。
しかもランダムドリンク9個も無くなるおまけ付きで。
俺は笑顔作りながら、二人に訊ねました。
「金、どうした」
明らか目線をそらす二人。
実を言うと俺がログインしていない時ってのが結構ある。
高校生&現在テスト期間中だから。
なので二人だけで進んでもらったり、クエストを進めてもらうようお願いしていた。
勿論お金を全て渡した状態で。
「金、どうした」
俺は超低音な声でもう一度聞く。
だがなかなか話そうとしない。
武力行使を考えた矢先、ナビ子がテロップを出してこう教えてくれた。
【あのお金、ショウさんが稼いだ次の日には無くなっていましたよ。原因はあの二人がギャンブルで負けたからです。今まで何とか誤魔化していたようですが、ここにきて露見しましたね】
──ということで、今私たちにはお金がない。
プレイするのに問題は無いくらいはあるが、大陸を渡るくらいは無いのだ。
となるとするのはあれしかない。
それはクエストかアルバイト。
俺はボロボロになった二人を連れて、まずギルドと呼ばれる場所に行った。
ギルドと聞くと何やら契約したり、軍隊組んで戦ったり、商売したり、チームみたいにワイワイするグループ等のイメージがあるが、このゲームでは違う。
ここ南方で言うギルドでは、クエストの依頼受注、パーティーの募集、情報の交換等、どちらか言えば酒場のような役割をしている。
酒場でも同じことを一応できるが、ギルドは運営がまとめているだけあって不公平不平等がない。
あっちだとぼったくられる事あるみたいだしな。
故にギルドはいつも人が一杯である。
ええ、動悸が大変なことになっています。
それでも頑張って受付までには行ったのだが……
『申し訳ありません、只今受注超過によりクエストが無い状態にあります。数日お待ちいただくか、別の街のギルドを推奨いたします。誠に申し訳ありません』
ということらしい。
つまりは皆、大陸渡るための資金を集めるためにクエストをやり、それがキャパオーバーしたって事だろう、なんてこったい。
なおナビ子に聞いたら、周辺の町も同様に受注超過になってるらしい。
となると後はバイトか。
因みにバイトはリアルの奴と同じシステムである。
だがこの状況じゃあバイトも無さそうな気がする。
半分諦めムードで日雇い所に行き、受け付けに訊ねてみた。
『バイト、ありますよ。それも結構な数』
「本当か!?」
そう言ってNPCが出した一覧を確認すると、確かに色々な種類のバイトがあった。
中にはゲーム時間の一時間で2000円ってのもある。
これはやるしかない。
そう決めた俺らはそれぞれバイトを決めて働き始めた。
──回想終了。
ということで、今俺はアルバイトをしている。
内容は至ってシンプル。
厨房の皿洗いを永遠とする事(時給700円)だ。
確かに高額もあったし、種類も様々だったが殆ど接客関連だった。
そうじゃなくても肉体労働だったりね。
その中で唯一俺向きなのはこれしかなかった。
誰も会わない個室で延々と皿を洗うだけだし。
なおあの二人だが、高額なアルバイトを無理矢理やらせた。
宇佐美さんが確かカフェの店員で、エイレがモデルだったかな。
双方とも時給は2000円オーバー。
船3人で6万、飛行挺3人で18万なので、意外に早く達成しそうだ。
よし、ここは頑張って皿を洗い続けているとしよう!
いくぜ!
【一時間経過】
「……」
【三時間経過】
「………………」
【五時間経過】
「ふんふふーん、いぇいいぇいうぉー、らんららーんばばばばばばばばば!」
【九時間経過】
「もうむりや」