第11話 自分
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
狩野下切戸「逃げられると思うな。」
花城如音「いくらなんでも早すぎるだろ。」
花城如音が二人を連れて、海の砂浜から離れ、近くにあったコンビニの中へと逃げ込んだ。砂煙で相手の視界を塞ぎ、足跡でバレないよう武召喚をからだ全体に使い、身体能力を飛躍的に上昇させ、文字通りひとっ飛びで近くのコンビニへとたどり着いた。砂煙で見えないはずだし、そもそもこんな早く居場所を特定されること自体おかしい。ただの勘か?
花城如音「ちっ、、ファースト!」
剣を投影し、その剣で商品棚を崩していく。
花城如音「おい!お前らはもう一人のやつに注意しながら逃げろ。」
花村祈「あの人もこう言ってますし、佐々木さん逃げますよ。」
限りないほどの小声でそうささやかれる。
佐々木浩二「逃げるにしても入り口は二人が戦っているだろ。それにもう一人の金髪が見当たらない。」
花村祈「なんとか隙を見て離れるしかないですね。」
佐々木浩二「そんな都合よく隙が生まれるのか?」
花村祈「じゃあどうすれば、、、」
レジの下で佐々木浩二と花村祈というやつらはただうずくまっていることしかできない。さっき「もう一人に注意しながら逃げろ」と言われたときに花城如音の視線はレジとは別の方向を向いていたため、幸い、狩野下切戸はレジの方に注意を向けていない。
花城如音「くっ、、」
まずいな。そこら辺のもの投げたり、商品棚を利用して死角を作ろうにも、上手くかわしてくる。何よりこいつはまだ武召喚をしていない。
狩野下切戸「やはり、貴君は手強い。私も少し本気を出そう
サードデバイド!」
狩野下切戸の【両手に双剣】が投影された刹那、花城如音の元へ襲いかかる。
花城如音「くっ、、!!」
やはり早い。俺がさっき武召喚で身体能力を底上げしたように、こいつも同じことをしているのか、、攻撃の速度も移動スピードも普通の人間じゃありえない。
狩野下切戸「私の武召喚はファーストだけで剣が二つ投影される。まぁ、その分威力も強度も下がるのだが、!」
二人の剣が交わりぶつかる。
狩野下切戸「私の身体能力を数値二つ分強化したため、さほど大したことではない!!」
こいつ今、3つ分の数値を使ったのか。なら、まだ対応できる。
花城如音「あっそ、だったらこれならどうだよ。ツインサモン!」
剣を弾き返して、隙ができた腹部を蹴飛ばし、コンビニの外へと押し退ける。狩野下切戸もまた、負けじと襲いかえす。お互い、一撃では倒せないと本能で理解していため、まず弱らせようと常に隙を探り合う。ただずっと剣と剣を交え続ける。間合いや隙をつくろうとひたすら剣を振り続け、相手も負けじと剣を振るう。その繰り返し。繰り返せば繰り返しほど二人の攻撃のスピードは次第に早くなっていく。
花村祈「佐々木さん、とりあえず出ますよ!!
佐々木浩二「今出て大丈夫なのか?」
花村祈「もういくしかないです!いきますよ!」
連れ去られてコンビニを出る。店を出たときに最初に見た光景は、二人が超次元の戦いを繰り広げているところだった。
その二人が戦っているところとは反対のところへと逃げる。
佐々木浩二「はぁ、はぁ、ねぇ!祈くん。」
花村祈「はい、何ですか。」
佐々木浩二「何であの人、あんな強いのに俺らを守ろうとしてくれているの?」
花村祈「そんなこと知るわけないでしょ。」
花城如音「はあぁぁぁ!!」
狩野下切戸「むっ、、」
ついに、双剣が剣がぶつかる衝撃に耐えられなくなりボロボロとくずがこぼれ落ち始める。狩野下切戸の首に剣が寸前で止まる。
花城如音「俺の勝ちだ。」
狩野下切戸「そうだな。ただ負けたのは私だけだ。」
木崎印「おらよ!!」
花城如音「!?」
不意打ちで心臓に刺さりそうになるところをギリギリで
空突きさせる。
木崎印「ちっ!!!」
こいつ、いつから俺の後ろにいた?この辺りに隠れられる場所はほとんどない。まぁいい。厄介な奴は処理できた。あとは、、
花城如音「フォースデバイド」
剣を一つ投影するのに一つ、自信の身体能力をあげるのに三つ数値を使った。武召喚数値で身体能力を底上げすぎると体がその負担に耐えられず、逆に相手に倒す好機を与えてしまう恐れがあるが、、
花城如音「俺は誰も倒す気なんかないんだ。じゃあな。」
木崎印「まて!」
花城如音が投影した一つの剣が木崎印の元へと投げられる。
それをはねよけたときには、もう花城如音の姿はなかった。
木崎印「剣ただの目眩ましってことかよ。狩野下さん、何で見逃したんですか?」
狩野下切戸「私は正々堂々戦うことをモットーにしている。君みたいに背後を刀で刺そうとはしない。」
木崎はなにも言わずただ、そっぽを向く。
狩野下切戸「サードデバイドまでしたのに、ファーストだけで私をあそこまで追い詰めた。私は彼に敗けたのだよ。敗者は勝者にたてつく権利はない。」
木崎印「あなたが負ける、、ねぇ、、」
狩野下切戸「まぁ君には理解できないだろうね。」
木崎印「多分誰にも理解できないですよ。」
狩野下切戸「そうか?まぁ標的は見失ったことだし、今日の宿でも探すか。」
木崎印「こんなとこにはないですよ。移動しましょう。」
佐々木浩二「はぁ、はあ、」
逃げた。とにかく逃げた。ひたすらひたすら逃げた!!!
花村祈「はぁ、はぁ、あの人大丈夫ですかね?」
佐々木浩二「たぶん、だいじょうぶ、、と信じよう。」
息切れしながら心配していたときだった。風を切ったような音がし、とてつもなく大きい衝撃音がした。
佐々木浩二「な、何だ?」
花城如音「何だとは失礼だな。」
失格にならずにいきている。あの二人を相手に。
花村・佐々木「あ、アニキィィィィィィーー!!」
なぜだろう。とっさにこの言葉がでた。しかも祈くんと同じタイミングで。二人で土下座し、敬服する。彼の反応は
花城如音「………」
無反応だ。
坂縞樹「その我殺狂助というやつとは戦ったことがあるのか?」
我殺狂助「あぁ、一度な。俺が最初に目を覚ましたとき、近くに我殺と飯島がいたんだ。」
飯島聡「私とは戦闘にならなかったのですが、我殺さんと花城さんとで戦闘になってしまって、、」
桐生亜衣「何で飯島さんとは戦おうとしなかったの?」
我殺狂助「女と戦う趣味はない。それに本能的に花城如音という男に危機感を覚えたんだ。」
坂縞樹「手も足も出ず負けたのか?」
我殺狂助「いや、たしょうは、、」
飯島聡「はい!手も足もでず、ましてや我殺さんはツインサモンまでしていたにもかかわらず、ファーストもしていない花城さんにボッコボコにされていました。」
今までの鬱憤を晴らすかのように、我殺のメンタルをへし折っていく。我殺狂助になんの恨みがあるんだ、、
我殺狂助「…お前、、人の心ない。。。」
さすがに不憫だな。でもそんな人と戦って失格になっていないってことは、、
飯島聡「ですが、それほど気にかける必要はないと思います。彼は味方側とはいえませんが敵でもありません。」
桐生亜衣「?どういうこと??」
飯島聡「彼と私が花城さんに遭遇して、今ここにいるということは私たちは花城さんに見逃してもらえたいうことです。」
榎宮愷「殺意を向けられていたのに見逃したってことは、」
飯島聡「はい。彼は誰も殺さずにこの幸奪戦争を勝ち残ろうとしているのです。」
我殺狂助「弱いやつがそれをモットーにしていても、ただ甘いだけの人間だが、素であそこまで強いならそれを貫き通すことができるかもしれないしな。花城如音は失格にならないために、他の参加者を消すようなことはしない。だから気にかけることではないだろう。」
坂縞樹「まぁ、そもそもそいつと遭遇するかも分からないし、頭の片隅に入れておく程度で十分かもな。」
桐生亜衣「そうだね。」
我殺狂助「よし!まぁ他にも聞きたいことは山ほどあるだろうが、とりあえずお前らを助けた理由と協力してほしいことは伝えたつもりだ。」
坂縞樹「助けたから、福山グループを潰すのを手伝えってことだろ。」
我殺狂助「そう。ただ、他にも知りたいことはあるだろう。それを知りたかったら、、」
飯島聡「働いてもらいます。」
榎宮・桐生・坂縞「…え?」
飯島聡「このリアータホテル、ホテルなだけあるので結構広いんですよ。だから掃除しきれていない場所とか物資の管理とかもまだできていなくて。」
我殺狂助「とりあえず、掃除からやってもらう。探検はしたんだろう。坂縞は二人に案内してもらえ。」
榎宮愷「桐生、、このホテル探検しようって言ったのて、」
桐生亜衣「飯島さんにこのホテル少し探検してみてはいかがですか?って勧められたから、、」
我殺狂助「地獄でもやってたろブラック労働」
その後俺たち三人は途中休憩は多少もらえたにしても、8時間ほど掃除や食品の整理などをさせられた。
榎宮愷「はぁーーー疲れた。」
坂縞樹「ニートになりたいっていう人の気持ちが少しだけ分かったかもしれん。」
桐生亜衣「二人とも、随分お疲れだね。」
榎宮愷「桐生は何でそんな元気なんだよ。」
桐生亜衣「私、中学も高校も運動部だったからさ、体力には自信があるんだよね。」
榎宮愷「俺はずっと帰宅部だったな、、」
坂縞樹「お前、今いくつだ?」
榎宮愷「19。大学2年のときに亡くなった。」
坂縞樹「お前授業さぼりまくってそう。」
榎宮愷「ぎくっ!二人はどうなんだよ。」
坂縞樹「俺、首席で卒業したから。」
桐生亜衣「私は大学いってないー。」
榎宮愷「いろいろずるいだろ。お前ら。」
気のせいか?桐生がずっと何か言いたそうにしている。
榎宮愷「桐生、何か俺たちに話したいことあるのか?」
桐生亜衣「え?あっ!えっと、、、ねえ、私が地獄に来た理由聞いてくれる?」
何か怯えているような、不安そうな声でそう聞かれる。
坂縞樹「好きにすればいいが、俺は話さないぞ。」
榎宮愷「俺も、聞くだけでいいなら、」
桐生亜衣「ありがとう。私、高校卒業した後さ、どうしても料理人になりたくって、ある友達と一緒に料理の専門学校行ったの。その専門学校さ、いい成績とると、本格的なお店で修行をさせてもらえるの。その修行できるお店はいくつかあって選べるんだけど、そのなかに子供の頃からすごい憧れてたお店があったから、友達と一緒に頑張ってたの。けどあるとき、学校でいう実力テストみたいなとても大事な試験があって、それ次第で修行に行けるかかなり左右されるんだけど、私はその試験風邪で休んだの。」
榎宮愷「その場合、成績とかってどうなるんだ?」
桐生亜衣「私だけ別日に延期。成績はまぁ影響はないんだけど、採点する人が変わっちゃったんだよね。私が試験を受けたときのお題はグラタン。一生懸命作って最高のグラタンができたんだけどさ。そのグラタン食べた試験官の人倒れたんだ。」
榎宮愷「え?何で?」
坂縞樹「…食物アレルギーか?」
桐生亜衣「うん。試験官はナッツ類のアレルギーを持っていたの。試験のとき、食材や調味料は学校側が用意してくれるんだけど、何か追加で入れたいものがあれば申請して持参することができるの。」
坂縞樹「だとしても、ナッツ類は申請するときに許可されることはないだろ。」
桐生亜衣「そう、でもね、試験のときにこっそり持ってきた人がいるの。私ともう一人同じ日程で試験を受けた人。私の友達だった人。私はその子にはめられた。どうやって入れたのかは分からないけど、多分試験官側にもグルがいるんだと思う。結果的に私はナッツをグラタンに混ぜた犯人に仕立て上げられ退学処分を食らった。
榎宮愷「その後、どうしたの?」
桐生亜衣「私をはめた真犯人の利き手を切り落とした。もう二度と調理器具を握れないようにするために。そのときの私さ、笑ってたんだ。これでいいんだ。これが正しい形だ。こうなって当然だ。自分が間違っていると思えなかった。」
桐生の友達「いたい、いたい、やめてよ!」
桐生亜衣「何で?こうなっても仕方ないことをあんたはしたんじゃん。」
桐生の友達「そうよ。確かに私があんたをはめたわよ。だから何だっていうの。しょうがないじゃない。あんただけずっと成績が良くて、試験官もあんたを修行に推薦しようとしてたんだから。私はただ自分が幸せになるために必要な行動をしただけよ!!」
桐生亜衣「うん、、別にもう気にしてないよ。でも、私も自分が少しでも幸せになれるために必要な行動をとるね。」
桐生の友達「ちょっと、やめてよ、、その包丁とピーラーでどうする気、、ちょっと、、いや、、いやーー!!!」
桐生亜衣「最近やっとわかってきたの。こんなのなにも正しくないって。私は確かに被害者だった。でも、友達を傷つけたになった今、被害者面することはできないって。自分の怒りや憎しみだけで動いても意味がないんだって。だからお願い二人とも。私が暴走したときは必ずどちらかが私を止めて。状況次第では倒してもいい。私はこんなところでも自分を怒りや憎しみに支配される人間になりたくない。私は消えるときは自分が本当の自分であった状態で消えたいの。」
榎宮愷「自分、、」
俺はなんで地獄に来たのかを覚えていない。現界での記憶も曖昧。俺の本当の自分って何だ、、、俺は一体何がしたいんだ、、
坂縞樹「くだらないな。」
桐生亜衣「えーひどーい。結構真面目に話したのにー。」
いつものおちゃらけた、明るいテンションに戻った。
坂縞樹「何があったのかは俺には関係ない。今のお前がどうなのか、俺はそれだけを判断する。」
桐生亜衣「うーわ、ないわーー。真剣に話したんだけどなーー。だからモテないんだよ。ベーー。」
不貞腐れながら坂縞に対してあっかんべーをしている
坂縞樹「腹へったなー。何か作ってくれよ。」
桐生亜衣「…え?」
坂縞樹「料理、得意なんだろ。調理器具や食材も結構揃っているようだし。」
桐生亜衣「へへっ、しょうがないなー。何か作ってあげるよ。お代は出世払いでいいよ。」
坂縞樹「榎宮は出世しないからただ飯になるだろ。」
榎宮愷「坂縞くん!?」
桐生亜衣「フフ、はいはい作ってあげるから待ってて」
榎宮愷「苦手なものもアレルギーもないから、好きなもの作っちゃってーー。」
厨房へと向かっていく桐生に向かって自分が出せる限界の声でそう叫んだ。
桐生亜衣「はぁーぁ、全く、冥界では空腹っていう概念はないのにあの人は何言ってんだが。」
さてと、あの二人は何が好きかなーー。勝手な想像を膨らませながら食材に手を施し始めた。
ゲーム開始から一日と16時間
残り参加者 500人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。8話のあとがきで9話と10話は早めに投稿しますみたいことをいいましたが、早速約束を破りました。ごめんなさいーー。今回頑張って、
6000字かいたので勘弁してください。テスト週間だから時間とれなかったんですぅ。12話は早めに投稿する(多分、おそらく、きっと)のでこれからもお願い致します。




