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オンラインで間違って最弱な鬼を選んでしまった件  作者: あるすれっと
落胆と歓喜の遊戯(ギャンブルゲーム)〜禁欲の賛美歌〜
22/104

3-6

「クックック、貴様が我が宿敵吸糖鬼か!!」


手で口元を隠しながら、傲慢な態度で言う相手。


本来ならば、またその笑い方かよって言いたいところである。


そう、言いたいところなの。


でもね俺、今二重の意味でピンチだからそんな余裕無いの。


相手がユーザーだという事と、一人で強そうな奴と戦わなきゃいけないって事の二つが。


あーマズイマズイ。


手が痺れてきた。


「貴様の仲間は俺がおかしくさせた。治して欲しければ俺を倒してみるんだな!」


あ、そうだったんですね。


どおりでおかしかったわけだ。


──じゃなくてじゃなくて。


きっとここは逆上して戦うとか、本来は熱いシーンになる筈だろう。


だが俺には無理だ。


戦う前から精神が瀕死なんです。


動悸も激しくなってきているんだもの。


そんな俺の状況を知らない敵は、ニヤリと不適な笑みを浮かべた。


「クックック、挑発に乗らないとは流石吸糖鬼と言うべき、か。面白い、蹴散らして糖尿病にしてやる!!」


そう言って、相手は長いコードを手にとって向かってきた。


予想するに鞭みたいに使うのであろう。


先端にはプラグがついている。


あれなら、当たると痛い。


送電雷光鞭ライトニングウィップ!!」


訂正、死ぬわ。


敵はあろうことか電気を流してきたのだ。


そのせいでプラグは、目で確認できるほどの電気を走らせている。


これはくらったら間違いなく即死ゲームオーバーだ。


「ふんぬ!!」


気合いを込めた声と共に、素早い蛇のような一撃が襲ってきた。


それを感で避けるが、直ぐに二手三手と俺の命を奪いに来る。


このままでは間違いなく終わる。


何か反撃できるものがあればいいが、生憎持っているのはドリンクと定規、分度器のみだ。


武器は問題外だし、ドリンクはランダムと信用できない。


詰んで終わったか、そう思った時にあるものを思い出した。


それは特殊能力。


まだ逆転のチャンスは残されている。


一か八か、運命と俺の幸運に祈ろうじゃないか!!


俺はせまりくる攻撃を何とか避けながら、左手で相手の肩に軽くタッチした。


「避けて何をするかと思えば、触れるだけで精一杯だとはな。呆れたぞ!」


俺をあからさまに見下しながらそう言った敵。


だが俺は逆に笑みを浮かべる。


「勘違いしてるな。お前は“勘違い”しているぞ!」


ド「何をい──!?」


だって“左手”で軽く“タッチした”んだ。


そうするだけで俺の能力、『左手で触ると何かが起こる』が発動される!


相手は光に包まれたが、さあ一体どうなるんだろうか。


光が段々と薄れ、相手の姿が見え始めてきた。


「…………えっ?」


そして、絶句した。


何故なら、敵のいた場所に大人がいたから。


30代前半くらいで、スーツを着ているまるでサラリーマンのような男性が。


もしかして、外見をユーザー自身に変える効果だったのか?


物凄い俺に特効じゃないですか、クソッタレ。


「な、何でリアルの姿なんだ!?お前何をした!!」


ごめん、対人でもオンラインのキャラなら、まだ動悸だけで済む。


だがリアル人は駄目だ。


「あ……ぅ……」


動悸が酷い、目が眩む、頭が痛い。


特にサラリーマン──もといスーツには嫌な思いでしかないから、いつも以上の効果がある。


ちくしょう、かすれてきた。


もうぼくはむりだよ。


ごめんねみん──


【ここで諦めるんですか、ショウさん】


なびこさん、むりなものはむりなんだ。


【それに思い出してください。あの人とは初見ではない事を】


え、いちどあったことがあるの?


【貴方の記憶中枢にありましたので確かです。……思い出しなさい、あれを】


あれを?


【はな子の栄養剤がきれたこと──具体的には2016年4月26日6時57分に更新した、一話の1―1、約20行目辺りを】


…………(スマホで確認中)


あ!!


【そうアイツは子持ちのリア充なんです!「ハッハッハ」って言うくらいの!!】


そうか、ナビ子も非リア充なんだな。


道理で共感できるわけだ。


【ええ。だから代わりに頼みます。リア充への制裁を……】


そうだな、ここでトラウマこじらせてる場合じゃねえ!


俺は目眩やら動悸やらを気合いで何とかし、いつの間にか座っていた身体を無理矢理立たせる。


そして敵の姿を改めて確認する。


スーツの30代男性、手には指輪、雰囲気が幸せぷんぷんだ。


もうこれで、戦えない八百万の理由より、たった一つの殺気が勝った。


コミュ障故に彼女ができない俺に、リア充な姿を見せるのがいけないんだよ!


「何をさっきからぶつぶつ言ってるんだ!さっさと元に戻せよ!!」


「──いくぞナビ子!」


俺は敵の話をスルーし、あるドリンクを飲み干した。


それはラムダドリンク。


ナビ子さんが教えてくれたお陰で存在を知ったわけだが、これは“ランダム”を操ることができる能力を持つ。


つまり望む能力を使えるって訳だ。


勿論、左手の能力も適応される。


飲み干した後、60㎝定規を左手で持った。


【能力付属しました。効果は以下の通りです。武器攻撃力強化(特大)、光属性付属、斬撃効果延長、攻撃範囲延長、全状態異常耐性付属、装備者の能力向上です】


「シカトをやめたまえ!精神をおかしくしてやる!!」


【リア充は混乱技、錯乱目コンフュアイを使った】


「よし!これで──」


【そんなのが効くとでも?】


「なッ!?」


驚愕の表情を浮かべる敵。


技が決まらなかったのもそうであろうが、一番は俺の武器であろう。


定規が光の剣の形になり、輝かしい光と威圧を放っているから。


敵を倒すための一撃を放つ為に。


そう、この間まで無言に徹したのはこれをする準備をしていたからだ。


相手は恐れ、逃げようとするが遅い。


「光牙……滅ざぁぁぁん!!」


一振り。


その一振りは全てを滅する強大な光の牙となり、敵を飲み込みながら天へと還っていった。


【これが非リア充の】


「リア充に対する恨みだ!」

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