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最も価値のないコレクター

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/03/14

「この生き物を見てくれ」


 コレクター仲間に見せたいものがあると言われたからやってきたのに……。

 僕は既にここへ来たことを後悔していた。


「この生き物はね。もうこの世に一匹しかいないんだ」


 そう言って見せられたものは一匹の毛虫だ。

 彼が見せてくる大切なコレクションは全部もうこの世に一匹しかいないものばかりだ。


「懐かしいだろう? この毛虫は僕らが幼い頃にはたくさん居たのに」

「よく覚えているよ。あまりにも居たから成長した姿の蝶だったか蛾も僕らは取りはしなかった」

「その通りだ。だけどもうこの一匹だけだ」


 最後の一匹。

 本来ならとっても羨ましいコレクションだ。

 しかし、僕には彼がまったく羨ましくない。


「最後の一匹にするのには骨が折れたよ」


 今日見た幾つものコレクションにつけられた言葉がまた付け加えられた。

 そう。

 要するに彼は自分のコレクションの価値を高めるために生き物を最後の一匹になるまで殺しているのだ。


「素晴らしいだろう? 僕のコレクションは。全てが最後の一匹なんだ」


 ここにきて僕の限界がきた。

 僕は彼に向かって心底軽蔑した声と視線を向ける。


「その最後の一匹。くれぐれも大切にしたまえよ。この糞野郎」


 そう言って僕は彼と絶縁した。


 そうだとも。

 如何に希少な生き物を飼っていようと滅びてしまえば何の意味もない。

 いや、それどころか、その生き物を絶滅させた最悪の人間にしかならないだろう。


「やっぱり、生き物は雄と雌の両方を飼わないとな」


 そう言って僕は自分のコレクションである『最後の二匹』の世話をするのだった。

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