第51話 脱落
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。
桐生亜衣「んーーーーん、、やっぱ起きちゃうか。全然眠らないや。」
学校の職員室のソファで横になり、目が覚める。休息を取らないといけないということはわかっていても、それができるかは話が変わってくる。仲間が消えたあとで安眠などできるわけがない。
桐生亜衣「喉渇いた。お水探そ。」
横になった身体を無理やり上へと動かす。地面と足を接触させ、直立する。歩きだし、扉を開け職員室から出たときだった。廊下に一人の男が立っている。
桐生亜衣「木崎くん?」
木崎印「あぁ、お前まだ生きてたのか。」
桐生亜衣「うん。あの四条債賀っていう人の猛攻から残ったのは私と君、あと途中から参戦した榎宮愷、この三人だけ。」
木崎印「随分減ったな。」
右腕にはめられた時計の残りの参加者人数を閲覧し、そうつぶやく。
桐生亜衣「もう30人しかいない。」
木崎印「菅田がわざわば奴隷全員連れてホテルまで来たから、もう教会へ向かう必要はないな。」
福山グループがアジトにしている二つの場所
教会と森、そのうちの教会は菅田神東が自身の種性核を活かすに最も適した場所であると予想していた。しかし、結果は違った。もう教会を縄張りにしているものはいないと考えてよいだろう。
桐生亜衣「ただ、もう一つの森にいるとも考えにくいよね。」
木崎印「あいつらは待ち構えるというより、積極的な狩りをメインにしているからな。もう拠点としている場所からは離れているだろうし、グループ内での同盟関係も段々崩壊しているんじゃないか?」
他の参加者を倒すことに抵抗や罪悪感、そういった躊躇いを乗り越えた者、麻痺させていったもの、そのものだけが現地点での生き残りという立ち位置を確立させている。他の参加者を消す、それは自分以外の対象全てに当てはまる。勝利条件がまだわかっていないこの状況下で残り参加者が30人と全体の97パーセントも減らされれば、自分だけが残れば確実に勝てる、そういう考えが生まれることもやぶさかではない。それが可能である領域まで人数は減少し、武召喚数値も今までに他の参加者を何人か消したことで一人で戦える分まで賄えているものが多い。
桐生亜衣「その発言からするに、、今から戦わないといけないのかな?」
共闘関係など最初からなかったようなものだ。早いとこ邪魔者は倒しておくべきだろう。
木崎印「いや、今は戦わない。」
桐生亜衣「あ、そうなんだ。全然いいし、ありがたいけど、、なんか、ちょっと、意外。」
木崎印「もうどうしたらいいかわからない。自分の先輩みたいな人も、、友達みたいに接していたやつも、みんな消えて自分だけ生き残って、何が目的でここに参加したのかわからなくなった。」
木崎印「極楽に行きたかったからここへ来たはずなのに、、今は行きたいと思えない…」
桐生亜衣「木崎くん…」
木崎印「とりあえず俺はもういくよ。応急処置してくれたやつに礼だけ言っておいてくれ。」
桐生亜衣「待って!!まだ、、」
木崎印「俺もお前もたまたま生き残っただけだ。この生き延びたことに何の意味がある?ほとんど失って、、自分だけ残ったことに。」
桐生亜衣(そうか。この人は、他の参加者のことを協力者じゃなく、本当の仲間だと思って戦ってきたんだ。だから、仲間が消えたことに対してここまで自分を悶々とさせられる。)
木崎印という人間を少し理解し、その人物像と自身を重ね合わせている間に、木崎印の姿は見えなくなった。
桐生亜衣「私は、、何でここに来たんだっけ?」
誰も倒したくないのに。デスゲームだと分かっていたのに。
榎宮愷「種性核が累積される?」
嵯峨野健児「ええ。だから我殺さんはクラッシャーとロストイーブン、この二つの種性核の両方を兼ね備えています。」
榎宮愷「俺を苦しめるために数値の振り込みを行おうとした結果、何の影響も被害もなく数値の振り込みが行われたとでもいうのか?」
嵯峨野健児「…そうです。我殺さんがそれをするのを僕は見ました。」
嵯峨野健児「我殺さん?何してるんですか?」
我殺狂助「嵯峨野。種性核が違う者たちで数値の振り込みを行うとどうなると思う?」
嵯峨野健児「え?」
我殺狂助「振り込まれた相手は時間が経つごとに暴走し、やがて自滅する。」
嵯峨野健児「…正気ですか?」
我殺狂助「こいつにはちと因縁があってな。俺の手で倒したいんだ。」
そうして、我殺狂助と榎宮愷の時計が接触し、数値の振り込みが行われる。しかし、特に目立った変化はない。
嵯峨野健児「何も起こらないですけど、振り込みはできたんですか?」
我殺狂助「…あぁ、できている。」
榎宮愷の時計の数値は12へと上昇している。
我殺狂助「まさか、俺とこいつの種性核が同じになったとはな。」
嵯峨野健児「え?でもこの人は、」
我殺狂助「クラッシャーじゃない。別の種性核だろう。でも数値の振り込みは正しい形で行われた。となると、考えられるのは俺の種性核はクラッシャーだけじゃないってことだ。」
嵯峨野健児「そんなこと…」
我殺狂助「この方法が通用しないなら仕方がない。正々堂々戦えってことなんだろ。こいつを消すのは一旦後回しだ。人手がいるのは本当だし。」
榎宮愷「……」
数値の振り込みに対する一連の会話を聞き、しばらく黙りこむ。
榎宮愷「嵯峨野」
嵯峨野健児「…はい。」
覚悟を決めたかのような声で返事をする。
榎宮愷「確かお前と我殺は斑目の作った機械で連絡を取り合うことができるんだよな。」
嵯峨野健児「はい。そうです。」
榎宮愷「我殺狂助はどこにいる?」
~一方その頃~
佐藤要「葛城ーー!!ったくあいつどこいったんだよ。」
猪谷累「なぁ、要。もうよくないか?ここまで見つからないってなると。」
佐藤要「そうはいってもなぁ、、失格者履歴に葛城がいるわけじゃないし、急にどこかへ消えたからなー。」
かつて行動をともにしていた男、葛城康介が突然姿を消し、その行方を探っている。
佐藤要「葛城ーー!!どこだー!!」
桂唯賀「うるさいですね。」
佐藤・猪谷「!?」
突如としての他の参加者の登場に驚きが反射として現れる。
桂唯賀「かつらぎ、かつらぎ、って叫んで見つかるわけないでしょ。」
佐藤要「そ、そんなのわかんないだろ。」
桂唯賀「はぁ、、何で人ってこんな馬鹿なんでしょう。」
ふかーいため息をつき、自身のことも対象に当てはまっている口ぶりでけなしの言葉を漏らす。
猪谷累「何者だお前?」
桂唯賀「桂唯賀といいます。あぁ、覚えなくて結構です。どうせ消えるので。ファースト」
右手に剣を投影する。戦闘の姿勢を全面的に押し出す。
猪谷累「そっちがその気なら、、サードサモン!!」
武召喚数値を三つ分重ねがけし、クラッシャーという種性核の影響も交えて、巨大な大剣が投影される。
桂唯賀(あの大きさ、クラッシャーですね。初手で数値を三つ使うということは、彼の今持っている数値は20辺りでしょう。クラインドは極限まで追い詰められなければ使えないはず。)
猪谷累「クラッシャーの恐ろしさ、思い知らせてやる!」
佐藤要「まて!累!!!」
呼び止めの言葉など一切聞かず、正面から攻めに入る。
猪谷累「うぉぉぉぉぉ!!!」
大剣を大きく振りかざし、桂唯賀のもとに狙いを定める。そして剣が振り下ろされる。その直前だった。
桂唯賀「フッ、バウンド」
彼がそう一言呟いた結果、何が起こったか、
猪谷累が脱落した。
脱落
佐藤要「は!?るいぃぃぃぃぃーーー!!」
桂唯賀「おお、ほんとにこの人の数値20だった。」
ゲーム開始から四日と六時間
残り参加者29人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




