第四話
久々の投稿です。
なかなか書けません。小説って難しいですね。
――――あいしてる、あいしてるよ。ずっときみだけをあいしてる……――――
「っ……!」
マティアスは目が覚めると同時に上半身を勢いよく起き上がらせた。
また同じ夢をみた。しかし、いままでは不鮮明だった夢が、明らかに鮮明に思い出せる。
昨日、なにか変ったことがあっただろうか。マティアスは昨日のことを思い返した。
(昨日は…。そうだ、王子に会って、それで…)
……テオドールに会った。
ただ会っただけなのにマティアスの心に引っかかる男。
(彼が原因なのだろうか…)
マティアスはしばらく考えていたが、一向に解決に至らないので、諦めて朝食に向かうことにした。
今日も変わり映えのしない一日が始まる。
そう思ってマティアスは寮を出た。
しかし、もう運命の歯車は回り始めていた……。
いつも通り職場に向かい、いつも通りに雑用をしていると、なにやら焦ったような大臣が部屋に入ってきた。
「エディンベルっ! マティアス・エディンベルはいるかっ!?」
部屋にいた者の目線がいっせいにマティアスに集まった。
マティアスは内心出て行きたくなかったが、そんなことはおくびにも出さずに返事をした。
「はい。マティアス・エディンベルは私ですが」
大臣はマティアスを視界に入れると、近くまで足早にやってきて、じろじろと無遠慮に見据えた。
「おまえが…? まあ、いい。宰相様がおよびだ。すぐに宰相様の部屋へ行きなさい」
マティアスは耳を疑った。
(宰相様!? おれ、なにかしたかな…)
視界の隅では、同僚があんぐりと口を開けていた。
固まってしまったマティアスだが、大臣に怒鳴られてあわてて部屋を出た。
(宰相様って…、あの…)
マティアスの頭の中に宰相の姿が浮かび上がった。国王の幼馴染で侯爵家の出のエリート、マティアスの立場ではお目にかかることのできない、雲の上の人だ。
(なんでそんな人が…おれになんの用だ? もしかして…)
マティアスは顔をさっと青く染めると、動かしていた足を止めた。
昨日の出来事が頭に過る。
(王子に生意気な口をきいたのがばれた?!)
マティアスは倒れそうになったが、なんとか踏みとどまり、足を再び前へ動かした。気分は処刑台に向かう死刑囚である。
「……マティアス・エディンベル参上しました。入室の許可をお願いします」
「どうぞ」
「失礼します」
入室の許可がおり、マティアスはできるだけ音を立てないよう慎重に扉を開ける。部屋の中には宰相のほかに、なぜか中庭であった王子の教育係の男がいた。
予想外の人物にマティアスはドアノブを掴んだまま固まってしまう。
「……マティアス・エディンベル。なにをしているのですか。さっさと中に入って扉を閉めなさい」
宰相が呆れたように入室を促した。マティアスは慌てて部屋の中に入り扉を閉めて姿勢を正した。
「…失礼しました。あの…それで、お呼びいただいた用件はなんでしょうか」
宰相は男に一瞬目をやり、マティアスに向きなおった。
「貴方をわざわざ呼び出したのは、貴方にやってもらいたいことがあるからです」
何を言われるのかと、マティアスの身体に緊張が走る。宰相はそんなマティアスの様子など気にすることなく微笑みながら続けた。
「貴方に王子の教育係をやってもらいたいのです」
「…………は?」