第24話 早めの失格者
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
磯貝公人「まさか一人でくるとは。」
花村祈「あんたは一人でここにうずくまっていた。そうだろ?」
磯貝公人「当たり前だろ。菅田様たちがあんたを倒してくれると信じて、俺は覚醒者になるんだよ!!そうじゃないと生き残れない。あんたなら分かるだろ!!!」
花村祈「あぁわかるよ。俺たちエスケープが生き残ろうと思ったらその覚醒に頼る他道がない。だから、俺もそれを何がなんでも掴み取りたい。」
磯貝公人「ちっ!あーそうかよ!セカンド!」
磯貝公人の両手にも小さい剣?らしきものが投影される。短剣というにも短すぎる。わざわざ投影する意味があったのかと疑問に思うほどの長さだ。
互いに距離をとり間合いを確認する。弱者同士の互角バトル。どちらに軍配が上がってもおかしくない。
花村祈「たぁ!ふっ!やっ!」
距離を詰めながらその極小剣を振り回し、少しでも剣と体が触れさせようと試みる。しかし、それが叶うことはなく、そもそも距離を詰めることすらできていない。花村祈の剣の振りに合わせて後退しているため、攻撃が一切当たらないのだ。そして磯貝公人は一気に後退を広げ、距離を大きくとり、反撃にでる。
磯貝公人「たぁぁ!!」
投影していた二つの剣を花村祈のもとに投げ飛ばす。
花村祈「くっ!」
その投刃に気づき、すぐさま伏せる。だが
磯貝公人「いやぁぁぁ!!」
伏せたことによって戦う姿勢や防御の体勢を立てなくなり、その隙を狙われ思い切り足蹴にされる。
花村祈「がぁ!!」
蹴られたことで無意識的にうめき声が発声され、地を転がる。
磯貝公人「今失格になっていないエスケープの中でお前だけが別のグループに所属している。他のやつも俺も福山さんについていく選択をした。かわいそうだなお前は、福山さんに出会う機会がなくて。あったら何か変わっていたかもしれないのに。」
花村祈「いや、その福山っていう人に出会えたとしても俺は今のグループにいたと思う。」
磯貝公人「は?あーそうか、お前は未だに状況が読み込めていないみたいだな。お前以外のエスケープは福山グループについた。そしてその福山グループの総戦力はこのホテルに襲撃に向かったメンバーの2倍以上。お前に種核醒の道はないし、お前のグループで勝ち残れるやつは一人もいないだろうな。仮にお前が俺を倒せたとしても、福山グループにいる他のエスケープがいるから、お前の位置は特定されたまま。分かるか?お前はこれまでに失格になっていたエスケープと同じ哀れな末路を辿るだけなんだよ!」
花村祈「なら、さ、あんたはその哀れな末路とやらを辿らずに済むの?」
磯貝公人「…あ?」
花村祈「俺以外のエスケープは福山グループにいるんだろ。でもそっちのボスが欲しいのは種核醒したたった一人のエスケープでいい。俺を倒したらあんたらは一人になるまで争わないといけない。その争いに勝てると?」
磯貝公人「黙れ!!!お前を倒して福山さんに認められるんだよ。生き残るエスケープは俺なんだよ!!ファースト!!」
馬乗りになられ、投影した極小剣が花村祈の喉もとの寸前につく。
磯貝公人「死ねよ!!あぶれ者が!!」
武器と腕をを大きく上げ、喉を貫こうと重力と勢いに任せて振り下ろそうとする。
花村祈「はぁぁぁぁ!!!」
花村祈がとった行動は何の小細工もなしにただ振りかざせられたその剣を両手で受け止めただけであった。その両手には剣の刺されによる出血が止まらない。
木崎印「あのさ、何で無事なの?」
花城如音「?何がだ?」
木崎印「お前あれを被爆しただろ。爆発受けてピンピンしてる人間なんかどこにもいねえよ。何だ?武召喚数値で自己治癒能力を高めたのか?」
花城如音「いや?俺はもう武召喚数値が2しかない。」
木崎印「……もういい。さっさとくたばれ。ツインサモン。」
金髪チャラ男が刀を投影させ、戦闘の姿勢を見せる。
花城如音「3vs1で俺はファーストしか使えない。うーーん。ギリか。」
狩野下切戸「貴君と剣を交えるのははとても心が躍った。そしてまた、剣を交える機会が来るとは…何か感慨深いものがあるな。フォースサモン!!!」
彼もまた4つの武召喚数値を消費し、剣を投影する。
洗井ヰ凶他「この人がこんなテンション高いの初めてみました…トライサモン!!」
またまた彼も武召喚数値を3つ消費し、ノコギリの形に近い刃物が投影される。
花城如音「…ファースト」
磯貝公人「分かってんだよ…俺がお前を倒したところでこの先勝ち残れる確率は限りなく低い。お前だって俺を倒したとしても他のやつらに位置は知られたまま。菅田に今回の襲撃に参加させられた時点でもうお察しなんだよ…俺もお前も未来はないって。ただ、諦めるにしては、ちと生き残り足りねえからさ。どうしても夢見たくなるんだ。夢を掴むためにこの意味のわからないゲームに参加したんだから。」
花村祈「俺もだよ。地獄での生活が嫌だから、何かに期待してここに懸けてみた。でも、俺はこのゲームにおいて誰かにへばりついていくことしかできなかった。ただ泣き叫びながら自分を助けてくれる人の後ろに逃げていた。まだ死にたくないから。まだ生きていたいから!」
磯貝公人「もう…何が正解なのかわかんねえ。俺のやってきたことは正しかったのかな。俺は…失格になんかなりたくねえ。」
花村祈「…福山グループを裏切らないか?」
磯貝公人「!?正気かお前!」
花村祈「俺を倒しても生き残る可能性は低いだろ。福山グループっていうのは平気で人を自爆させるクズの精鋭の集まりなんじゃないのか?」
磯貝公人「ごもっともだが、やつらの戦力は無視できないと言っただろ。だから俺はやつらに服従しているんだ。」
花村祈「生き残るためならそれでいいと思う。ただ今はどうだ?あいつらについて生き残れるのか?」
磯貝公人「……」
花村祈「うちのグループに入った方が生き残る確率はまだあるんじゃないのか?」
磯貝公人「…種核醒はどうすんだよ?最終的に俺とお前は戦わないといけなくなるぞ。あれなしでは到底やっていけないからな。」
花村祈「それでいい。俺たちは今争うべきではない。」
磯貝公人「…いいだろう。もとから気に入らない連中ではあった。」
花村祈に向けていた剣を下ろし始める。
磯貝公人「これが正しいのかな…ハハもうわかんねえ。」
(わかんねえなら好きに考えて生きろ。そうですよね?前田先輩)
磯貝公人「何であんな早く消えちまったんだろう…」
花村祈「…え?」
ゲーム開始から二日と三時間
残り参加者420人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




