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多種族都市の混成種  作者: シズク
大体の日常
2/10

そして、竜の女の子

 シルフの転入から数日が経った。クラス内での友人も増え、授業にも慣れてきた頃だった。


 朝のチャイムがなり皆が席に座りだす。チャイムとほぼ同時にグローリアが扉を開けて入ってきた。


「さぁて、ホームルームを始めるぞ。今日は大事な話をするので、ちゃんと聞くように」


 グローリアは珍しく楽しそうにそう言った。シルフは言われた通りに耳を傾けていると。後ろから背中を突つかれた。


「なぁなぁ、シルフ」

「なに、マルク?静かにしてないとチョークが飛んでくるよ」

「いや、それはマジで飛んできそうだからやめてくれ」


 後ろから話しかけてきたのはシルフの友人のマルクだった。マルクはシルフが転入してきた時から良くしてくれたクラスメイトの一人で金色の髪を短髪にしたエルフの少年で、歳は17とシルフよりも一つ上だ。


「今日、なんかあんのかな」

「それを今から話すんでしょ」

「だってよ、先生があんなに楽しそうなのなんて俺、初めて見たぜ。シルフが転入してきた時よりも楽しそうだし」

「…それはそれでムカつくね」


 実際に、グローリアは今にも頭から音符でも出しそうなほどに浮かれていた。祭りでもあるのだろうか?と、シルフが思っていると


 ビュン!


 と、聞こえるような速度でシルフの顔の横を何かが通過していった。シルフが振り返ってみると、さっきまで話していたマルクが額から煙を出して椅子にもたれ掛かっていた。机の上にはチョークの粉のようなものが散乱していて、Aクラスの人なら一目瞭然だった。


「それでは、馬鹿は放っておいて皆はちゃんと聞くように」


 前に向き直るとグローリアがチョークを片手に笑顔でそう言っていた。クラスの生徒たちは一斉に居住まいを正して、話を聞いた。


「…よし。今日、体育館の調整が終了したので戦闘術の科目が解禁となった」

「本当でありますか!?」


 立ち上がって声をあげたのはライナスという竜人種の男だ。見た目が二足歩行のトカゲなので歳は分からなかったが、シルフが本人に聞いたところ18だそうだ。赤い鱗に同色の立派な角が二本側頭部から生え、背中からは小さな翼ものぞいていた。


 ほかの大半の生徒もライナスほどでないにしても近くの生徒と話したりしていた。しかし、シルフは頭にハテナを浮かべて良く分からないと言った感じだ。


「授業は昼からとなるので昼食はしっかりと取っておけよ」


 その後はいつもどおりの連絡事項を言ってホームルームは終わった。


「やっと、終わったらしいな体育館の調整」


 グローリアが教室を出ていくのと同時にマルクから声がかかった。


「調整って?」

「体育館の調整ってなんなの?」

「ん?シルフ知らなかったの?えっと…魔法とかは分かるよな」

「…馬鹿にしてる?」

「冗談だよ、冗談。うーん、とだな…」

「ケケケ、マル坊に説明は無理だろ。オレが説明してやるよ」


 そう馬鹿にしたような高い声がシルフの耳に入った。声がしたのはシルフのとなりの席だ。


「んだよカムイ邪魔すんなよ」

「おはようフィー、カムイ」

「おう!おはようさんシル坊」

「…おはよう」


 となりから声をかけてきたのはカムイと呼ばれた小さな白狐だ。大きさは30センチあるかないかくらいで隣の机の上に乗っていた。


 そしてもう一人、シルフが名前を呼んだフィーという少女。色素の薄い髪をツインテールにして額から左右長さの不揃いの角が生えており、眠たげに伏せられたまぶたからは緑色の瞳が覗いている。ライナスて同じ竜人種だが、フィーの外見は人間よりのようだ。

 身長は150cmに届くか届かないかといったところで、黒いブレザーに赤のリボンタイ、白いブラウスを着ていて、黒に赤のラインの入ったミニスカートに黒のニーソックスを履いている。


 ルミナス学園は服装の指定はないが学年を明らかにするために、腕章を付けることが義務付けられている。一学年から青、赤、白、黒となっており、もちろんシルフやフィー、カムイまでも付けていた。


 シルフにカムイが挨拶を返すと、フィーの机からしシルフの机に飛び乗ってきた。大きさ的にちょうど座っているシルフの目線の少し下にカムイがいるので撫でたい衝動に駆られながらもシルフは先程のことを聞いた。


「それで?調整ってなんなのカムイ?」

「え?シルフ、俺に聞かないの?ねぇねぇ」

「調整ってのはな、体育館に張ってある魔法の調整…というか、点検だな」

「魔法?どんな?」

「んー、とだな…」


 カムイが言葉に詰まっていると、じっと見ていたフィーが代わりに答えてくれた。


「結界魔法…」

「あぁ、それだそれ」

「なんだよ、カムイだって教えられてねぇじゃねぇか」

「あぁん?万年お花畑のマル坊に言われたくないな」

「誰がお花畑だ!」

「んだ!?やんのか!」


 なんとも、沸点の低い二人だ。シルフは二人を無視してフィーに話を聞くことにした。


「それで、なんで結界魔法を体育館に張ってるんだい?」

「…怪我をしても大丈夫なように」

「回復するように設定してるってこと?」

「…ちょっと違う」


 フィーは考えるようにあさっての方向を見ながら言った。


「…どんな怪我をしても、死ぬレベルに達したら自動で回復する…そんな感じ」

「…え?」

「えっと…だから…」

「お嬢無駄だよ。あれは口で説明しても分からんからな」


 フィーが返答に困っていると、先程からマルクとじゃれあっていたカムイが顔だけ向けて話をしてきた。


「シル坊、言っておくがさっきお嬢が言ったことは本当だ。どうせあの先生から説明があるだろうけど、頭の隅っこには入れておきな」

「うーん…じゃあ、死ねない結界ってことでオケ?」

「死ねない、ね。ま、そう言うこった」

「あだ!」


 カムイはそう言うと大きく跳躍しマルクの頭を踏み台にフィーの席に戻った。よほど強く踏まれたのかマルクは床に倒れてしまった。


「なんにしても、そんな魔法を使える学園長は化物ってこった」

「学園長が張っていたのかい!?」

「お、おう。珍しいなシル坊がそこまで反応するなんて。なぁ、お嬢」

「うん」

「あぁ、ごめんごめん。てか、そんなに珍しいことでもないでしょ」


 カムイは珍しそうに目を見開き、フィーは小さく頷いていた。シルフが驚いていたのは至って簡単なことだ、魔法は原則として一人に一つ、例外はあるが人族ならばそれは絶対だ。シルフは学園長の見た目から人族だと思っているため驚いたのだ。


「いやいや、シルフの反応の鈍さは結構有名だぞ」


 床から起き上がりながらマルクがそう言った。


「後ろから驚かしてもなんかワンテンポ遅れて反応するしさ」

「んー、そんなことないと思うけどなぁ」

「どこか抜けてんだよな、シルフって」

「そうだな」

「うんうん」

「二人まで…」


 同意するようにカムイとフィーも頷き返す。


「その緩さがシルフのいい所なんだけどな」

「そうさな、とっつきやすいと言う意味ではそうなるな」

「シルフはいい人」

「…照れるね」


 シルフは頬を掻きながら小さく微笑んだ。学校に通ったことのないシルフにとってこういった友達との付き合いというのも真新しく、そしてたのしいものだった。


「さてと、ロッカーから教科書持ってこねぇと」

「あ、じゃあ僕の分も持ってきてよ」

「お嬢の分も頼むぞマル坊」

「よろしく」

「ふぁ!?なんで俺が!?」

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