第14話 獄悪人
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
~40分前~
桐生亜衣「はぁー、食器洗い久々にやってるけど、やる意味あるのこれ~?」
独り言を誰かに話しかけるかのような声量で不満を垂れ流す。
桐生亜衣「斑目くんと嵯峨野くんは部屋にこもっちゃってるみたいだし。」
食器を一通り洗い終わり、キッチンペーバーを取り出し、水分を取り除き始める。
桐生亜衣「樹くんたち、大丈夫だよね、、」
幸奪戦争というデスゲームに参加した以上、自身やその協力者の身の危険は当然つきまとう。自分の意思で参加した以上、そこは覚悟している、、、したつもりだ。だが、自ら進んで消えたい、誰かに消えてほしいと願う人間は0に等しい。一日と少ししか同じ時間を過ごしていないが、このデスゲームという場においては仲間意識や消えてほしくないという切実な願いをもつのに十分な期間だ。桐生亜衣はもう祈ることしかできない。どうか、坂縞樹たちが帰ってきてくれるように。そして、我殺狂助が倒されるようにと。
嵯峨野健児「斑目さん、あの三人のこと、どう思いました?」
桐生亜衣が食器を洗っている厨房とは、遠く離れているホテルのスイートルームの一室で会話を行っている。
斑目遅刃「とくに、なにも。ただ、」
嵯峨野健児「ただ?」
斑目遅刃「えのみや、、がい、さん。あのひと、すごく、、ぶきみ。」
嵯峨野健児「不気味?」
斑目遅刃「なんか、いろんなものをあつめて、とりつくろっているみたいな。」
嵯峨野健児「偽善者ってことですか?」
斑目遅刃「ちがう。あのひと、とりつくろっているじかくが、、ない、ようにみえる、、」
嵯峨野健児「取り繕っている自覚がない、、」
この斑目遅刃という男、人を見る目は誰よりも優れている。
俺が我殺狂助についたのも斑目の判断によるものだからだ。
榎宮愷、確かに彼はなんというか、これといった特徴や個性を感じられない。
嵯峨野健児「彼は、いずれ私たちに危害を加える存在になるも思います?あいつみたいに。」
斑目遅刃「それは、わからない。あのひとは、じかくがないから、なにかおおきなきっかけがないかぎりは、あのままのなにもおこさないひとになるとおもう。」
嵯峨野健児「ふむ、なるほど。坂縞さんや桐生さんはどうです?」
斑目遅刃「桐生さんも、坂縞さんもしんようはしていいと思う。とくに、桐生さんは、ひとをうらぎるようなことはぜったいにしないとおもう。」
嵯峨野健児「わかりました。非常に参考になる意見でした。助かります。」
斑目遅刃「え?あぁ、うん。どう、いたしまして?」
突拍子もなく会話は終了し、嵯峨野健児は部屋の扉へと手をかける。
嵯峨野健児「あぁ、そうだ。斑目さん。」
斑目遅刃「ん?なに、、」
嵯峨野健児「【あれ】はもう付けてあるんですよね?」
斑目遅刃「うん。つけた。あれの出番はもうすぐ来ると思う。」
嵯峨野健児「これで少し希望が見えましたね。」
斑目遅刃「みえた、のかな??」
嵯峨野健児「戦力はもうちょい増やしたいですよね。あの三人がどこまで力になってくれるか分かりませんし。」
斑目遅刃「まぁね。でも、坂縞くんは、、」
「バリン!」突如その音がかすかにホテル内に響いた。
嵯峨野健児「何だ…?」
音からして恐らく窓ガラスが割れた音だろう窓ガラスが割れた理由は大体検討がつく。奇襲だ。ここはデスゲームなんだ。食糧や物資、拠点の確保ができるここを占拠しようと思うものがいても不思議じゃない。音の音量的に窓ガラスを割った人物は俺と斑目さんがいる場所とは反対方向。つまり桐生亜衣の近くにいる。
斑目遅刃「健児くん、、どうすればいい、、?」
斑目さんはエスケープほど戦闘力が欠けていないにしても、戦力としてはいまいちだ。かといって、斑目さんの特技をここで失うのはあまりにも惜しい。
嵯峨野健児「斑目さん。一旦、厨房とは反対方向に逃げるか隠れていてください。最悪の場合、私たちのことは見捨てても構いません。あなたなら計算や予測で我殺さんの位置はあらかた突き止められるでしょう。
斑目遅刃「わ、わかった!!」
嵯峨野健児「さてと、、」
ひとまず、厨房へと足を進める。敵が何人でどんな種性核を持った人間なのか、それは行って確かめるしかない。
水嶼恭賀「オマエ、ツヨ、イ?」
桐生亜衣「……」
ここの厨房は一階にある。その付近で爆音が鳴り響き、厨房を出ると、そこには入り口にあるガラス製のドアをわざわざ破壊し、人を探しているような素振りを見せた巨漢がいた。いや、人とというより、倒しがいのあるサンドバッグだろうか。
水嶼恭賀「トリアエズ、コ・ロ・ス」
桐生亜衣「やってみなよ。ファースト」
槍を投影させつつ、相手との距離を図る。あっちはまだ武召喚をしていない。他に味方はいなさそう。
水嶼恭賀「サード」
桐生亜衣「!?」
彼がサードと唱えた瞬間、その重量からは考えられないほどのスピードで距離を詰められ、その重量らしいパワーの拳で槍が破壊される。
桐生亜衣「くっ!セカンド!!」
距離を詰められたことを利用し、自身の両手に投影された槍を相手の両足に刺す。
水嶼恭賀「…イテェ」
桐生亜衣「おっと」
全く痛くなさそうな反応を無気力な声で呟き、その一応痛いらしい足でキックを繰り出す。そのキックを寸前のところでしゃがみこんで避ける。カウンターとしてキックを繰り出す際の状態にできた下半身の隙を狙いにかかる。
桐生亜衣「ごめん、おとなしくしてて。ツインサモン」
その槍で相手の右足にもう一度槍を刺す。力の限り押し込む。
桐生亜衣「んんんんんんん」
いくら押し込んでも倒れてくれない。私の力だと全然足りないのかな。
水嶼恭賀「イテェ。ウゼェ。」
嵯峨野健児「ファースト」
足を刺し押し込んでいる私を、殴ろうとしていた巨漢の拳の色が真紅に染め上げられる。
嵯峨野健児「フゥー。間に合った?みたいですね。」
桐生亜衣「健児くん、えっとーそれ何?」
嵯峨野健児の手には子供が使ってそうなおもちゃの水鉄砲?みたいなものが握られている。シャワーやじょうろのように銃口の数が無数にある。
嵯峨野健児「これ、斑目さんが作ってくれたんですよ。私の武召喚で投影させる武器を細かくカットして銃弾代わりにしているんです。」
桐生亜衣「使い捨ての武器ってこと?」
嵯峨野健児「ええ、まぁ遠距離攻撃ができる貴重な武器ですよ。まぁもっとも、、」
水嶼恭賀「イテェ。キメェ。ダルイ。」
嵯峨野健児「全然効いてなさそうですけど。」
斑目遅刃「はぁ、はぁ、はぁ、」
これは走り疲れたことによる息切れではない。自分の命の危険に不安や恐怖を隠せないだけの臆病者が一丁前に心拍数をセルフで上昇させているだけだ。どこかに隠れられる場所は。そのときだった。
ギィィィィィィ 。そんな音が背後に聞こえた。振り返ったら案の定だ。
才原清一「なぁ、そこのお前。【榎宮愷】ていう男知らないか?」
斑目遅刃「えのみや、、がい」
才原清一「ここにいたってのは掴んでんだよ。一通りここら辺まわった感じ、どこかいったみてえだけどな。」
斑目遅刃「あなた、、えのみやがいの、、なに?」
才原清一「それは教えられないな。」
斑目遅刃「じゃあ、えのみや、がい、、ってどんな人?」
才原清一「え?あーー。言っていいのかなー?まぁ殺すしいいか。あいつはな、、
彼の発言に思わず言葉を失った。「あいつはな、、」そのあとに続いた言葉があまりにも信じられなかったからだ。いや、信じたくなかったのだ。でも信じてしまった。根拠も証拠もない中、なぜかその言葉が嘘に聞こえなかった。我殺さんが榎宮愷を気にかける理由が少しわかった。
斑目遅刃「くっ!!」
才原清一「ちっ、おい!逃げんな!!」
どこに出口があったのか、そんなもん大して覚えていないが直感だけを頼りに外へ出ようとした。我殺さんにこれだけは伝えないといけない。我殺さんの場所はある程度の予想はつく。絶対に行かなければ。
斑目遅刃「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
走る。とにかく走る。ホテルの外へは出れた。追っ手はなんとか撒けたようだ。数十分ほど走り、自分が予想している我殺さんの位置付近へと進む。
斑目遅刃「はぁ、はぁ、我殺さん。まっててくださ、、、」
我殺さんがあの三人を連れてくるとき、彼は榎宮愷だけは絶対に信用するなと言われた。信用できる人物ではないなと自分も感じ取っていたが、我殺狂助の言葉はもっと深刻さをおびたものだったのかもしれない。早く伝えなければとそう駆け走っていた最中にやつは現れたのだ。一番逢いたくない人間が。今、俺の目の前にはある男が立っている。剣を右手に持ちながら。サイズも威力も一般的な剣だろう。そして我殺狂助という男が一番気にかけていた男である。
斑目遅刃「えのみや、さん」
榎宮愷「……」
斑目遅刃「はぁ、はあ、フィフスサモン」
榎宮愷「もういいか?」
そう言い出した瞬間、自分の武召喚数値を5も消費して投影した武器を軽々弾き飛ばされ、自分のからだが地面へとつく
榎宮愷「首を絞められたことはあるか?」
斑目遅刃「あ、かぁ、あ、、あの、、」
榎宮愷「ん?何だ?」
首を絞める力が少しだけ弱まり、かすかにだが声を出す余裕が生まれる。
斑目遅刃「さいはら、、っていうひと、、しってます?」
その質問に榎宮愷の表情が変わる。真顔だった表情が歪み出す。首を絞めていた手が離される。
榎宮愷「誰だ、そいつは?」
斑目遅刃「なまえは、、しらない、、です。とくちょうも、、話したのは、少しのあいだ、だけ。だから、、あまりおぼえて、いない」
榎宮愷「まさか我殺の他にもいるとは。」
斑目遅刃「あ、あ、」
榎宮愷「おい逃げんな」
斑目遅刃「ああああああぁぁぁぁぁ」
逃げようとした足に剣が突き刺さる。激痛が走る。
斑目遅刃「あなた、、本当に榎宮愷、です、か?」
おかしい。戦闘の姿勢は見せたにしても、ここまで殺意が向けられる道理はない。
榎宮愷「あぁ、だって俺…………………」
それに続く言葉を聞いてもう抵抗する気力を失った。
斑目遅刃「くっそ。たち悪すぎるだろ。」
まずいな。このままだと。飯島さん辺りが危ない。
斑目遅刃 失格
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




