最終話
……俺は目を覚ました。
そうだ、昼寝をしていたんだった。もう夕方か。カーテンの隙間からは夜の入口がのぞいている。ひと声泣いてやると、二十代後半くらいの女が和室に入ってきた。
「あらら、起きちゃったのね。おはよう」
俺は女に抱きかかえられる。その後、パッヘルベルのカノンに合わせて少し躍った後、俺は床へと戻された。ハイハイをして、少し移動してみる。くそ、動きづらい……。
結局、神様がぶーちゃんの転生の引き換えに要求してきたのは、俺自身も転生するという条件だった。俺は一も二もなく飲んだね。そしたら、こうなっちゃったわけ。
でも、だんだん記憶が薄れていっているんだよな。
きっとそのうち、普通の子供になっちゃうんだろう。
だけどぶーちゃんのことは忘れないでいたいな。
ぶーちゃんもこの世界のどこかにいるのかね。俺と友達になってくれるかな。ていうか、もしかしたら彼女になってくれちゃったりして? そしたらみんなに自慢できるぜ、ひひ。
ぶーちゃん、いたらいいな。
待っていてくれよ……。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「あら!」
妻が小さく叫ぶので見てみると、息子がなにかを手にもっていた。
あれは、本屋でおまけでもらったものじゃないか。
そして妻は満面の笑みをたずさえて、その『おまけ』をさする息子をこう誉めたんだ。
えらいねぇ、しゅんちゃん。
もう、日本地図に興味があるのね。
了
Ending theme: “光るなら” by goose house
Listen here:https://www.youtube.com/watch?v=YehoLyzE_EQ