一時の休息。
「ユウトくん。」
ベンチにもたれかかっていると珍しく時人が俺に声をかけてきた。
「んだよ。」
そっけなく返す。
正直時人はあまり先輩とは思えない。
「冷たいなぁ、ちょっと暇でさ。」
当然のごとく隣に座ってきた。
そこはカナに座ってもらおうと思ったのだが…。
まぁトイレから帰ってきたらどけよう。
「まぁ、なんというか嫌な時間だな。」
「なんで?」
「さっきまで死にかけてたのに、いきなりこう、何もないと不安になる。」
嫌な事の前兆、というか。
「あー、嫌な事の前兆みたいな感じ?」
「あ、おお。」
同じ事を考えてた…。
「あと数時間。」
「あと数時間何もなかったら、もし何もなかったら僕たちさよならなんだよね。」
「あぁ、そうだな。」
なんとなく呆気ない。
カナはともかく他のメンバーは少しの時間でも共に行動し協力した仲間だ。
「不思議だよね、信じられもしない相手を信じて命を預けてさ。でもそれが人間なのかな。」
「あぁ、それが人間だよ。」
感情に任せて馬鹿に行動する生き物。
このまま、終わる…。
「でも、このまま終わったらやるせないな。一人、死んだ。…一人、殺した。」
そう、俺は殺した。
この先一生忘れないだろう。
「なんで命を守ろうとしたらその分犠牲が出るのかな…。」
「しょうがないことだろ。」
時人はのぼった月を見て目を細めた。
かと思うとこっちを見た。
「ユウトくんカナちゃんに告らないの?」
「ブッ!!!!!!」
「ケホッケホッ…うえっ!!!」
何も食べてないのに気管に何かが入った気がしてむせる。
「は、ハァッ…!?!?」
時人はニヤニヤとした目でこちらを見てる。
「いや…付き合わないのかなーって。」
言われるがまま。
しかし俺は中1の時真面目に告って真面目に「あはは、冗談やめてよ気持ち悪いなー」と断られてる。
「良いんだよ、もうふられてんの。」
「いや、今回ので評価あがったかもしれないじゃん。」
何か言い返してやらないと気がすまない気がした。
「お前こそなんだよあの女は。」
ギクッとした顔をしたと思ったら目をそらした。
「いや、あの子は本当偶然であって…」
「偶然にしてはとても大切そうにしてたよなぁ。」
あまりに戸惑いはじめた時人の顔を見てなんだか勝った気分になる。
「だ、だって同じ能力者だし別に…!!!!って今はユウトくんの話してるんだってば!」
話を上手く戻される。
「っ…!!わかったよ、告白すれば良いんだろ!?いいよわかったよこのゲームが終わったら…って告白しねぇわ!!!」
「ふっ…」
時人が小さく笑う。
あまりに気が動転して自分でしかけて自分で突っ込む馬鹿な事をしてしまった。
「あー、お前と話してると腹立つ!!もうあきらめてんだよ!関わんじゃねぇこのもやし!!」
「も、もやし!?もやしはひどく無い!?!?」
「…何も、起こらないといいな。」
「うん、そうだね。」
俺は時人といると他にも言われそうな気がしてその場をはなれた。
告白…。
「全部、終わったらな。」
今日の月はいつもより輝いて見えた気がした。