第20話 こうはい
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
ありとあらゆる方向から爆発音が飛び交う。
花城如音「花村!エスケープの位置は?」
花村祈「全く変わっていません!」
佐々木浩二「まずいよ。このホテル崩れるかも!」
エスケープの種性核は貧弱な戦闘力、エスケープ同士の強制的な位置情報共有、そしてその位置情報共有にはそのエスケープの近くにいた参加者も位置情報を晒される。つまり、エスケープである花村祈の居場所だけでなく花村祈の近くにいた花城如音たちの存在も向こうに知られている。何名かここから離れたのはそのためだ。エスケープである花村自身が移動しては狙いの標的は変わらないので意味を持たない。だが我殺グループのメンバーは我殺狂助の救援に向かいたい。ほんの短い間に斑目遅刃だけでなく、我殺狂助や飯島聡まで失ったらひとたまりもない。新しく花城如音たちが仲間に加わったからプラマイゼロ?アホの考えである。我殺グループのメンバーは位置情報を知られていないからホテルから離れることが可能。何人かは我殺狂助たちの救援に向かうのが合理的だろう。とはいえ、そのエスケープを倒さなければ大事な存在である花村祈は失われる可能性がある。坂縞樹がここに残る選択をしたのは榎宮愷を気にかけていただけではなく、花城如音以外まともそうな戦力者がいなかったからこその憂慮であろう。
現在、このホテルに残る選択をした者は花村祈と会話に支障をきたさないまでの距離をとり、花城如音たちの位置を向こうには知られていない。だがそれは相手も同じ。お互いエスケープ以外の今の居場所が分からないのである。状況はイーブン、いや、爆発とかいう意味不明な最狂の遠距離攻撃ができる辺り向こうの方が圧倒的に有利だろう。
つまり、今の状況は花城如音たちにとってめちゃくちゃヤバイのである!
そもそも花城グループは誰も失格にしていない。当然武召喚数値が増えるわけがない。
花城如音はベーシックだったので榎宮愷から少しだけ武召喚数値の補充ができたが、佐々木浩二はそうではない。
佐々木浩二か発した【俺の種性核的にもその方が都合がいいでしょ。】というセリフ。
このセリフからしてベーシックやクラッシャーだとは考えにくい。ベーシックの種性のどこに都合よさがある?クラッシャーもクラインドには都合の良さがあるかもしれない。だがそれは数値があっての話だ。今の状況において都合がいいわけない。よって数値の戦力差も歴然。勝ち目はかなり薄い状況だ。
花城如音「花村!お前は絶対に動くな。向こうのエスケープはお前を絶対に倒したいはず。だがそれを実行するのは俺らがやられたあとだろう。俺らが合図するるまでは動かない方がいい。」
花村祈「は、はい!!」
坂縞樹「俺と榎宮は下の階にいく。どのみちこのホテルが崩れる前に避難しないと失格になるだけだからな。榎宮、いくぞ!」
榎宮愷「ああ!」
今は足手まといになったらダメだ。勝ち残らないと意味がない。地獄に来た理由を知らなきゃ終われない。
花城如音「佐々木!花村をここから避難させるには飛び込むしかない。まず敵の位置を探すぞ!」
佐々木浩二「は、はい!」
花村祈「……え?トビコム??」
花城如音、佐々木浩二はホテル内にあるいくつもの窓ガラスから敵の位置を探ろうとする。このホテルに爆撃を仕掛けている以上、近くにいるはずだからだ。だかありとあらゆるところから爆撃が来る。時計の失格者履歴を確認しなければ、爆弾や爆薬の類いによるものだと考えるだろう。参加者自身が自爆するなんて誰も思わない。
菅田神東「だから勝てないんだよ。もとよりクラッシャー集めをする気なんかさらさらない。」
花城如音「!?は?」
花城如音が敵の位置を探そうと辺りを駆けていた際に彼の正面横にある窓ガラスが破割される。破壊された窓ガラスの破片の他に一人の人間が空中を舞う。そしてその人間にわずかな閃光か見える。
花城如音「そういうことか!!」
その閃光から爆発源が何であるかを察し、咄嗟に後ろへと飛び下がる。だが
ボーーーン!!
蘆田菫 失格
察した頃にはもう遅く、爆発を免れるほどの距離まで引き下がることは叶わなかった。
飛び下がったことである程度爆発の威力は落ちていただろうが花城如音は被爆したのである。その爆発の威力で花城如音の全身はこれでもかというほど吹き飛ばされる。花村祈や佐々木浩二もそれを目視してしまう。
佐々木 花村「花城さん!!!」
花城如音「が、あ、くっ、しくじった」
佐々木 花村(何で喋れるの!?)
花城如音「佐々木、花村、向こうは参加者自身が爆弾となって攻撃してくる。要は自爆だ。」
佐々木浩二「え?失格になるのに!?」
花城如音「向こうが何考えてるのかは知らん。だがその自爆戦法は厄介だ。恐らくあいつらは武召喚数値を利用して極限まで跳躍力や機動力を増幅させている。そうすれば好きなところに飛んでいける。ホテルに向かって爆発するだけだから体への負担は考慮しなくていいしな。だからどこから狙ってくるのかはわからない。」
佐々木浩二「いや、それ結構詰んでません!?」
花城如音「いや、俺は今さっきの爆発で足の骨と関節がやられたからまともに戦えないかもだが、まだ勝機はある。」
佐々木浩二「え?本気で言ってます?」
花城如音「あぁ、今から言うことよく聞いておけ。今この場で頼りになるのはお前だけだ。」
恐る恐る花城如音の考えた作戦を耳にする。だがその作戦に抗議せずにはいられなかった。
佐々木浩二「いやいや、それ花城さんがやればいいでしょ。僕がやる意味あります!?」
花城如音「敵に油断を作らないといけないんだよ。頼んだぞ。」
佐々木浩二「ええーー」
狩野下切戸「なぁ、木崎よ。」
木崎印「はい?なんです?」
狩野下切戸「やつらは本当にこの自爆が幸せになるための最善で最適な方法だと思っているのか?」
木崎印「思っているからあんなご満悦面見せているんでしょ。」
狩野下切戸「人間ってこうも愚かだったか?」
木崎印「いいや、半分は菅田の種性核のせいですし、そうとは言い切れないじゃないんですか?」
狩野下切戸「ホテルの崩壊状況によっては次はBレートの者が突爆するのだろう。私とお前はAレートだからしないで済むが、Bレートの者もやつらのように幸せそうに散っていくのかだろ。理解できんな。」
木崎印「まぁ、相手にとっては俺たちも理解の範疇を越えた存在ですよ。なんでこんなろくでもないやつの配下にいるんだ?ってね。」
狩野下切戸「私がついたのはあのペテン師ではない。自分の目的に忠実なあの社長だ。」
木崎印「そういや、あの人社長でしたね。」
菅田神東「ふむ、Bレート、そして私が指定するAレートの者よ。ホテルへと突撃せよ。」
信徒「ハッ!!」
木崎印(何で曇りなき眼でまっすぐな敬礼ができるんだか…)
菅田神東「木崎、狩野下、酒々井、洗井ヰ、君たちが突撃の係だ。」
四人「ハッ」
木崎印(突撃しないAレートは村部と駄兼の二人かよ)
そして突撃命令が下された途端に、ホテルのロビーへと侵略を始める。
Bレートの信徒「処せーー!!」
やがてロビーの一つ上の階にいた榎宮愷、坂縞樹はそれに気づき始める。
坂縞樹「榎宮、今の音…」
榎宮愷「あぁ、誰かこのホテルにやってきたらしい。」
坂縞樹「というか来たみたいだな。」
樋口壬生「貴様ら、自身の種性核を述べてみよ。」
坂縞樹「教えるわけないだろ。」
樋口壬生「ならば死ね。セカンド!」
樋口壬生の両手に斧のようなものが投影される。
坂縞樹「どっちの斧が強いか勝負するか。ファースト。」
負けじと坂縞樹も巨大な斧を生成する。
坂縞樹「テリヤァァァ!!」
カーン。その音とともに坂縞樹が手にしている斧を振り回したことによって、樋口壬生の斧が弾き飛ばされる。二つの斧と一つの巨大な斧が衝突し、力の関係によって二つの斧は弾き返されたのだ。
樋口壬生「な!?」
坂縞樹「おらよ!!」
丸腰の状態に思い切り蹴りを一発。樋口壬生は二階へと上る階段を転がり落ちる。
榎宮愷「もう一階いくしかないみたいだね。」
坂縞樹「勝つにはそうしないといけないからな。」
榎宮愷「じゃあ行こうか。」
敵が何人潜んでいるかもわからない。俺が他の参加者を殺すことでまた頭の中がおかしくなるかもしれない。でも、もうやると決めてるんだ。あの頃から。
才原清一「ちょっと待てよ。」
榎宮愷「…え?」
才原清一「お前を倒す絶好の機会を狙っていたからずっと隠れていたんだが、わざわざ戦場に行くと言われたは口を出さずにはいられない。俺がやり損ねたらどうするんだ?」
坂縞樹「誰だお前?」
才原清一「才原清一お前なら知ってるんじゃないか。榎宮愷。」
榎宮愷「才…原?」
もしかしてお前
才原清一「私の兄がお世話になりました。榎宮センパイ」
ゲーム開始から2日と一時間
残り参加者434人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




