第55話 前識者
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。
我殺狂助「福山幸多…」
目の前にいる男に警戒の視線を送り続ける。福山幸多「そう、怖い顔するな。君とは少し話がしたいし。」
我殺狂助「残りの人数が二十人もいないこの状況下で、何を話しても意味がないと思うのだが。」
その言葉が聞こえなかったかのようにひとりでに話し始める。
福山幸多「君が私と初めて会ったときに教えてくれた監視者に会うことができる場所、行ってみたよ。」
我殺狂助が地下鉄のホームで消されそうになっていた榎宮愷たちを福山幸多に見逃させるために出した交渉材料。それが、監視者に会うことのできる場所の提示。
我殺狂助「それで、会えたのか?この森の中にある、小さな洋館。その洋館に地下通路があったはずだ。その隠し通路を通れば、監視者に会える。」
福山幸多「いいや、私は会っていない。というより、その地下通路には入ってすらいないんだ。ただ洋館に行っただけ。」
我殺狂助「隠し通路がどこにあるかわからなかったか?」
福山幸多「明らかにおかしいと気づいたからだ。」
我殺狂助「俺の情報は信用ならないと?」
福山幸多「そうではない。君の言う情報に嘘はないように思えた。ただ普通に考えておかしいだろ。【なぜそんなものがある?】」
監視者と面会できる場所。なぜそんなものがあるのか、その理由が隠されていた情報を来訪者に教えるといういわば、案内所や窓口のような参加者をサポートするための場所であるから。いや、ありえない。そんなものを設置するメリットがない。武召喚や種性核などの幸奪戦争における重要知識もアンティワーム以外に伝えないという理不尽の極致の所業を行った運営が。そんな優しい理由で置かれているわけがないのだ。
我殺狂助「最初から気づいていたか。」
福山幸多「あぁ、あの隠し通路はこの幸奪戦争に紛れている運営側の参加者がこっそりと脱出するためのものだって。」
飯島聡「参加者の中にスパイがいるとでもいうんですか?」
福山幸多「監視者といわれているなら、監視するのが彼らの仕事なはすだ。ただモニターで見物しているだけでは監視にならないのだろう。」
我殺狂助「まぁ実際俺もお前もその監視者の一人には会ったからな。」
飯島聡「…は?」
我殺狂助「すまん。それはあとで話そう。」
我殺狂助「それで福山。結局お前はどうしたいんだ。俺たちと戦うってことでいいのか?」
福山幸多「私は洋館で待ち伏せて、脱出しようとする監視者を捕らえることに成功した。そして、そいつから色んな情報を聞き出せた。」
色んな情報、それは前回の参加者であった我殺狂助やアンティワームですら知り得なかった情報。その言葉に我殺狂助は眉をひそめる。それを気にもせず、まだひとりでに話し出す。
福山幸多「そいつのおかげで極楽への行き方は聞き出せたんだ。だが、、私は極楽に興味があるわけではない。」
そして、ここからが本題だと言わんばかりに声量と勢量が増された調子でこういい放った。
福山幸多「私と取引をしないか。我殺狂助。」
我殺狂助「取引…だと?」
福山幸多「私が掴んだ情報はすべて教えよう。その代わり、君と榎宮愷という男には消えてもらいたい。」
その発言に飯島聡は黙っていられなかった。
飯島聡「そんな取引、成立させられると?」
福山幸多「黙っていたまえ。この取引の恩恵を受けるのは君なのだから。」
情報をすべて教える、その教える対象は福山幸多の目の前にいる飯島聡と我殺狂助のみ。我殺狂助が代償として消えるのならば、その情報を活かすことができるのは飯島聡だけとなる。
福山幸多「なんだったら、彼女に危害を加えないことも取引の材料に加えても構わない。」
我殺狂助「俺と榎宮に消えてほしい理由はなんだ?」
福山幸多「私の目的が監視者になることだからだ。そして、洋館で会った監視者にこう言われたのだ。【監視者になりたかったら、榎宮愷と我殺狂助を倒せ】と。」
我殺狂助「…お前が飯島や他の仲間に危害を加えないとどう証明する?」
福山幸多「もう他の参加者を消す意味がないんだ。それに、アンティワームはゲーム開始から時間がたつほど弱くなる。戦うことは極力したくない。」
その言葉に嘘はない。アンティワームは時間が経つほと弱体化される。ゲーム開始から五日も経過すれば、アンティワームの力は一日目の三割も発揮されない。六日目、七日目となれば、エスケープよりも弱くなる。今、福山幸多にとって他の参加者との戦闘行為は避けたいはずだ。
福山幸多「ようはこういう話だ。とりあえず今は、この三人で行動を共にする。それは、榎宮愷を見つけるまでだ。見つけ次第抹消し、そのあとに彼女に私が掴んだ情報を全て提供する。我殺狂助が消えるのはそのあとで構わない。」
福山幸多の要求は榎宮愷と我殺狂助の消滅。しかし、アンティワームが弱体化されていることを考えると、福山だけで榎宮愷を倒すことは困難。そのため、我殺と飯島に協力を図る。
その見返りとして、自身が掴んだ情報を提供する。嘘や裏、別の目的が隠れていとは思えない提案だった。福山幸多の提案は、【俺は戦えないから代わりに榎宮愷を倒せ。倒したら、我殺狂助も消えろ。そしたら情報をくれてやる。】と言っているようなもの。わがまま極まりない。
我殺狂助「……」
その福山幸多の提案に我殺狂助は頭を悩ませていた。
我殺狂助(福山の提案に隠れた胡散臭さはない。今いっていたこと以上の要求はしてこないだろう。それに榎宮愷を倒すことは俺にとっても都合がいい。その見返りも…)
福山幸多が返礼する見返りのことを考えながら、飯島聡に目を向ける。その瞬間、彼女は動き出した。
飯島聡「くだらないことで悩むのやめてもらえますか?」
福山幸多「…ほぅ、、」
このとき、福山幸多の目は虚ろな無へと変化した。
飯島聡「我殺さんが承諾しようが、あなたが何を言おうが、私が消えさせません。」
福山幸多「君にそんな力があるのか?」
飯島聡「なくてもやるんですよ。私は我殺狂助を守る、それが私の目的です。」
福山幸多「フッ、、そうか。では、、、消えてもらおう。【ソイーブル】」
武召喚数値を10消費することでソイーブルが行われる。その瞬間に福山幸多の全身に多大なる力が込められ、鎧が投影される。右手には明らかに異質な巨大な剣が握られていた。
我殺狂助「飯島!!分かっているのか!!俺たちは…」
飯島聡「大丈夫ですよ。あなたは消させません。それだけは保証しますよ。」
【俺たちは】、その言葉から続くものを言わせず、話を無理やりすり替える。
我殺狂助(くっ、、もう今さら遅いか。ここまで来たら勝つしかない!)
我殺狂助「フイフスサモン!!」
飯島聡「セブンサモン!!」
武召喚数値をそれぞれ5、7ずつ消費する。そして、戦いは始まる。そしてそれから一時間後、我殺狂助と飯島聡は福山幸多に大敗を喫することとなった。
榎宮愷「ファースト」
榎宮愷の右手に剣が投影される。
桐生亜衣「愷くん?」
榎宮愷の目に桐生亜衣の姿が映る。そしてその映った姿は消す対象であるとなぜかそう認識する。右腕が思いっきり振りかざされる。桐生亜衣にめがけて。桐生亜衣は榎宮愷の異変に戸惑いながらもすんでのところで回避する。
桐生亜衣「愷くん、やめて!何してるの!!」
榎宮愷「あ、、」
榎宮愷の表情は暗澹たる気持ちを表しているようだった。
榎宮愷(何でだ、なんで今心がこんなに苦しい?)
その表情に桐生亜衣も覚悟を決める。
桐生亜衣「その顔、私すんごく嫌い。言ったよね。私は現界で人を傷つけた。だから、人を殺すことを私はとやかく言う権利はない。私を殺そうとするならそれでもいい。でも、その顔で殺される気は一ミリもない。愷くん、今君は剣を持っててどんな気分?」
才原清一「そんなことを聞いて何になるんだよ。」
突如として屋上の扉が開く。開いた扉の先に一人の男がゆっくりと歩みを始める。
才原清一「やっと見つけたぞ榎宮愷。兄さんをどこへやった。」
ゲームの 開始から五日と六時間
残り参加者15人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




