勝敗
「カルマ、お疲れ」
「あぁ、疲れたよ」
久しぶりに(5日ぶり)に会う2人。
「勝敗は?カメラで見てたけど分からなかった。」
リリアーナは5日間外に出ていないのだ。
「あぁ、一応勝ったよ」
「一応?」
リリアーナはカルマの言葉が引っかかった。
「また、1ヶ月後起こってしまうかもしれない。」
「魔人族側もやる気ね」
リリアーナは納得した。なぜなら前線に行く前に姿の見えないヤツに殺されまくって元々プライドがあるのにプラスaでズタボロにされたらまたやってくるに違いない。
「そういえば予知能力で今回の戦争で見たことない魔物がでてきたな。それが次のやつなのかも。」
「日付は分かるか?」
「近づけば分かる」
リリアーナの魔法も特殊で分かる時と分からないときがある。例えばカルマが来るのは知っていたが日付は分からないというとき。リリアーナの魔法はまだ完成形ではないのだ。
「そうかじゃあその時は頼む」
「了解」
そして二人はどうやって戦ったのかを話した。一日中ずっと。そんな時、話は変わり
「というかお前俺にキスしたろ理由を聞いたから別にいいが」
ギグっとリリアーナが固まった。
「薬入れないといけなかったのよ、毒が入っていたし魔法もそんな使いたくなかったから。しかも後少しでカルマ死んでたかもしれないんだから」
「まぁそれは世話になった。まぁリリアーナのほうがましか。雪乃にやられたら俺は一生落ち込む」
「カルマは意外と雪乃が苦手だからね(笑)」
そんな話をしているとノックをされた。
「どうぞ~」
「カルマ様、リリアーナ様旦那様が二人を呼んでいます」
二人とも使用人の言葉が分からずお互いの顔を見て首をかしげた。
だが呼び出しということでいかなければ行くしかなかった。
そして向かうと驚くべき光景があった。
「ここはどこだ⁉︎なぜ俺はここに?」
「誰か!なんでこんなことに…」
怒り狂っていたり、泣き崩れている人もいる。およそ30人が。見た目から10代で学生だろう。そして驚いたのだ。容姿が日本人だったのだから
「父上これはどうなっているのですか?」
カルマが冷静に答える。
「この国の人間とは思えないですけど、この方達は?」
カルマとリリアーナはなんとなく気づいていたが言わなかった。
「この方々は『転移者』だ。」
カルマの父は普通のことのようにいう。
「まさか、《転移魔法》を使ったのですか!?」
《転移魔法》とはアンナ帝国が出来上がって代々受け継がれている魔法であり、一度しか使えない魔法である。
「いきなりすぎます!」
カルマがキャルスを怒っている間リリアーナはある事を考えていた。
(アニメ的に考えて転移者の一人が主人公になるけどなんか私達も契約結婚あったりしてアニメの世界だったりしたらたくさん詰め込められたアニメね…こんなのが生きてた頃にあったらハマっていたわ)
オタクなリリアーナ。
「仕方がないことだろ。魔人族の信仰が続いている中武士達の人手不足、けがなどで動けない者もいる。必要なことだ」
カルマは拳を握りしめながら反論しようとしたが反論できなかった。キャルスが言っていることは事実だったからだ。
「転生者の皆様のことはカルマ、リリアーナ。お前達に任せる」
(は?何言ってんだこの人転移魔法使ったの自分なんだから自分がやれよ)
とカルマとリリアーナ(特にリリアーナ)は思ったが口には出さなかった。
「皆様こちらに来てくれませんか?戸惑っていると思いますが、まずはお話ししたいのです。」
リリアーナは微笑みながらそう話し、応接室に案内した。その笑顔で顔が赤くなったものが何人かいたが。
「まず、王に変わって謝罪いたします。私達の勝手な事情で貴方方をこの世界に呼んでしまい誠に申し訳ございませんでした。」
リリアーナがいうとカルマも同時に頭を下げた。
「あ、いえ。頭を上げてください。元々あなた達は知らなかったんですよね?だったら仕方ないことですし」
一人の女子がそう言うとリリアーナとカルマは顔を上げた。
「まず、あなた方は地球から来たと言うことで間違いないでしょうか?」
「え?はい。そうですけど、なんで知っているのですか?」
「これはここだけの話なのですが…」
リリアーナとカルマは口を揃えていった。
「「私達は《転生者》なのです」」
「…」
「「「「「え〜⁉︎」」」」」
クラスの人達はドン引きだ。そりゃあそうだろう、アニメにしかないと思っていたことが起きてしまったのだから。
「まあ、それは置いとくとして今日中にあなた達の魔法能力を知りたいんです。」
「魔法能力ですか?」
「えぇ。そのためにあなた方の額を触らせてください。」
「カルマ、できる?」
「あいにくだがあと5分でここを出て兵士と話さなければいけない。」
カルマも一応次期王だ。仕事がないように見えて現実逃避したいほどあるのだ。
「できる範囲でいいから」
そしてリリアーナとカルマは確認を始めた。実はステータスプレートがあるのでもういいのだが、もう一つ理由があった。応接室に行く時、カルマとリリアーナは話していたのだ。人の過去や現在の〃記憶〃をみて地球の情報を得て今後の方針や魔法に役立つと思うからと。これはリリアーナが考えたものでカルマはそれを聞きながら、考え方が人じゃないと思った。リリアーナが怒ると思って口に出さなかったが。
「じゃあ、俺はここで」
「分かった。頑張って」
もう契約結婚だと忘れてしまいそうになる夫婦感だ。
「皆さんご協力ありがとうございました。ステータスプレートがあります。一人一人渡しますので待ってください。それと私のことは外では話さないでください。私はこの国にいないことになっているので」
「え?どうして?」
一人の女子生徒が質問する。
「少々事情がありまして…」
少し言葉を濁すリリアーナ
「では皆さん、着替えて食事にしましょう!戸惑っている時こそご飯を食べた方が意外とすっきりするものですよ」
リリアーナは微笑んだ。本当は申し訳ないと思いながら。