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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第一章 ただの殺し会い
54/58

第54話 異状

この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。

また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。

榎宮愷「どうだ?我殺から連絡はついたか?」

嵯峨野健児「一応、合流するという話はついたんですが、迎えに行くから待っていろと言われまして。」

斑目遅刃が改造した腕時計を持つ嵯峨野健児、我殺狂助は顔を知っている相手に好きなようにメッセージや動画を送ることができる。その機能を利用し、合流の手筈を整えていた。現在、榎宮愷、桐生亜衣、嵯峨野健児の三名は調理室にいた。学校に備蓄されていた非常食を桐生亜衣が調理室のコンロや調理器具を使用し、独自のアレンジを加え食事の楽しさや美味しさを追及できるようなものに変えていた。その改良された非常食を三人が試食しながら会話を始める。

桐生亜衣「でも大丈夫?合流の話してからもう丸一日経ってるけど。何か他に連絡ないの?」

嵯峨野健児が我殺狂助に合流したいという意図を伝えたのはゲーム開始から四日と六時間のこと。そして今はゲーム開始から五日と六時間、丸一日待っても迎えが来ないのである。

嵯峨野健児「さすがに僕も変だと思ったので、6時間程前に向こうの状況を聞いてみたのですが、返信は来ていません。」

桐生亜衣「履歴からするに他の参加者に倒されたわけじゃなさそうだよねー。道に迷ったのかな?」

行方不明となっている我殺狂助、飯島聡の生存確認は失格者履歴の名前に記載されていないことを榎宮愷、嵯峨野健児も確認する。そしてある【違和感】に気づく。

榎宮愷「なぁ、これおかしくないか?」

そう。何かがおかしいのだ。

榎宮愷「今の残り人数って15人だろ。」

そう。残りの985人は失格となっているはずなのだ。いや、そうあってほしいのだ。

榎宮愷「じゃあ、何でさ、」

榎宮愷「【最新の失格者が四条債賀なんだ?】」

四条債賀が失格となったときの残り参加者の人数は60人程だった。ならば、35人分の失格者の更新がないとおかしいのだ。だが、その更新はない。

嵯峨野健児「まだ隠されていた要素があるんですか?」

呆れと絶望、もう勘弁してくれという迷惑千万な感情が押し寄せる。

嵯峨野健児「じゃあ何だっていうんですか?この時計じゃ我殺さんたちの安否は分からない上に、今倒されたら斑目さんや坂縞さんとは違った末路を歩まないといけないとでもいいんですか!!」

榎宮愷「……」

桐生亜衣「……」

もう三人の心と体は疲弊しきっていた。いや、そんなものとっくにされていた。極楽にいくため、残るため、消えたくないため、その生存本能にすがり、空元気で自分を偽っていただけであった。そんな状態の中で、この幸奪戦争のルールが他にもあるという事実を受け入れられる余裕などあるわけがない。もう既に【限界】なのだ。

榎宮愷「とりあえず、もう少しだけ待ってみようか。それで待ってこなかったら俺たちが森の方へ向かおう。」

嵯峨野健児「えぇ、そうですね。」

桐生亜衣「うん…」

どうしようもないこの感情をまだそんなこといっている場合じゃない、他にやるべきことがある、そんな大義や責任のようなもので蓋をする。

榎宮愷「俺はちょっと外の空気吸ってくるよ。」

そう言い残し、調理室から去っていった。

榎宮愷が去っていくのを確認した後に、桐生亜衣が口を開く。

桐生亜衣「ねぇ、嵯峨野くん。君にとって我殺くんってどんな存在なの?」

嵯峨野健児「…急ですね。どうしたんですか?」

やっぱり。取り繕ったような声で話している。もう嵯峨野健児に心の余裕などないんだ。そんな状態である彼に桐生亜衣は喋らせようとする。

桐生亜衣「話してよ。大事な人なんでしょ。」

嵯峨野健児「……僕、現界で詐欺師をやってたんです。大学生の頃に詐欺グループにはめられて、脅される形でその詐欺グループの下っ端として働いていました。無力でなにもできない周りから虐げられている無力で可哀想な人を演じて、同情を誘い、色んなものを騙しとりましたよ。いや、何もできないは本当のことですね。」

桐生亜衣「……」

桐生亜衣は嵯峨野健児の話になにも言わず、ただ彼を見ているだけであった。

嵯峨野健児「最終的に足がついて捕まって地獄行きになって、地獄での生活が嫌すぎて、藁にもすがる思いでこの幸奪戦争に参加しました。我殺さんとはゲームが始まってから十時間くらいのときに会いました。何もできない僕を拾ってくれました。それは凄く嬉しかったです。でも、申し訳なくて、すごく怖かったです。自分は役に立てないかもしれない、また騙すかもしれない!って。でも、あの人、僕の現界での行いを知ったときにこう言ったんですよ。」


我殺狂助「へぇー、詐欺師やってたのか。」

嵯峨野健児「やっぱり、、僕のことを仲間にしない方がいいですよ。」

我殺狂助「はあ?何でだよ。」

嵯峨野健児「…え?」

我殺狂助「既に俺はお前らを騙しているようなもんだぜ。騙しているのはお互い様だ。」

嵯峨野健児「いや、えっと、それは」

我殺狂助「俺はお前らに騙されてもいい。だから俺の為に利用されろ。そのとき俺はお前の為に利用されてやる。」

そのときの目が美しかった。ほのかに笑っていて美しかった。

嵯峨野健児(会って間もない人間にどうしてそこまで言える?めちゃくちゃだ。)



桐生亜衣「めちゃくちゃだね。」

嵯峨野健児「ほんとですよ。今でもアホなんじゃないかと思います。」

我殺狂助について語るときの表情は少しだけ日が昇っていた。

嵯峨野健児「だから明確な理由とかきっかけがあるわけじゃないと思います。気づいたらなっていた、いつの間にかその人の存在が自分の中で大きくなっていたていうだけです。」

桐生亜衣「そっか、私と同じだね。」

その回答に満足した中で美しく微笑んでいた。

桐生亜衣「嵯峨野くんは大事な人と一緒に極楽に行ける可能性がまだ残っている。だから、まだ足掻かなくちゃダメだよ。」

嵯峨野健児「フッ、桐生さん、人を慰めるの上手ですね。」

桐生亜衣「慰めているわけじゃないよ。自分のメンタルは自分で回復させるものだよ。私はそれを促してみただけ。私も外の空気吸ってくるねー。」

両腕を高く挙げ、両手の指を重ね合わせながら立ち上がり、退室する。

嵯峨野健児「あなたも残るべきですよ。絶対に。」



榎宮愷「……」

学校の屋上で寝そべり、思い返していた。自分は何を失ったのか、ここに来て何ができたか、そんな後悔が募るだけの過去のことを頭で再生していた。そんなときに屋上の扉が開いた。

桐生亜衣「いやー、屋上って初めて入ったな。屋上入れる学校なんかそうそうないだろうし。」

榎宮愷「桐生…」

桐生亜衣「後悔してる?あのホテルのこと。」

榎宮愷「別に。俺はいつまで役立たずでいるんだって自責の念に駆られているだけだよ。」

桐生亜衣「やっぱりしてるんじゃん。」

榎宮愷「坂縞も花城もエスケープも一時的に同盟を結んだ相手でさえも、たった数時間ですぐに消えた。なのに俺は残った。その事実が凄く複雑でさ。何か、功労者が作り出す、生み出してくれた恩恵を俺が横取りしたみたいな感じになって。」

桐生亜衣「愷くんはさ、何でこの戦争に参加したの?」

榎宮愷「…自分が地獄に来た理由を知りたいから。」

桐生亜衣「おーー、意外な回答。じゃあもう一個質問。【現界でさ、愷くんはどんな人生を過ごしてた?】」

このあと何が起こったのかお教えしよう。榎宮愷が暴走した。もう一度いおう。榎宮愷が暴走したのだ。桐生亜衣が出したこの質問。端から見れば本当にただの質問だ。事実そうだ。桐生亜衣がこの質問をしたのは、ちょっとした好奇心と榎宮愷を元気づける、励ます、それを行うためのいわば準備段階、その質問の回答から榎宮愷の人間性を割り出し、適切な言葉をかけようとしていた。限界を迎えていた人間に対して、悪くないカウンセリングだろう。だが、榎宮愷にとってその質問は絶対にしてはいけないものだった。


榎宮愷「過去をきくものは、消せ。」

桐生亜衣「…え?」

あまりにも様子がおかしかった。不自然すぎるほどに。榎宮愷の中で何かが発動した。

榎宮愷「過去をきくものは、消せ…」

続けてもう一度言う。今度は悲しそうに。

そして最後に彼は口にした。

榎宮愷「ファースト」




我殺狂助「……」

我殺狂助は嵯峨野健児とメールのやり取りを行い、合流の手はずを整えていた。だが、我殺狂助はこっちから迎えに行くといいつつ、一日経ってもまだ行かない。なんなら、嵯峨野健児が新たに出したメッセージにも返信していない。なぜ、嵯峨野健児のメッセージに返信しなかったのか。理由は簡単。する余裕が今ないからだ。

飯島聡「我殺さん、、」

覚悟と不安が混ざった声で呼び掛ける。

我殺狂助「あぁ、わかってる。」

福山幸多「やぁ、久しいね。【我殺狂助くん。】」



ゲーム開始から五日と六時間

残り参加者15人




最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。

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