11-10
唐突ではあるが、現状の話をしようと思う。
腕が6本に増えて口から煙を出している、まるで怪物の様なエイレがリーダー格のフードさんをぺっしゃんこ。
マニことシーメルが巨大兵装を使い、大剣男さんプラス壁を見事に消滅。
おかげで見るも無残な状態になってしまった現会場。
最初は言ってた通り赤絨毯とか玉座とかあった結構立派な部屋だったが……
穴ぼこだらけで全部がボロボロ。
よくもまぁ未だ墜落しないのが奇跡だわ、なんて思う状態だった。
因みに余談をいくつか挟むけれど。
まず俺が生きていたのは、エイレの技のおかげである。
影であらゆるモノを取り込む技があるらしく、それにより火球が当たる前に回収され。
物陰でアイテムやら何やらで回復し、後はタイミングを見て参戦したというオチだった。
次の余談、俺あの後全く加入しなくても問題なかった件。
俺とてカッコつけたから、何かしら行動しようと思ったが……
うん、やっぱエイレ強いわ、強すぎ。
俺はいらない子でしたなぁ。
そして最後に一個。
ただの感であるのだが。
この後ヤヴァイ事になりそうな予感がする。
俺らがというより、敵さんがの方が。
理由は簡単、何か敵が近づいている様な感じがするから。
本来だったら満身創痍な俺たちがピンチになる筈なんだけれど。
エースらを倒し、トップを倒した今、残っているのは消化試合の雑魚蹂躙のみ。
エイレも自分で戻って来た以上、飛行船の安否などどうでもよくなっている事もある。
となったらもう最後、大技使い放題の大暴れ状態。
多分地獄になるぞー。
「クックック、まさに飛んで火に入る夏の虫とはこの事よ!」
「クックック、我が教主の仇をとらせて頂こう!!」
「光断全投〜」
入り口から入ってきた敵さん。
その瞬間、意外にも真っ先に攻撃していたのはこの俺だった。
敵は勿論吹き飛んで倒れていった。
ありゃ、地獄の釜を開いたのは俺からだったか。
まぁいい、色んな意味で鬱憤やらが溜まっている現状。
エイレのおかげで体力も精神も気力も十分。
柄でもないけど大暴れさせてもらおう。
「クックック、まだまだいるのだよ!」
今度は玉座跡地の後ろから兵がゾロゾロとやってくる。
だが一瞬のうちにーー
「ーーーーーーー!!」
狂戦士状態の腕6本エイレが瞬殺してしまいました。
「ひ、怯むな、第3陣突貫するぞ!」
「はーい、いらっしゃーい。そしてさようならー」
今度はまた正面から敵が出てくるが、マニの銃撃によって即ノックアウト。
【何人も逃しませんよ】
一応討ち漏らしがあった様だが、それもマニの後ろにいたリティルによって倒されていく。
勿論ロングソード一本で。
「クックック、上から来るとは思うまい!!」
最後の一人をリティルが切り倒した瞬間、上から数人が天井を突き破って突入。
誰もカバーしていない場所故、この奇襲が“成功していれば”ピンチにもなっただろうがーー
「残念ながら落下するというのは愚策でしたね」
月天複品による高重力、それが着地した瞬間に襲い掛かった様だ。
彼らは落ちてきた音と共にペシャンコに潰され、文字通りの肉塊または散り散りとなっていた。
「こ、これはどうだ!!」
もはやいつものクックック笑いをする余裕がない糖党連中は、最後の賭けと言わんばかりに今まで出てきた全方向プラス床から総攻撃をかけてきた。
「ーー今が我が失態を払拭する時!」
その状況下で真っ先に動いたのが、ミーシャさん。
刀身を水によって長くした状態で敵に斬りかかる。
「秘技、水渡!」
振りかぶった瞬間、水の剣は細い糸の様に伸び、敵だけにのみ当たる。
しかし、いくら細いとはいえ水は水。
表面に切り傷を作るのが関の山で、殆どはただ濡らすだけに終わった。
敵もその現状に拍子抜けしたのか、一部なんかは大笑いして馬鹿にしている始末。
だが、ミーシャさんは不敵に笑う。
愚かな敵を嘲笑う様に、まるで勝負が決し、余韻に浸るかの様に。
「代技、六花!!」
二度目に放つ斬撃。
しかし剣先は水ではなく、氷となっていた。
その氷は六つの花弁に変化したかと思うと、何ということか“先程の水を伝って”部屋中を凍らせていく。
俺らは問題ない……と言ってもちょっと寒ずぎるけど、水を被っている敵はーー
「……払拭できた様でよかったです」
誰一人残らず、氷の彫刻と化していた。
水をかぶっていたから、というのもあるのだろうが、それにしてもの高い精度だ。
なんせ俺ら味方を傷付けず、敵を殲滅した訳だからな。
冷静に動けばこんな芸当もできるのか、なんて感心しつつ。
それぞれで凍った敵を片っ端から破壊して制圧を開始。
大体3分弱後、全て終えた俺らは中央に集まっていた。
「先ずは、ありがとう。助けようとしてくれてとても嬉しいわ」
最初に口を開いたのは狂戦士モードが解け、ひと呼吸おいたエイレだった。
普段あまり見せない、にこやかな笑みを浮かべて、その場にいる全員に向けて。
うぉう、こりゃあ俺も素で照れてしまう。
エイレ、普段お礼なんてあまり言わないし、俺自身も聞き慣れていないから特に!
こそばゆくなり、ついつい頭をぽりぽりかいていると、ふと目線をずらしたら同じように照れちゃってる同志を見つけてしまった。
というか全員だった。
みんな、ひじょーに照れている。
顔赤くしたり、俯いたり、思わずニヤけたりなどなど。
その状態にエイレも若干頬を赤くし、恥ずかしがりながら話を続けた。
「……さて、こっからだけれど。どうやって脱出し、この飛行船を破壊する?」
「破壊、という一点だけなら問題なさそうだけど、逃げる方法に関しては難しいわね。生憎そーゆーアイテムを今は持ってないし」
エイレの問いに対し、マニが少し困った様子で答える。
確かに良く考えれば、現状脱出の方法がない。
飛行船だから脱出艇やら脱出装置がありそうだが、誰もその件を言わないあたり、見つけてはいないのだろう。
となると今から探さないといけない訳なんだが、正直時間をかけたくないというのが感想。
というのも時間をかければかけるだけリスポーンの可能性が考えられるし、何より後半暴れたせいでボロボロのボコボコになっているこの船が何もしなくても墜落するのも考えられる。
だからこそパパッと避難しつつ木っ端微塵に破壊したいところなのだが……
「はい!良い考えがあります!!」
どうしようかなーと悩む中、宇佐美様が元気よく手を挙げて言った。
自信満々だけれどなんでしょう、ものすごーく不安しか感じない。
どうやらほかの面々も同様の考えのようで、不安な様子を浮かべている。
「できればナシで……と言いたいところだけど、そうも言ってられないみたいだわ」
しかしエイレだけ違った、もとい気付いていた。
奥の方を指差しながら言った彼女、その先には潰れていた筈のフード男が満身創痍ながら立っていた。
ボロボロ具合から、既に虫の息って感じだけれど、それは俺たちにも言えること。
雑魚敵なら問題ないが、何度も復活するような相手に対してはMPやら体力やらが足りなくてキツすぎる。
とはいえ大技一発はそれぞれ撃てるだろうが、どれだけ復活するのかにもよる。
全員の攻撃を耐え、かつ飛行船すら沈まなかったら、逃げれず負け確定だ。
「宇佐美。信じるわよ、あなたの提案」
「任せてください!……では全力を持って攻撃しましょう!!」
俺らは頼りない宇佐美様を頼りに、言われた通り全力の攻撃準備をする。
ええい、不安すぎるがこうなりゃあヤケクソだ!!
「風大狼の双牙!」
「秘技、水剛断!」
「光牙滅斬!」
「六道輪廻弐獄、人道!!」
「喚びしは二人の風。されとて風が分かつ刃が如く。荒れ狂い一人を地へ堕とし、一人を数多の苦を纏わす。今ここに彼の苦艱借りて宿り放たん」
「弐の罪、『ウイン』」