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「いや、俺は認めん!!」
こんな恥ずかしい武器?が初装備可能武器であっていいわけ無い。
もうこうなったら、この定規を錬金の素材として使い、初装備だった事実を抹消してやる!
俺は再び錬金画面を開き、素材の欄に出来たばかりの定規を入れる。
よし、後は他の資材を入れるだけだな。
何を入れるかだが、どうせなら結構良いものを入れてやろう。
もしかしたら「最初だから素材は適当でいいかー」と出し惜しみして入れていた、鉄屑や劣化銅といったレア度低い素材のせいかもしれないし。
だったらここにある中でもトップクラスなランクの物を選択だ。
「砂金に合金、銀塊とルビーを入れてっと……。よし錬金だ!」
俺は願掛けを兼ねて、気合いを込めた声を出しながら錬金のボタンを押す。
さて、一体何ができる!?
ナビ子のテロップが出るのを、期待と恐怖で見守る。
すると錬金成功の文字と共に、結果を俺に伝えてくれた。
【超合金製60㎝L字型定規ができた!】
「またかよ!」
思わず大きな声で叫んだ。
なんで高価な物を入れたのに、定規が強化しただけになるんだ!?
普通は錬金が失敗した場合、「へなちょこの剣」といった弱い剣ができるはず。
あれか、俺は定規に呪われてるのか?
もういい、こうなったらとことん定規の運命から抗ってやる!
今度は先程できた定規に、布や木材といったものを入れる。
こうすれば金属と非金属の錬金となって失敗する可能性が高いが、少なからず定規から変わった結果が出てくるはず……多分。
俺は更なる期待を込めて錬金を始めた。
この流れで一番怖いのは、木材の定規になることだが……
先程から言っているとおり、金属と非金属の組み合わせなので、木材定規になることはまず無いだろう。
ならもう安心したも同然。
さあ、どんな失敗作が出来たか見せておくれ、ナビ子よ!!
【錬金成功】
む、錬金は成功してしまったようだ。
だが鉄屑とか意味不明なオブジェとかに──
【試作実用型60㎝L字定規ができましたとさ】
「どういうことだよ!!」
先程よりも大きな声をあげて言う俺。
なんだよ、定規に“試作実用型”って!
なんの試作で、何を実用するんだよ。
定規は線を引くだけの物でしょうが!
よし、もう諦めて新しいものを作ってしまおう。
そうすりゃ定規との因果も終わるはず。
最初から価値が高いものをいれ、錬金を始めりゃいいのさ。
俺は錬金画面で、貴重鉱石を湯水のように投入し、錬金のボタンを押した。
【超合金分度器の完成!】
「だからなんでじゃー!!」
──その後六回ほど錬金をおこなったが、できたものは全て文房具のみだった。
唯一まともそうなのは、ハサミくらいだろうか。
それでも文房具だけどね。
まぁそんなものばかり出来ていたので毎回発狂したわけだが、錬金挑戦10回目にてついにエイレがキレました。
「ショウうるさいから黙れ」
「ごめんなさい」
俺は間髪いれず、潔く謝罪をする。
これに関しては、実際俺もどうかしていたと思うしな。
にしても、間近で10回奇声を耐えるって凄い。
すぐに怒ってしまうものだと思うのだが、意外にエイレは心が広いのか?
……脅してきてるからそれはないだろうが。
「それでなんであんな発狂してるわけ?」
そんなエイレは、俺に家畜を見るような目線を向けながら訊ねてきた。
俺は言おうか悩んだが、一応正直に話すことにした。
「錬金で文房具しか作れないんだよ、なぜか。いい素材使ってもだ」
「ふーん……」
そう言ってエイレは錬金画面を開き、何やらやり始めた。
そして暫くしない内に、立派な剣を何処からか取り出して構えていた。
「最低材料で回してロングソード。……錬金素材や錬金釜のせいではないみたいね。つまり悪いのはショウか」
今度はゴミ屑を見るように、俺を眺めるエイレ。
しかもため息付きである。
わざとやってる訳じゃないのに、この扱いは酷いと思うのだが……
「取り合えず錬金は役に立たないと分かったから、調合の方して頂戴」
「……はい」
ちょっと目から何かが出そうになったが我慢し、エイレと場所を変えた。
そして調合を選択し準備を始める。
今度はちゃんと出来るといいが……
基本的なハーブをいれ、祈らずボタンを押した。
ましなものができれば万歳だけど。
さてどうなる?