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ドラゴン・イェーガー ~狩竜人賛歌~  作者: 井藤 きく
1章 少年と少女は出会う
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1-8

 

 ネスアルドを狩った翌日の昼過ぎ、エルとソフィアは報酬を受け取りに狩竜人協会に揃って出向いた。


「はぁいお待たせ。まず依頼報酬が8,000エニィね。ネスアルド2頭が1,800エニィに実働日数1日の600エニィ。合計10,400エニィね」


 シロノは丁寧に報酬の内訳を説明しながら板銀貨10枚と銀貨4枚をテーブルの上に置いた。金貨1枚で10,000エニィ。それを使わないのは簡単に報酬を分けられるように、という協会職員なら誰もがする配慮だ。


「ネスアルドの買取はそれぞれ1,500エニィと300エニィ。片方が安いのはお腹に大きな卵抱えちゃってたからね。ネスアルドは卵持ってると皮が売れないから一気に安くなっちゃうのよ」


 フェズの村を出発したのは早朝だったのだが、道草というか余分なことを色々したせいで随分遅いフェネラルへの帰還となった。道中、互いの狩竜の腕やどんな竜種を狩った経験があるのかなど、それは狩る前に話しとけよと言われそうなことを今更ながら確認しあい、ゆっくりと大街道をフェネラルに向かって進んだ2人。


 そしてお互いの動きを本当に今更ながら確認するために、拾った木の枝を長剣とハルバードに見立ててチャンバラごっこを始めたりもした。もちろん仕掛けたのはソフィアでエルは仕方なく始めたのだが、やってるうちにエルも熱が入ってしまった。2人のごっこ遊びを見た大街道を道往く多数の人々に、狩竜人同士の大喧嘩だいや痴話喧嘩だと騒がれる。それは誤解だと説明し、そんなこと大街道のど真ん中でするなと良識ある人に怒られたりしながら帰ってきたのだ。狩竜人の中でも突出した視神経と反射神経を持つ2人のチャンバラごっこは、普通の人が見たら洒落にならない激しさで怒られるのも当然だった。


「ありがとうございますっ」


 笑顔で報酬を受け取るソフィアの顔を見て、2人を組ませて正解だったと内心喜ぶシロノ。1人で受注できる雑用のような依頼では諸々合わせても1,000エニィ前後の報酬ばかり。2人で割っても5,000を超える金額を手にしたソフィアは、久々にまともな金額の依頼をこなせたと心が弾んだ。


「ネスアルドはどうだったかしら。情報と違って2頭だったけれど大丈夫だったかしら?」


 答えは分かっていたが一応聞いてみる。2人とも依頼外の狩竜ではあるが、3段が1人で狩っていい竜種ではないものも含めて多数の狩竜経験があることを彼女は知っていた。依頼外での狩竜は昇段には関係してこないので2人とも3段でしかない。ただ売れる価値のある竜種は協会が一旦全て買取ることもあって、誰が何を狩ったかは依頼外でも記録が残る。2人の協会認可証に記載された狩竜履歴は1年目にしてはかなりの数と種類に達している。普段は新人2人組みなどには依頼しない危険性を持つ蛇竜ネスアルドの狩竜。それをエルとソフィアに任せたのは、しっかりとした理由の裏付けがあってのことだった。


「はいっ、2頭でも10頭でもどんとこいって感じで全然問題なかったですよ。それでですね、聞いてくださいよシロノさん。こいつ無茶苦茶だったんですよ。最初全然頼りなさそうだと思ってたらですねえ」


「ソ、ソフィアさんちょっと」


 嬉しそうに話し始めるソフィアをエルが止める。


「ん、何よ?」


「やっ、他の人が待ってるから、その……」


 見れば昼の協会にしては珍しく、依頼を終えたらしい数組の狩竜人が依頼窓口が空くのを待っている。朝夕は協会職員が何人も待機して次々と依頼の受注や処理をするが、普段この時間に混雑することはないので職員は他の仕事をしていて窓口に待機していない。シロノが空くのを順番待ちしている狩竜人がいるのに話し込んではいけないと、エルは勇気を持ってソフィアを止めたのだ。それに気づいたソフィアは残念そうな顔をして渋々立ち上がる。


「あー混んでるのかぁ。じゃあまた、明日も来ますね」


「ええ、お疲れ様。また今度お話聞かせてね」


 そういってシロノは2人を見送る。内心はソフィアの話を聞きたくてうずうずしてるのだが表には出さない。エルとソフィアの顔を見つけて是非話を聞かなければと、わざわざ後輩職員を押しのけて窓口に座っていたシロノ。なんで今日に限ってこの時間に混むのだ、急ぎでないなら全員後でこい、と美しい笑顔とは裏腹に心の中で毒づいていた。



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