第59話 終歩
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。
ゲーム開始から6日が経過した。残る参加者は11人となり、いよいよ第七次幸奪戦争の終わりが近づいてきた。何をすれば勝利となるのか、何をしてしまったら敗北となるのか、極楽にいく方法を知っているのはほとんどいない。
原田九老「なぁ、なぜお前は私を助けた?」
佐藤要と原田九老は現在、洞窟の中にいた。
桂唯賀との戦闘で右腕を切断させられた原田九老は佐藤要にその応急措置を施され、義手となるものも探して与えられた。
原田九老「私は桂に毒を仕込まされた。即座に腕を切ったことである程度の毒の巡りは抑えられたが、それも全部じゃない。今も私の体内で毒か巡っている。いずれ消えるのだ。
私を倒して数値を増やした方が勝てる確率は上がる。」
佐藤要「クリエーションていう種性核には武器の生成以外にもいろんなことができるんだよな。」
原田九老の問いには答えず、別の議題を立てて会話を続ける。
原田九老「…あぁ。結界のようなものを創れる他にも、自分自身や相手を瞬間移動させることもできる。」
佐藤要「まるで超能力者だな。」
原田九老「現実離れしたことをしようとすると、その分数値の消費は激しくなるからな。」
佐藤要「あんたはその桂にどれだけの数値の毒を盛られたんだ?」
原田九老「さぁな、あいつと私は一時は同じグループにいたが、あいつが他の参加者を倒すのは見たことがない。」
佐藤要「だとすると、桂唯賀が持っている数値は30もない。あんたが消えるのはまだまだ先のはずだ。」
原田九老「私が消えるまでの間、お前を手伝えと?」
佐藤要「あぁそうだ。親友は目の前で消えて、もう一人は行方不明。もう六日経っているのに、俺はこの幸奪戦争について何もわかっていない。種性核や武召喚、クラインドの存在は葛城から聞いただけだしな。」
原田九老「…幸奪戦争について、、か。」
そのときの彼はどこか遠い目をしていた。何を考えていたかは知らない。何を知っているのかも。だが、彼の目には何ともいえない悲しさに近いものが物語っていた。
原田九老「何も知らないと言ったな。だったら教えてやる。福山から聞いた情報、そして私が独自に掴んだ情報も。」
福山幸多、桂唯賀の襲撃からただ一人だけ逃れた男がいた。一番大切な仲間を助けられなかった悔恨も全身に秘めながら激流の川の流れに身を任せてたまるかと必死に抗い、なんとか陸へと帰還することができた。帰還した後、一人でこれ以上ないほどに叫び散らかしていた。
我殺狂助「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ、、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
仰向けに寝そべり右腕を目の上に乗せながら、自身の感情を隠していた。だが、残念なことにそんなことをしている場合ではないと気づき、自身の間改造された時計を閲覧する。さがのからメールが何件も来ていた。
我殺狂助「合流する話、そういえばこっちから迎えに行くっていったな。」
すぐ学校へと向かおうとした。だが、体が立ち上がらない。耄碌とした頭、傷だらけの全身、異常をきたしている精神、こんなことをしている場合ではないと頭でわかっていても体が動かない。限界をきたした体にこれ以上の活動を強制させることはできなかった。
メールを送ろうと考えたが、もう送っても無駄だということに気づいてしまう。思考から気づいたのだ。
我殺狂助「くそが……」
我殺狂助(もうあいつはいねぇ。何でだ…何でいつも俺の周りは誰もいなくなるんだ?)
誰に対して向けられた恨みの言葉なのか、自分でも分からないまま思考の議題にしている。その思考の議論を片手間に行いつつ、自身の腹部の傷の手当て、状況の把握を行う。
手当てが済み、武召喚数値を使うことで治癒を早め、ある程度の回復が施された。それらから数時間が過ぎた。
我殺狂助「ゲーム開始から六日と三時間。早く学校に向かわないとな。」
そうして、現在地から学校までの位置を粗方把握したのち、足取りを進めようとしたそのときだった。
榎宮愷「その必要はない。」
我殺狂助「!?」
歩こうとしていた方向から真逆の位置から声が聞こえる。振り向いた瞬間、我殺狂助の全ての意識がそっちへ移動された。榎宮愷の存在は声で薄々感じ取れたが、驚いたのはその隣。榎宮愷の肩を借りるかたちで一人の女性が立っていた。その女性はとてもおしとやかで美しく、秘書やメイドのような使用人気質の性格の持ち主だ。自身に口調が強いが、必ず自分についてくる。
我殺狂助「いい、じま…」
飯島聡「何ですかその顔。気持ち悪い、、」
なぜか視界がぼやけていた。目の前にいる飯島聡を目に焼き付けて置くべきなのに。なぜかそれができなかった。
我殺狂助「…ハハッ、、そうだよな、。」
納得と諦めの言葉を吐き、目のぼやきを腕でこすることで無理やり解消させた。瞑想と深呼吸を二人に悟られないように、数瞬間だけ行う。
我殺狂助「榎宮、とりあえずここに来るまでのいきさつを教えろ。」
一応合流自体は成功したため、榎宮愷に向こうでの説明を求める。それに対し、榎宮愷は自身が葛城康介に拉致されたときのことから、ここに来るまでの大まかな事柄を放した。誰と同盟を組んだのか、誰が襲撃してきたのか、その襲撃者はどんなキーワードを言っていたのか、榎宮愷が大事だと思う情報を洗いざらい話した。
我殺狂助(才原祐一…まぁ、一旦こいつのことは無視しよう。)
我殺狂助「それで、学校に行ったあとはどうなった?」
榎宮愷「……」
我殺狂助「どうした?早く話せ。」
少しだけうつむき。覚悟を決めたような間を残した後、また口を開いた。
榎宮愷「そのあと、俺は、、【あいつ】を消した。」
我殺狂助「……」
飯島聡「…え?」
我殺狂助「…ちっ、そういうことかよ。」
我殺狂助は榎宮愷のカミングアウトを聞いて、理解と納得を得られた。なぜ、榎宮愷がここにいるのか、なぜ飯島聡がここにいるのか、彼の現界での行動から鑑みても不自然な行動ではなかった。
我殺狂助「お前はどれだけ人の幸せをむしりとる気だ…」
一言しゃべる度に、一秒考える度に、累乗していくようなかたちで憤懣が増幅された。
飯島聡「どういうことですか?」
我殺狂助「こいつは俺たちの仲間を二人消した。一人は俺たちがエスケープを探していたときに、もう一人は昨日のうちに。」
我殺狂助(ダメだ、、説明する度に殺意が。)
我殺狂助「それで、、何を俺に頼む気だ?飯島を人質にして。」
榎宮愷は急に現れ、仲間を消した張本人を名乗った。なぜ消したのか理由を話さないということは俺に納得のできるような説明ができない、もしくはするつもりがない。平和的な話し合いをするつもりはないのだ。そして、榎宮愷のすぐ横には飯島がいる。いつでも脱落にできるほどに近い距離に。仲間を消すような極悪人が近くにいるのに。人質以外考えようがない。今、榎宮愷がしているのは脅し。唯一残っている仲間を人質にし、なにかを要求しに来た。要は本性を表したのだ。現界のときと同じように。
榎宮愷「…違う。飯島さんに何かするつもりはない。」
我殺狂助「ふざけるな!!俺の仲間を消したって堂々と白状したやつが、、俺の大切な最後の仲間に何もしないって信じられるか?」
榎宮愷「ここに来たのは脅しに来たわけじゃない。あんたにお願いがあるんだ。」
我殺狂助「…だったら、まず飯島を離せ。話すのはそこからだ。」
榎宮愷「…わかった。」
そうして、飯島聡を我殺狂助のもとへ歩かせる。ゆっくりとおぼつかない足取りだったが、少しずつ着実に近づいていく。我殺狂助も飯島聡のもとへゆっくりと榎宮愷を警戒しながら歩み寄ってため二人の距離が縮まるのはすぐだった。倒れそうな飯島を我殺が支える。
我殺狂助「…俺にお願いがあるんだよな。」
榎宮愷「…あぁ、そうだ。」
我殺狂助「少しだけどっかいってくれ。そうしたら聞いてやる。」
榎宮愷「わかった。」
どっかいけという言葉の意図、それを瞬時に察し、快く了承した。
飯島聡を一度座らして、その横に自身も座る。榎宮愷の存在を完全に視界から外れたと確認したのち、我殺狂助が話し始めた。
我殺狂助「よくあの状況を切り抜けられたな。」
飯島聡「ギリギリのところで撒くことはできました。ただ、そのときにはもうボロボロで、歩く体力も数値もありませんでした。榎宮さんが私を見つけてくれて、なんとかここまでは、残れました。。。」
飯島聡の体は傷だらけの状態だった。切り傷や刺し傷などの外傷以外にも骨折やからだの機能の衰弱など、今生きていることが奇跡とも呼べるほどの状態だった。もう、彼女は助からない。消滅する分の致命傷を彼女は受けた。その消滅が運良く遅く進行しているだけである。
飯島聡「あのとき、、二人で逃げるべきでしたね。そうしたら、私もあなたも、ここまで苦しむことはなかった。」
段々と声が弱々しくなる。それが消滅へと近づいている証拠なのか、彼女の罪悪感からの悲痛さからきたものなのか、我殺には分からなかった。
我殺狂助「何で、いつも俺を助けようとする?」
飯島聡「私、分からないんですよ。幸せってなにか。なりたいとも思わない。でも、、なってほしいと思う人はいた。」
このときに初めてお互い涙を流しながら会話をしていることに気がついた。飯島はそのおかしさに喜びの片鱗を見せつつ話を続ける。
飯島聡「何でそう思ったかは知らないです。でも、、考えただけでゾッとするんですよ。あなたが私の目の前から消えることを。」
我殺狂助「ふざけんな。そんな意味の分からないことをいって、勝手に消えるのか。。」
飯島聡「えぇそうですよ。あなたの勝手に振り回されたんですから、今度は私の勝手を聞く番です。」
我殺狂助「やめろ、、後悔させるな。。」
飯島聡「我殺さん。」
二人の顔が見つめ合っている。次第に互いのまつげの数まで数えられるような位置にまで近づいていた。二人の言葉は阻止される。その阻止した時間が終了した後、一言。
飯島聡「お幸せに。」
全身を我殺狂助に預けるように寄りかかり、我殺狂助の服は少しだけ滲んだ。
我殺狂助「……それは無理だな。」
このとき、飯島聡について初めて知ることが多々あった。腕の柔らかさ、背中の感触、指の細さ、それらが鮮明に記憶された。そしていつしか、その感触は感じることができないものとなり、鮮明な記憶は少しずつ薄れていくようになった。
脱落
ゲーム開始から六日と三時間
残り参加者10人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




