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はるかかなたのエクソダス3 ~インディペンデンス・デイ  作者: 風庭悠
最終章:僕らは「自由」の名の下に
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最終話(第148話):僕らが自由であるために。

その後の皆についても語っておこう。


尊とアーニャは、王都キャメロットと名を改めたヘリオポリスを離れ、大陸の東にある聖都アヴァロンに移り住んだ。そこで病院と、医療の学校を開いたのだ。アマレクの政策でスフィア人は医者にはなれなかったので、医師が圧倒的に不足していた。神殿でも医師を養成していたが、それでも絶対数が足りなかったのである。


尊とアーニャは月に一度は近くにあるミーディアンの村に赴き、診療を行った。

二人の子孫は医師の家系として知られることになる。彼は「アヴァロン医療騎士団」を創設するが、後の時代には戦場や災害地で広く活躍することになる。後世この騎士団は「聖槍ロンゴミアント騎士団」と名を変えて今日まで続いている。


カレブは王都にとどまり、「近衛騎士団」を創設した。団長として、彼は後進を教導し、王都の治安を守った。彼が創設した騎士団は後に、警察や法律家を育成するいくつかの騎士団に分かれているが、寡黙で公正だった彼の精神を受け継いでこの国の秩序の根幹を支えている。


 ジョシュアは軍を去ってギルドをまとめあげ、初代のグランドマスターに就任した。彼は義妹のアマレク人エミリアを妻としてめとった。彼はフェニキアとの専売契約が切れるまで、働く人々の権利を守るために戦場ではなく、テーブルの上で戦った。

 彼の息子は色素欠乏症アルビノであった。テラノイドとアマレク人の間の子はそうなることが知られている。その、ランカスター・セルバンテス・ラザフォードは後に通商路の安全や商取引の公正を護る「伝令使杖カドゥスケス騎士団」を創設、今日に至っている。


エリカは主都グラストンベリーにヴァルキュリア女子修道騎士団を創設した。女性だけで構成される唯一の騎士団として今日まで知られている。その二代目の団長はニック・サンダースである。


ラザロも王都に留まり、情報局の局長を勤めた。後に彼は「黙示録アポカリプス騎士団」を設立し、諜報・暗殺などの特殊技能に特化した騎士団として今日に至る。


 バラクは聖都アヴァロンの大聖堂に大主教として赴き、「聖堂騎士団」を創設する。聖堂騎士団は巡礼者や旅行者の安全のため陸路の守護者として知られている。


 マリアンはフリーのジャーナリストとして独り立ちし、方々で活躍した。後に彼女は「テラノイド分離闘争」の歴史をまとめ、その記録は歴史的資料として高く評価されている。彼女は結婚せず、シングルマザーとして息子を育てたが、彼女は父親の名を誰にも明かそうとはしなかった。


 ただ、尊はなんとなく察し、その子の名付け親になってほしいとマリアンに頼まれたとき、「アトゥム」と名付け、マリアンを驚かせた。

 それはクレメンス家の最初の当主ラムセス1世の父親の名であり、クレメンス家の「留め名」的な名前であった。


シモンとエンデヴェール家の人々、ヌーゼリアル人たちがスフィアを発って早くも10年が経とうとしていた。

大公ロード、宇宙港"ヨコハマ"に多数の船影が近づいています。」

尊のラティーナに緊急通信が入る。

「なんだ、フェニキアじゃないのか?」

「それが、通信回路があわないのか、呼びかけにも応答しないのです。」


尊はアヴァロン医療騎士団の団長室へ向かった。

「通信は?」

もう一度通信士に確認をとる。

「こちらから呼び掛けてはいますが、まだ応答がありません。」

「港湾警備隊は?」

「すでに展開済みです。」


一同は固唾を飲んでモニターを注視する。そこに現れた船影は懐かしいものであった。

「不審船団から通信入ります。これは、これは……。信じられない。ネーヅクジョイヤです。」

回線を開くとモニター現れたのはシモンだった。長命の種族らしく、10年前と変わらぬ様子であったが、その堂々とした容貌には大人としての風格と自信に満ち溢れていた。


「義兄さん? よかった、ミーディアンの村が近いから、多分この街にいるかも、って思って真っ先に、ここに寄ったんだ。」

シモンの笑顔は相変わらずであった。

「シモン、見ない間にずいぶんと立派になりましたね。」

尊が感慨深そうに言う。


「まあ、向こうで色々ね。とりあえず、故郷に帰った瞬間、親父が突然働き出したんだ。なんて言ったと思う?『余の休暇バカンスは終わった』だってさ。」

シモンにつられて尊も笑った。


「それで、留守の間になくなっていた王位を回復するのに随分と手間取ったんだけど、何とかメドがたったんだ。ここの連中は、その騒動でむこうに居場所がなくなったやつらさ。俺も含めて、みんなで義兄さんの手伝いがしたいんだ。いいかな?」


「ええ、もちろん。」


シモンは王太子として、スフィアに居留し、王として即位するまでの間、尊の手伝いを望んでいた。むこうで権力争いで敗れた人々を伴い、ホレブ山系の西側にある森林地帯に植民を希望したのだ。ヌーゼリアル人3,000万人である。


以後、王太子はスフィアで育てられ、王として即位するために本星に帰る、というしきたりはここから始まった。王太子は"スフィア太公"と本星では呼ばれるようになった。ヌーゼリアル人はスフィアの最初の同盟国となり、その容貌からスフィア人たちから"エルフ族"と呼ばれるようになるのである。


 後にシモンが王として即位するとき、尊とアーニャも共にヌーゼリアルに赴く。尊(の身体)はそこで死に、アーニャとともに葬られたという。


 スフィア人の中で彼の墓の在りかを知るものはいない。


エピローグ。


[星暦1016年4月1日]


 数年ぶりに、いや10数年ぶりにかつての仲間が王都キャメロットに集結した。


これから、スフィア王国を支える12の騎士団が一同に会したのである。

 彼らは「正統十二騎士団アポストル」と称され、調整会議である「円卓ラウンド・テーブル」を囲み、互いにいさかい合わず、言葉で話し合い、理解しあい、問題を解決することを誓った。


 円卓には13の席が用意されている。


 人類に再び災禍が巻き起こるとき、王はその十三番目の席に座するもの、すなわち士師を遣わすことになるからだ。

 そのレガリアとなる宝剣の台座に尊は「司令者の杖」をつきさす。すると、杖は消え、代わって弓と剣が現れた。


 それを手にする者こそ、次の士師である。台座には二つの武具の名が刻まれた。


魔弓「空前絶後フェイルノート」。そして霊剣「慈愛コルタナ」である。コルタナは別の名で呼ばれることもある。「天衣無縫ドレッドノート」である。




 





 みなさん長らくのご愛読ありがとうございました。


 突然思い立って、小説を書き、投稿などしてしまいました。

学生時代は短編などを中心に文芸部で活動などしておりましたが、いきなり長編に取り組んでしまい、どうなるかと思いましたが、何とか完結(ほぼ胴体着陸)させました。


 もともとは最近見ているアニメがつまらない、というので絵が描けない自分は、文章で書いてやろう、と思い立ったのですが、とりわけバトルの描写がうまく表現できず、今後の反省材料です。


 実は、本当に描きたかった話は、この物語でもセラフとして登場する鞍馬光平の話だったのですが、書き始めたものの描き切れずに、とりあえず原案のある話を書きたい、ということでモーゼ伝説をモチーフにエピソード2的なこの話を書きました。


 原作が堅かったこともあり思ったより重い話になってしまい、ちっとも「ライト」ノベルになりませんでしたね(笑)。


 次回作、需要はないけど私の趣味だ、ということでやはりセラフの一人である

棗凛太朗なつめ・りんたろうの話を予定しております。最近やっとプロットがかたまりはじめ、習作を書いてはやめ、書いてはやめ、を繰り返しております。


 舞台はこの物語から500年後のスフィアの物語です。今度は、バトルとコメディに挑戦したいです。


光平君の登場はこの話からさらに500年後くらいかなあ。

今度こそ「ラノベ」になるように頑張ります。


 でもいつか、この話をもう一度ゆったりした感じで、一本にまとめて書き直したい気持ちもあります。まあ、いつになることやら。


 次回も投稿できましたら、ぜひのご愛顧よろしくお願いします。


感想もぜひお寄せください。また、評価のポチポチもどうかよろしくお願いいたします。


 風庭悠でした。

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