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緊張しながら出来上がるのを待っていると、ナビ子のテロップが目の前に表示された。
【ランダムドリンクができました】
ランダムドリンク……?
聞いたことの無いアイテムだ。
何となく予想はできるのだが、確証を得るためにもナビ子に聞いてみよう。
「ナビ子、ランダムドリンクって何?」
【貴方が考えているとおりですよ。飲めばランダムで効果が発揮されるアイテムです。悪い結果もありますが、能力強化やドロップ率増加等、利点も沢山あります】
「それに作るの意外に難しいから、結構当たりなのよそれ。売価も高いから、ギャンブル嫌いなら売ればいいし」
ナビ子の説明に、エイレが付け加えて教えてくれた。
ほう、そんな凄いものなのか、これは。
これで定規の件はチャラにできそうだな。
よし、この調子で調合していくか!
俺は更に素材を投下し、調合をどんどん始めた。
【ランダムドリンクができました】
「おーまたできた!」
【ランダムドリンクができました】
「おお、凄い凄い」
【ランダムドリンクができました】
「え、またかよ」
【ランダムドリンクよー】
「…………」
えっと、これはどうなってるのかな?
たくさんできるのは嬉しいが、連続で出来過ぎやしないか?
文房具の件といい、この調合といい、ちょっと怖くなってきたんだが……
まさかバグとかじゃないよな?
そう思っていると、押していないのにメニュー画面が開き、変な文字列がいっぱい出てきた。
まさか本当にバグ!?
それともウイルスとかなのか?
──なんて不安がっていたが、それは杞憂に終わった。
【ショウのアカウントや南方ストーリーをくまなくスキャンしましたが、問題は検出されませんでしたよ。つまり本当に何かの巡り合わせでそうなってるみたいですね】
ナビ子がメニュー画面に【のーぷろぐれむ!】と表示しながら教えてくれた。
……ふう、ビックリした。
バグとかなのかと色々焦ったが、まぁ結果何でもなくてよかった。
だがそれにしても凄い確率だな。
偶然で文房具のみ出たり、偶然で同アイテムばかり出たり。
これも吸糖鬼の能力のひとつだったりして。
なんて下らない事を考えながら、調合の画面に戻して再開する。
ナビ子のスキャンで少し時間が空いてしまったたが、この偶然はまだ続くのだろうか。
少し期待しながら画面を見る。
【調合の結果は勿論ランダムドリンクでしたよー】
何かもう軽いノリで教えてくれるナビ子。
まぁもう驚く事はないし。
俺はランダムドリンクを作る、ナビ子はランダムドリンクと表示するだけのお仕事だ。
これだったらもう連射してるだけでもいいか。
「ナビ子、連続四回で頼む」
【おっけーですよ】
俺はナビ子にそう言ってから、四回分の材料を入れる。
途中、一回落としてしまったが、何か問題になるわけではないだろう。
静かに結果を待つとしましょうか。
【調合完了です。リストを表示しますね】
お、出来たみたいだ。
早速チェックしてみようかね。
「リストをよろしく」
【では始めますね。完成したリストです】
【ランダムドリンクができました】
【ランダムドリンクができました】
【ラムダドリンクができました】
【ランダムドリンクができました】
やっぱりランダムドリンクのみだったな。
10個も必要では無いが、使わなかったら売ればいい話だ。
取り合えずエイレに報告だな。
「ということでランダムドリンク10個だ」
「はいはい。こっちも中々いい武器が出来たわよ。目ぼしいのはこれかしら?」
「どれどれ……お、パラディンランスか」
序盤でこれは当たりだな。
特殊能力は無いが、祝福された武器故に対怪物には絶大な威力を発揮できる。
それは吸血鬼やドラゴンにもだ。
……吸糖鬼は当てはまるか分からないけど。
「因みに他はナイフやショートソード、変わり種だとネコジャシが作れたわ」
「たしかネコジャシって獣系に特効だっけか」
「そうそう。何やかんやで当たりだったわね」
「そうだなー」
俺たちは今回の結果を語りながら、出来たアイテムを袋にしまう。
なおエイレが調合したときに、回復アイテムが手に入っている。
これなら直ぐに旅に出ることもできるだろう。
俺は今後の冒険に恐怖を思い浮かべながら、エイレと共にエイレハウスから出た。
【…………】
【一つだけ違うアイテム出たのに、誰もツッコミいれないのですね。天然なのか、わざとなのか……】
【まぁ私には関係ないですね】