第17話 考えすぎ
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
花城如音「よいしょっと」
嵯峨野健児、桐生亜衣、花城如音の三人は地下に落とされた場所から、ホテルの一階地点へと這い昇る。
桐生亜衣「えっとーー花城さん、あの男は放置でいいんですか?」
花城如音「あーあの巨漢か。わざわざ倒すメリットもないし、しばらくは起き上がってこないだろう。」
嵯峨野健児「何で私たちを助けてくれたんですか?」
花城如音「ん?人を助けることがそんなに不思議なことか。」
嵯峨野健児「初対面の人間を無償で助けるなんて私にはできないですからね。特にこんなデスゲームのなかでは。」
そう。この幸奪戦争。たった二日で数百人もの参加者が失格となっている。どっちかしか選べないのならやられる側ではなくやる側にいたい。周りはみんな殺し合いをしているからそれに巻き込まれない、自分の身を守るために戦うしかない。みんな地獄行きとなった人間だ。自分の身が危険に晒されているときにはそういう考え方をする参加者がほとんどだろう。だから、すぐ殺し合いを始め、すぐ誰かが失格になる。そんな中で何の見返りも求めず、関わりもないライバルを助ける行動には疑心や疑問を抱かずにはいられないのだろう。
花城如音「特にお前らを利用するつもりもない。何か目的があるわけでも、あの巨漢に個人的な恨みがあったわけでもない。ただ、無駄な消滅を見たくないだけだ。」
嵯峨野健児「我殺さんからあなたのことを少しだけ聞きましたが、どうしても理解できない。誰も殺さない、誰も消えてほしくないってことですか?このデスゲームから生き残って地獄での生活を抜け出すには、他の参加者を蹴落として、自分の罪にさらに罪を重ねるしか方法はないんです。だから必然的に殺し合いが起きている。」
花城如音「このデスゲームのクリア条件が他の参加者を蹴落とすってわけじゃないだろ。」
嵯峨野健児「わかっていますよ!でも、この他の参加者と出会った瞬間、すぐ殺し合いが始まる状況を作った誰かのせいで、必然的に自分たちも生き残るためにその殺し合いに加担するしかないんです。さっきみたいに誰も殺さないという理想を捨てるしかないときだってあるんですよ。」
桐生亜衣「ねえ、ずっと気になっていたんだけどさ、その【他の参加者と出会った瞬間、すぐ殺し合いが始まる状況】を作るメリットって何?」
嵯峨野健児「その状況を作ることによって、ほぼ全員の参加者が殺意や攻撃意欲を持つようになる。一度その意識や意欲を持てば、必然的に参加者の減りは早くなる。」
花城如音「それはその状況を作った際に起きることで、それがメリットであるわけじゃないだろ。」
嵯峨野健児「でも、参加者が減るという事象にメリットがあるはずです。でないと、この状況を作る意味がない。改めて考えると、何で参加者が減ってほしいんだ?」
桐生亜衣「福山グループもクラッシャーを使って参加者を一掃しようとしてたよね。」
嵯峨野健児「福山グループの中にその状況を作ったやつが紛れている可能性は高そうですが、エスケープがいないから探りようが…」
花城如音「ん?エスケープが必要なのか?」
嵯峨野健児「ん?えぇ、まあ。」
花城如音「なら、今このホテルn…」
花村祈「いいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
嵯峨野・桐生「!?!?」
奇声を上げながら自分たちの方へと向かってくる変人の襲来に初対面の二人はドン引き型の恐怖で感情が埋め尽くされる。
花村祈「花城さん!!ナイフ!!ナイフペロペロ男が!」
そう叫びながら、花城如音の背後へとしがみつく。
花城如音「はあ?何だそいつ。」
下山沙智「誰がナイフペロペロ男だ!!ナイフに唾液を染み込ませることによって、ナイフの切れ味をよくしているんだよ!!」
花村祈が逃げてきた方向から、ナイフペロペロ男という言葉にぶちギレている器が小さそうな男がこちら側に迫ってくる。
花村祈「特に科学的な根拠ないくせに…」
下山沙智「どうやら俺にしばかれたいらしいな…」
花村祈「ひっ!」
下山沙智「サード!」
その叫びに呼応し、ナイフが三本投影される。
下山沙智「死ねー!!!」
投影された三本のナイフの内、二本は下山沙智の両手に。もう一本は空中に投影されていた。下山沙智は両手にある二本のナイフを花村祈、つまり、花城如音をも巻き添えにしようと狙いを定めてダーツのように投げる。これを高速で行い、手に何かを持てる状態を作る。そして空中に投影されていたナイフを地につく前にキャッチし、またも花城如音の元へと狙い投げる。しかし、
下山沙智「!?」
花城如音へと向けられた三本のナイフ。うち二本は同時に投げられ、それを同時に対処は困難。仮にそれを対処できたとしても、時間差で投げられてきたもう一本のナイフの対応は不可能といっていい。二本のナイフを対処した際にほぼ必ず隙が生じるからだ。普通の人間ならば。
花城如音「よし。気絶しろ。」
下山沙智「え…」
花城如音はいつの間にか下山沙智の背後へと移動し、グーの形にした手の甲で下山沙智の顔面を思い切り殴る。
その衝撃で下山沙智は吹っ飛び、花城如音の命令通り気絶した。
嵯峨野・桐生「……」
(何この人たち、怖い…)
花城如音「さてと、お前らエスケープを探してたんだよな。」
嵯峨野健児「え、えぇ、まぁ。」
花城如音「この男。花村祈っていうんだが、こいつはエスケープだ。」
花村祈「え、あぁ、僕?」
桐生亜衣「それは本当?」
花城如音「武召喚数値がエスケープのそれだったからな。間違いないはずだ。」
桐生亜衣「花城さん、花村さん、私たちと協力関係を結んでくれませんか!?」
花城如音「別に俺は構わんが、君はいいのかい?」
嵯峨野健児「……正直、信用はできません。あなたの実力はとてもすばらしい。味方につけたら最高戦力でしょう。でも、裏切られたときのリスクが尋常じゃない。あなたのことを僕たちは何も知らない。何を企んでいるのかもわからない。」
花城如音「じゃあやめるか?」
嵯峨野健児「いえ、手のひら返しのような形になっているかもしれませんが、僕たちに協力してください。お願いします。」
花城如音「いいのか?裏切られたらかなりやばいんだろ?」
嵯峨野健児「ええ、だからあなたが裏切らないことを全力で信じます。デスゲームやらされてるんだ。もうなりふり構っていられない。」
花城如音「フッ、そうか。多分佐々木も了承するだろう。花村もいいよな?」
花村祈「はい!!もちろんです!!」
桐生亜衣「佐々木って誰?」
花村祈「佐々木さんは…」
坂縞樹「こいつのことか?」
佐々木浩二「なんかいっぱいいるね…」
榎宮愷「桐生!嵯峨野くん!」
桐生亜衣「愷くん!!樹くん!」
嵯峨野健児「我殺さんと飯島さん、あと肝田さんは?」
坂縞樹「我殺と飯島は強敵と対峙している。肝田が何をしているかは知らんな。」
嵯峨野健児「なら多分、もう裏切りましたね。」
榎宮・桐生「え?裏切り!?」
坂縞樹「やっぱか」
嵯峨野健児「私と斑目さんは我殺さんに勧誘されて仲間になったんですが、肝田さんは自ら仲間になりたいと志願してきたんです。」
坂縞樹「ホテルに戻るか、我殺たちを助けるかの議論の時、さらさら俺たちを止める気はなかったってことか。」
榎宮愷「そんな…」
榎宮愷(失格者だけじゃなくて裏切り者まで。そんなこと、許されていいわけ)
???(お前がいうな)
榎宮愷(え?)
榎宮愷の思考に異変が生じている。いや、異変というよりは誰かが思考に介入しているという表現が正しいだろう。
???(お前が斑目遅刃を殺した)
榎宮愷(いやいや、何いってるんだよ。俺が殺したわけ)
???(いいや。お前が殺した)
榎宮愷(そんなわけないだろ!!!)
桐生亜衣「愷くん?どうしたの?体調でも悪い?何か辛そうだけど??」
榎宮愷「あ、いやごめん。なんでもない。」
坂縞樹「……」
坂縞樹(榎宮愷。そういえば、こいつが戦っていたところから、あのバグスピードを持つ化け物が俺たちの元へと現れた。つまり、榎宮愷たちが戦っていた場所にあの化け物は居合わせていた。今、こうして榎宮愷がいるということはその化け物の攻撃を何とか免れたのだろう。なら、その難を逃れたあとから、俺と肝田と合流するまでの間、こいつは一体何をしていた…?
いや、さすがに考えすぎか)
ゲーム開始から二日
残り参加者458人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




