第50話 下降
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。
榎宮愷「ここは、、」
パート「思ったより早く帰ってきたな。」
榎宮愷「お前ら!?」
よくわからない世界、記憶を失った自分自身であると語る二人の男。
パート「すぐ気絶するなお前。そんなだからまた記憶奪われるんだよ。」
榎宮愷「きおく?」
パート「前にもいったが、俺はロストイーブンの種性によって奪われた記憶の象徴。さっきの戦いでロストイーブンのバフを使ったからな。当然、代償は支払ってもらう。」
榎宮愷「何の記憶を奪ってきた?」
パート「それは答えられねえ。だが、取り戻す方法は教えてやれる。アナリストだ。そいつの種性を利用すれば俺の記憶は戻る。」
榎宮愷「アナリストの種性ってどんなのだ?」
パート「アナリストは別名で分析家とも呼ばれている。企業や市場の経済データなどの情報を収集・分析をすることで評価や予測を行う、現界ではそういった意味合いで使われている。ただ種性核のアナリストは少し違う。分析をするという点だけに固執しているんだ。アナリストは他者に触れることで分析ができる。そしてその分析は触れている時間が長ければ長いほどに質と量が増す。他の種性核者の種性、今、現在考えていることや隠していること、そのものの弱味など、触れられているものが与えられる情報は理論上全て知ることができる。」
榎宮愷「それ分析をしているといえるのか?それに、どうしてそれがロストイーブンの反動を取り戻すことに繋がる?」
パート「さっき条件が揃えば、触れられているものが与えられる情報は全て知れるといったろ。その与えられる情報というのは、その触れられているものが知っていない情報でも与えられる情報に分類されることがあるんだ。」
榎宮愷「……は?」
数秒だけ考えた。その結果、脳が理解を拒んだ。
パート「そうだなー。例えば、俺がアナリストでお前に触れるとする。この場合、お前の種性核や種性がわかるだけじゃなく、なぜお前がこのゲームに参加したのかもわかる。」
榎宮愷「つまり、、その触れる対象が忘れていることもわかるってことか?」
パート「そう。あとは、対象が一部だけ知っている情報のをアナリストの種性を通して、その情報の全貌を明かすことができる。」
榎宮愷「なるほど……やっぱりそんなに分析してなくないか?」
パート「そんなこと言われてもどうしようもねえよ。それより、時間だな。記憶はもらった。さっさと目を覚ませ。」
榎宮愷「おい!ちょっとま、、」
やがて、視界が広がり、初めてみる天井を見上げている。ベッドの中。それだけしかわからない。身体を起こして周りを見ていると部屋の扉が開いた。
嵯峨野健児「起きましたか?随分早いですね。」
榎宮愷「嵯峨野…あぁお前が倒れていた俺たちを連れてきてくれたのか。」
嵯峨野健児「ええ。あなたと桐生さん、木崎印って人はリアータホテルから少し離れたこの学校に連れていきました。」
榎宮愷「じゃあここは学校の保健室か。」
嵯峨野健児「はい。木崎さんは別室で休んでいます。」
榎宮愷「桐生は?」
嵯峨野健児「一時間前に職員室のソファで休むと言っていました。」
榎宮愷(なら今、保健室には俺と嵯峨野しかいない。)
榎宮愷「なぁ、嵯峨野。」
嵯峨野健児「ん?どうかしました?」
榎宮愷「【武召喚数値の補充してくれないか?】」
嵯峨野健児「……急ですね。どうしてです?」
榎宮愷「俺とお前、飯島さんと斑目くんは同じベーシックだろ?数値が足りないんだ。頼むよ。」
嵯峨野健児「もしかして気づいています?」
その言葉をきき、わずかに榎宮愷の顔が歪む。それでも声の調子は崩さないように努める。
榎宮愷「…何のことだ?」
嵯峨野健児「いや、もう気づいていますよね。種性核のこと。武召喚数値のこと。」
榎宮愷、桐生亜衣、坂縞樹の三名が我殺狂助によってリアータホテルに連れていかれたあの日、その三名の武召喚数値は増えていた。武召喚数値を増やす方法は他の参加者を倒すこと、同じ種性核の者から数値を振り込んでもらう、この二つしかない。意識を失ったものが前者の方法で数値を増やせるわけがない。ならば後者、同じ種性核者同士の数値の振り込みしか考えられない。
榎宮愷「我殺はクラッシャーであとの三人はベーシックって言っていたな。ただ俺の種性核はロストイーブンだった。これはどういうことなんだ?」
嵯峨野健児「……」
榎宮愷「お前らは何を企んでいた?」
嵯峨野健児「…それは」
榎宮愷「頼む!答えてくれ!!でないと俺はお前も殺さないといけなくなる…」
嵯峨野健児「僕も…」
榎宮愷「四条債賀と戦ってわかったんだよ。すごく頼りになるやつも長いこと一緒に戦ってきた仲間ですら、簡単にいなくなるんだって。だから、、もう俺は迷っている暇なんかないんだよ。俺に何があったのか、この幸奪戦争が何なのか、全ての謎を自力で解き明かす。坂縞のためにも。」
嵯峨野健児「わかりました。お話しします。ですが、先に言わせて下さい。この件に飯島さんは何の関係もありません。彼女は、、何もしていません。」
~榎宮愷たちをリアータホテルに連れてきたときのこと~
飯島聡「我殺さん。その人たちは何ですか?」
我殺狂助の背中に一人、簡易的な荷馬車に二人、参加者が乗せられている。
我殺狂助「飯島、ベッドの用意をしてくれ。」
飯島聡「え、空いている部屋あったかな。」
そうして、気絶しているものたちを各部屋のベッドに寝かせる。
嵯峨野健児「我殺さん、どうしたんですかあの三人?」
斑目遅刃「なにもしらないひとをおくの、、きけんだと、おもい、ます。」
飯島聡「あなたの判断だというなら、あの三人をこのホテルに置くことに反対はしません。ですが、何か意図があるんですか?」
我殺狂助「ただ人手が欲しいだけだ。いろいろ聞きたいこととかあるだろうが、いずれ話す。とりあえず、こいつらは俺たちの仲間にしようと思う。ただ一つ忠告しておく。
【この男にだけは気をつけろ。】」
榎宮愷を指して一言、この男に対して並々ならぬ思いを込めそう告げた。
飯島聡「なぜです?」
我殺狂助「俺とこいつは現世で関わりがある。」
榎宮愷「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺と我殺は現世で関わりがある?」
嵯峨野健児「やっぱり記憶にないみたいですね。我殺さんもあなたの様子を見て、現世の記憶を失っていると考えていました。」
榎宮愷(俺と我殺が現世で面識があるなら、俺が地獄にきた理由も何か…)
カイリ(それは絶対に知らない方がいい。)
自分の心、脳内に直接語りかけられる。自分の知らない自分自身に。
カイリ(現世の記憶が全部ない、僕という存在がいるのは、榎宮愷の意思によるものだ。嫌な記憶だから、残したくない記録だから、消したんだ。誰だってそうだよ。嫌な記憶は消したい。だから振り返るな。)
榎宮愷
嵯峨野健児「続けても大丈夫ですか?」
榎宮愷「あぁ、すまない。話を遮ったな。」
嵯峨野健児「そのあとに我殺さんは自分の持っている数値を桐生さん、坂縞さんにそれぞれ与えていきました。」
榎宮愷「そのとき、我殺は自分の種性核と二人の種性核は同じであると確信していたのか?」
嵯峨野健児「福山さんのクラッシャーという発言と武器の大きさ、いろんな観点からクラッシャーである可能性が高いと判断し、振り込んだそうです。」
つまり、桐生亜衣と坂縞樹に対する数値の振り込みは問題なく行われたのだ。
榎宮愷「なら、俺の場合は?」
嵯峨野健児「あなたの数値の振り込みは我殺さんが行いました。無論、この振り込みは恐らくあなたを消す、苦しめる、そんな意図で行われたと思います。」
榎宮愷「桐生と坂縞の数値の振り込みは問題なく進んだということはあいつがクラッシャーであるのは確定的だ。同じ種性核者同士でしか数値の振り込みはできないとというのが嘘とも考えられない。本当に我殺が振り込んだのか?」
嵯峨野健児「はい、それだけは断言できます。そして、私も飯島さんも斑目さんも種性核はベーシックです。」
榎宮愷「は?じゃあ一体どういうことだよ。」
嵯峨野健児「…我殺さんが前回の幸奪戦争の参加者であるのは知っていますよね。」
榎宮愷「あぁ、それが何だ?」
嵯峨野健児「前回の幸奪戦争に参加したときの我殺さんの種性核はクラッシャーでした。」
その発言に奇妙さ、違和感、単語の異質さに何かを察する。
榎宮愷「前回がクラッシャー…なら、」
嵯峨野健児「はい、今回の彼はロストイーブンなんです。」
嵯峨野健児「この幸奪戦争は回数を重ねる度に自身の種性核が累積されます。」
ゲーム開始から四日と五時間
残り参加者34人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




