2-6
さて、今のところ状況だが……
エイレが糖党の8人に囲まれている構図だ。
武器はロングソード二本に投げナイフもあるようだ。
まぁ最悪、鬼の固有技である鬼砲がある。
近遠共にこなせる故、余程の事がなければ負けることはないだろう。
その余程も、今のところ可能性があるのは、相手の砂糖剣と種族くらいだ。
余裕だろう、そう結論付ける。
「行くぞ!」
厨二語を連発し、リーダー的な糖党の奴(以下厨二)の掛け声で、糖党たちは一斉に攻撃を仕掛ける。
ある者は頭、ある者は胴、ある者は腕、ある者は心の臓目掛けて。
避けられないほどの密の濃い八つの斬撃。
だがそれは全て空を斬る。
「馬鹿な、避けられただと!?」
厨二は消えたエイレを目で追おうとするが、一切の気配がない。
同様に糖党の連中も探すが見つけられないようだ。
──あれ程啖呵をきって逃げたのか。
そう誰かが言葉をもらす。
俺らに恐れをなした、と付け加えながら。
これのせいか、一人の糖党が剣を下げ、少し気を緩ませた。
だが其が仇となる。
刹那。
秒数で数えられない程の刹那の時。
その緩ませた糖党の首が宙を舞った。
初めに気づいたのは厨二、次に俺、三次に糖党。
本人が死亡に気付かぬまま、その身体は消えていった。
「どっ何処だ!?」
一人の糖党が大声をあげる。
それに共鳴するがの如く、声を荒げ周囲を激しく見渡す他の糖党。
だが──エイレを見つけることはできない。
「クソッ、これはどうだ!」
痺れを切らした一人が、手を前に出して何やら呟く。
恐らく魔法だろう。
状況を見るに、広周囲に及ぶものを使おうとしているようだ。
……確かに隠れているのであれば、有効打になるかもはしれない。
少なくとも姿は見られるだろう。
だが彼は考えていなかったようだ。
この瞬間に、この無防備な瞬間に襲われることを。
「ヒッ──」
ゴロンと転がる四肢。
大きな穴が開いた胴。
魔法を発揮すること無く、そいつは消えていった。
「ウワァァァァァァッ!!」
次第に錯乱を始める糖党。
一人は銃を乱射。
一人は剣を一心不乱に振る。
更に一人は許しを乞おうとし、また一人は逃げ出そうとする。
だがそんな彼らも同じ運命を辿る。
錯乱した一瞬。
気が崩れた一瞬をエイレは逃さない。
糖党を刈って駆って狩って。
気付けば八人いたのが残り二人になっていた。
──いや、一人か。
厨二と共に生き長らえていた糖党が、あまりにもの恐怖からか自害してしまったのだ。
こうして残されたのは俺とエイレ、そして発狂寸前な厨二の三人だけとなった。
「い、いったい何が起きているんだ!?」
一人になった厨二。
訳が分からないと言わんばかりに、声を更に荒げ怯える。
「情けないわね、それでもあなた達は怪物なの?」
何処からかエイレの声がする。
それに対して厨二は更に恐怖を高めているようだ。
なお、前作で吸血鬼だった俺は、エイレがどこにいるか分かっている。
闇夜に生き、生気を食らいつくす怪物。
「恥じて悔いて消えろ!」
──当然、影に潜るといった芸当は息をするようにできる。
エイレは厨二の背後に現れて、厨二の身体を引き裂いた。
……よし、戦闘終了だ。
「お疲れ様ー」
俺はエイレに声をかける。
「ちょっと、何で私だけ戦うのよ?」
「俺は弱いからね。それにノリノリだったでしょ」
「うっ、確かにそうだけど……」
そう言って、最初イラついていた表情を、ばつが悪そうなものに変えた。
あれ、そういえば今更だが、戦闘形式が違っていたな。
不思議に思った俺は、その事を聞いてみようとした……丁度その前にナビ子のテロップが出た。
【対人戦はアクション風戦闘になるのですが、寧ろそちらの方が良かった感じでしょうか?】
「そうね、そっちの方が私はやり易いわ」
ふむふむ、対人戦だとアクションRPGになるんだな。
これは覚えておこう。
もしかしたらこのステータスでも勝てるやもしれないし。
──と、まぁそんなこんなで一日目のプレイを終えた。
なおエイレとフレンド申請&メール交換を(あっちが強制的に)したので、今後ともパーティーとして過ごすことに。
嫌だったが、本日二度目のショットガンを突きつけられた為、泣く泣くしました。
取り合えず、両者とも夕御飯の時間だった為落ちたが……
もう不安しかありませんでしたとさ、まる。