3-1
皆さま、おはこんばんにちは。
ショウでございます。
さてさて今日、というより今回も馬車の中からお送りします。
まず何故馬車にいるかの振り返りから。
前回ログアウトしてから一晩経ち、俺は朝早い時間にログインした。
大体七時くらいからだろうか。
そのくらいならエイレいないかなーと思ったのだが、俺の予想が甘かった。
なんと既にいたんです。
しかもイン時間見ると、今日の一時辺りから今までずっと。
やりすぎだろ!
と思ったが、一晩経っていつも通りに戻った俺はそんなこと言えなかった。
……はい、話しかけられないんです。
昨日は気持ち悪くて、テンションを無理矢理上げてたから会話できてたわけで。
体調万全な今は、俺のコミュ障スキルも復活してしまったわけだ。
そんな感じに昨日と態度が違うのだが、エイレは特に気にした様子もなく、ただただ俺にこう伝えた。
「冒険に出発よ!」と。
──そして現在に至る。
なお馬車についての補足。
昨日まで使っていた荷馬車は、糖党の連中の砂糖の剣で駄目になってしまっていた。
何でも『物を砂糖に変え、生き物を糖尿病にさせる』効果あったとか。
故に馬は大丈夫だったが、馬車は砂糖に変えられた為無くなった。
だが今新しい馬車を使っている。
理由は──今運転している少女が関わっている。
髪は黒で瞳も黒。
目立った顔立ちではなく、一言で表現するならば普通だ。
服装もそこら辺のモブと同様である皮のワンピース。
一般的なNPCだ。
そんな彼女に、いま町まで運転して貰っている。
ついでに言うと、この子から新しい馬車も貰って。
「本当に町までいいの?それにこの馬車も貰っていいだなんて……」
「はい、あなた方は命の恩人ですから。お礼は十分にしてもらいましたわ」
エイレが申し訳なさそうに少女に言う。
だが少女は笑顔で返した。
──さて、今の会話で分かっただろうか?
そう、最初に悲鳴をあげた少女であった。
彼女は行商中糖党に襲われ、砂糖剣で斬りつけられてしまったようだ。
戦闘後、その彼女の姿を俺が発見し、吸糖したことで大事に至らなかった。
そのお礼と言うことで馬車を一台貰い、その子が帰るがてら運転してくれると言ってきた。
俺らは申し訳なく思い、渋って明日考えるって言っていたのだが……
人が寝ているときに勝手に了承したみたいです、エイレが。
と、そんな感じで今馬車にいるわけだ。
……俺だけどこ行くか分からないけど。
不安になった俺はこっそりナビ子に聞いてみる。
「ナビ子、俺ら何処に向かってるんだ?」
【恐らくバーベッドコールという町でしょう】
バーベッドコール?
随分と長い町名だ。
【バーベッドコールは唯一人ともののけが入れる町なんです。理由はある施設があるから】
「ある施設?」
【金が一夜に消えたり増えたりし、時には命をかけたりする遊戯施設です】
……えっとそれってもしや。
「つまりカジノがある?」
【そのとおりです】
……まさかカジノだったとは。
前作的に考えると、カジノは稼ぐにはいい場所ではある。
だがVRであるこのゲーム、そういうところには無法者もたまりやすい。
それ故、違法行為が数多く行われてるのだ。
いつぞやあった、リアルマネーでの取引とか、闇ルートポップコーンの販売とか。
それにそういった町は人が多い。
以前行ったときは、あまりの人の多さに動悸が酷くなり、リアル救急搬送の一歩手前まで行ったからな。
どちらかというと俺的に後者の方が大問題だ。
だから今作ではユーザーが多いカジノは行かないと決めていたのだが……行かないよな?
賭博じゃない、ちゃんとした理由があって町に行くんだよな。
更に不安になった俺は、思わずエイレに何をしに行くのかだけ聞いた。
するとエイレさんこう答える。
「教えられないけど強いて言うなら……知恵と勇気の勝負をする場所ね!ついたら即一夜の祭典に繰り出すわよ!!」
厨二語を翻訳。
『カジノ行くぞ!!』
──そうですよね、その為にカジノある町に行くんですもんね。
俺は今だかつて無い最大の鬱になりながら、目的地まで向かっていった。