3-2
それからゲーム時間で数時間後、僕らはバーベッドコールに到着した。
町の入り口で助けた少女と別れ、宿を確保し馬車を置くと、エイレは開口一番こう言った。
さぁ行くわよ!と。
俺は全力で拒否しようとしたが、吸糖鬼が吸血鬼に敵うわけ無く、ネオンがピカピカ光る建物に、俺は首を掴まれ連行されました。
「まぁまぁ人が多いわね」
入って直ぐエイレはそう呟く。
……確かに人が多い。
だが、コミックマーケット並みの人口密度になっているここを、まぁまぁ人が多いで済まされないと思う。
明らかに多すぎだ。
それなのにまぁまぁと言ってしまう辺り、少しお馬鹿キャラか世間知らずなのだろうか?
少しエイレの将来に不安を抱いたが、今はそれどころじゃないので機会があるときに指摘しておこう。
……機会があれば、だけど。
なお現在私は、絶賛心拍数上昇中です。
もう早く出たいね、うん。
そんな俺の気持ちを察すること無く、エイレはカジノの奥に進む。
腕を掴まれてるお陰で迷子にはならないが、心拍の上昇が止まらない。
俺が少し気持ち悪くなり、丁度カジノの中央に到達した辺りでエイレがボソリ呟く。
「やっぱり、みんな時間が欲しいのね」
……時間?
時間が欲しいとは一体どういう事だろうか。
そんな疑問が浮かんだ俺は、いつのまにかレギュラー化してきたナビ子に、気力を振り絞って聞いてみた。
するとナビ子は直ぐ反応し、こんな返答をした。
【実は今、このカジノ限定で無料期間延長のキャンペーンをやっているのですよ。普通にゲームをし、貯まったコインを交換することで、相応の期間が無料化という流れです】
それはとても魅力的だ。
成る程、だからエイレはここに来たって訳か。
無料期間を延長するために。
ならば俺もいつまでこうしている訳にはいかない。
深呼吸を何回も行い、できるだけ心拍数を下げる。
……うん、なんぼか落ち着いてきた。
これだったら問題なく出来るだろう。
「エイレ、ゲームをするために早速コインを手に入れようぜ!」
「分かっているわよ。えーっと……交換所はあそこね」
エイレが指差しした先には、交換所と大きく書かれた看板があった。
ふむ、あそこで交換するんだな。
俺のお小遣い節約の為にも、ここは勝たないと。
俺は自分のメニューを開き、お金の欄を見ながら呟く。
「どのくらいが相場かな」
「取り合えず一万円でいいんじゃない?お金は出してあげるから交換よろしく頼むわよ」
そう言ってエイレは一万円を俺に渡した。
どうやら本当にくれるようだ。
なら、是が非でも行かないとな。
俺は「分かった」と短く言い、受け取ってからコイン交換所に行った。
……にしても、発売されて二日目なのに、一万を渡せる財力ってどうなってるんだ。
普通は一万持ってるだけでも奇跡なのに。
考えられるとするならレア堀&金稼ぎか、課金しての入手か。
……なんかどっちもな気がする。
そんな事を思いつつ、交換の順番がまわってきた。
受け付けの人を確認すると、NPCのようだったので、安堵しながら話しかけた。
「すみません、コインの交換をお願いしたいのですが」
俺はそう言った後、エイレから貰った一万円を出す。
「一万で間違い無いでしょうか」
「はい」
そう聞くと何やら大きな機械にお金を投入するNPC。
どうやらコインを取り出しているようだ。
……そう言えば、一万円ってどのくらいの量になるんだろう?
まさかコイン一万枚ってことは無いだろうが。
前作だとその辺を気にしないでやったからなぁ。
──このように懐かしんでいる時、何やら大きな音が鳴り、直ぐにNPCが機械からでた何かを出す。
そしてそれを俺の前に置き、「こちらになります」と言った。
……おかしいなぁ。
コインが五枚しか渡されないんだけど。
一枚2000円の価値もあるんだけど。
ボッタクリ過ぎるだろう、と思っていると、NPCがコインを手で指しながら言った。
「お客様、これは1000コインですよ?」
シ「1000コイン?」
「ええ、これ一枚でコイン1000枚分なんですよ。だからボッタクリではありません」
ヤッチマッタヨ、オレ……