晩餐会にて私を馬鹿にしてきた彼へ。ざまぁ、贈りますね。~最高の日に、最大の絶望を、どうぞ~
ある晩餐会にて、思わぬところに置かれていた果物の皮で滑って転んでしまった私を、婚約者である彼アバンクランスは馬鹿にしてきた。
「うわーっはっはっはは! 果物の皮で滑るとか! ダッサ! 女のくせに果物の皮で滑るとかないわー、あー、あー、ダッサダッサダッサ! けど笑える~、うわっははっははは!」
婚約者の転倒を馬鹿にして嗤い続けるアバンクランスを見て、周囲の人たちは引いているような顔つきをしていた。
さすがに一緒になって嗤う人はいない。
そこまで悪質な人物はいなかったようだ。
「はーっはっははっはは! ぎゃはっははっはっは! うわー、もー、腹いてぇー、わらけるぅ~! 女のくせに果物の皮で滑んのはさすがにイテェわー!」
そんな風に私を散々馬鹿にした後、アバンクランスは、急に真顔になって。
「婚約、破棄するわ。お前ダサいし。じゃな、バイバイ~」
関係を終わらせる言葉を告げてきたのだった。
……後に聞いた話によれば、あの果物の皮はアバンクランスがこっそり置いていたものだったそうだ。
どうやら彼は最初から婚約破棄するつもりだったよう。
しかし何もない状態ではなかなか言えず。
そこで、若干無理矢理だとしても婚約破棄の理由となる何かを作るため、私を転倒させるということを思いついたようだ。
私を恥ずかしい女として周囲に見せ、それを理由として婚約破棄する。それなら上手くいくと彼は考えたようだった。
それもかなり滅茶苦茶な話だけれど……。
だが、彼は天才的な作戦を思いついたと思っていたようで、それでその作戦を実行に移した――ということだったようだ。
◆
――三年後。
アバンクランスの結婚式にて、私は、あの時の復讐をすることにした。
会場内に入ってきてすぐアバンクランスが転ぶように地面に目立たない色の液体を撒いておく。
相手の女性には被害が出ないような位置を考えて。
とにかくターゲットは彼なので、彼が上手く転ぶように、研究に研究を重ねて当日を迎えた。
……そしてアバンクランスは見事に転んだ。
「何あれ……うわ、恥ずかし……」
「こんな時に足もと見ないで転ぶとかないわー」
「慌てすぎてズボンずれてるし」
「うわぁ……ダッサ……」
「ははは、うけるわぁ。このタイミングで転ぶとか。面白すぎるわぁ」
「ぷぷぷっ……きつすぎるって」
アバンクランスは皆に引かれたうえ笑い者になってしまい。
「ごめんなさい、こんなところで転ぶ人とは……結婚は無理です」
その姿を見た花嫁からは関係を終わらせると告げられてしまった。
「貴方はいつも私をダサいとか無能だとか言っていたでしょう。なのに貴方はこんな重要な場面で失敗をするのね。まさかこんなにかっこ悪い人だとは思わなかった。……元々好きではなかったけれど、大嫌いになったわ」
花嫁は、慌てて起き上がろうとしてさらに何度も転び無様な格好になっているアバンクランスを冷たい目つきで見下ろしながら、はっきりと言葉を告げる。
「さようなら、アバンクランス」
アバンクランスに恥をかかせることに成功した。
◆
あれから何年が経っただろう。
思い出せはしないけれど。
ただ、今はもうそんなことはどうでもいいと思えるほど、幸せな世界の中で暮らすことができている。
アバンクランスには捨てられてしまったけれど、後に良い縁談に巡り会うことができ、私は良家の子息と結婚した。
夫は果物がとても好きな人で、私にもよくおすすめしてくれる。
なので最近は果物を食べることが増えた。
見た目、色、味、香り……知れば知るほど好きになっていくのが、果物という世界だった。
◆終わり◆




