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勇者の憂鬱

桃犬郎

作者: Dec18

おじいさんにもらった「立派な旗」と、おばあさんにもらった「きびだんご」を手に、桃太郎は鬼ヶ島へと向かいます。





桃太郎

「やべぇよ…食料、この団子しか無ぇよ…。1、2、3……7。え、7個しか無いじゃん!嘘だろ、ばあさん…。鬼ヶ島まで1日かかるぞ。3食2個ずつ食べたとして…1個は3食目のデザートだな。もうこれ鬼退治っていうかサバイバルだな。」






ガサガサ…ガサ…。

草むらから物音がする。


桃太郎

「な、何だ…?」


「君、桃太郎さんだよね。」


草むらから、犬が現れました。


桃太郎

「え?」


「フフフ…実は、あの婆さんの家から出るところを見ていたのさ。」

「あそこは“僕ら”の土地だ。あの爺さんと婆さんは知らないようだけどね。」


桃太郎

「僕ら…?」


「あぁ。僕と同じ“選ばれし犬”が、数十匹、あそこを住処にしていた。あの2人が来たことで、彼らは怒り狂っている。」

「僕の指示で、彼らはすぐにも2人を八つ裂きにすることができる。」


桃太郎

「な、何だと…!」


「フフフ。でも…条件次第では見逃してあげよう。」


桃太郎

「条件…?」


「君の…腰につけた、きびだんご、だよ。」


桃太郎

「な、何っ!?」

「(こいつ…7個しか無いきびだんごを、交換条件にしようというのか…!)」


「いいじゃないか。だんご一つで、2人の命を助けられるんだ。」


桃太郎

「だ、だが…。」

「(だがこれは…最後の日のデザート…その1個を失うということ。)」


「さぁ…どうする、桃太郎!?」


桃太郎

「お、俺は…俺はぁぁぁっ!!」





思えば、壮絶な戦いだった。犬に強いられた苦渋の選択…それを超えるために、その後出会った猿とキジを言葉巧みに引き込み、鬼ヶ島に半日でたどり着き、鬼を1分足らずで仕留め、2人の家へ急いだ。既に犬の軍勢は準備を終え、2人の家を襲う寸前だった。しかし、最後まで希望を捨てず、勝利という一筋の光を信じて戦いぬいた。そうして、俺達は勝利した。犬の軍勢を追い払い、平穏を手に入れたのだ。


そして、犬は最後にいった。

お前こそ、

桃から生まれた犬を討つおとこ

【桃犬郎】だと。


その言葉を噛み締めながら、腰につけた巾着袋を開けた。その中には、「7つのきびだんご」が。そして、俺は、こう呟くのだ。



1個くらい、あげれば良かった…。


『完』

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