夏季休暇は楽しい
「夏季休暇に入る。宿題はないがこの学校は夏休み以降クラスがまた変わる。学力、魔法能力でな。Sクラスに残りたければ鍛錬を怠るな!」
『はい!』
7月の末、期末テストが終わり、夏季休暇が始まる。
「宿題ないって変な感じがするな」
「この国…っていうかこの世界がまず夏季休暇は家族優先みたいな感じでほとんど宿題ないのよ。」
「家族優先は外国に似てるな?」
「まぁ、そうね」
北斗とリリアーナはオリカの家にいた。寮暮らしの北斗だが、夏季休暇は寮に居られないので、オリカの家に滞在する事になっている。
「あ、準備しといてね。夏季休暇は暇だし、お金稼ぎたいし、レベル2の大迷宮行きたいし」
「いきなりだな!?」
レベル2の大迷宮攻略をサラッと言っちゃうリリアーナさん。カルマが予想していた通りだ。
「そういえばナルとハナは?寮暮らしでしょ?」
「あぁ、2人とも貴族だし夏季休暇は領地で何日か過ごすとか言ってたな。あ、あと今度ナルと出かけてくるわ。」
「え!?まさかのデート!?」
リリアーナさん甥っ子の恋愛事情には絶対に首を突っ込みたいらしい。ちなみにカルマやハルキもそうらしい。似たもの夫婦と義兄弟だ。
「お世話になってるし、誕生日がもうすぐって言ったらじゃあご飯行きませんか?ってさ」
「良かったね〜」
「何がだよ」
「あら?嬉しいが滲み出ているわよ?優斗にそっくり」
「最近リリは俺の感情を読み取れると思ってるよ」
「優斗にそっくりで顔に出るからね〜」
「こういうところは父さんには似たくなかった!母さんに揶揄われる!」
ケラケラ笑いながら優しそうに笑うリリアーナ。まるで家族のようだ。そしてリリアーナは知ってしまった。北斗の母、華が夫と息子を揶揄っていることを!リリアーナがあったら絶対にありがとうって言わなきゃ!と心に決めてしまった。実はリリアーナも揶揄い好きなのだ。
「さてと、そろそろ私は帰るわ。今日はカルマも早く帰ってくるだろうし」
「なんでわかるんだ?」
「大迷宮攻略が今日はないのよ」
「なるほど…どんな感じだ?大迷宮攻略は?」
「全然進んでないわね…1日に1階層の二分の一しかできてなくてまだ60層らしいわ。しかもカルマが危ないと判断した場合ブレスレッドを使ってね」
「それは…やばいな」
「そうね〜結界師の天職の子が3人はいるから早く進んで欲しいんだけど…」
「これで無理だと100層のボスは倒せそうにないな」
「えぇ、というかチームワークができてなさそうなのよ。一人一人が足を引っ張ってるみたいな…」
「なるほど…魔人族には勝てないな。今は。というかSクラスの奴らより弱くね?あいつらなら4ヶ月もあれば90層クラスまで行けそうだが」
「そうね〜…そうよ!その手があったわ!」
北斗は思った。やべっ余計なこと言った、と。
「彼らもレベル2のところに連れていっちゃいましょう!」
「お前正気か!?アーナやハルキ、カレンさんならともかく!」
「ナルが心配と…」
「っ…」
リリアーナさん大当たり。そしてニヤニヤし始める始末。可哀想な北斗。穴に入りたいような顔をしている。おそらく初めて恋をした女の子にあんな危なすぎる場所には連れたくないのだろう。リリアーナは全然思ってなさそうだが。というか、夏季休暇のうちに練習しとけばSクラスなら魔人殺せるんじゃない?というくらいレベルが高いので、魔人と同等な力を持つ魔物と戦えるとってもいい場所なのだ。いい場所と言っているところでまずリリアーナが化け物レベルということがわかる。
「まぁ、流石にしないわよ。レベル2は元々カルマと2人だと思ってたけど北斗もいるし、アーナも連れて行く予定だから」
「アーナも?」
「えぇ、あの子「お姉様だけ魔人倒すなんて酷い!私も戦いたい!」って言ってたからちょうどいいかなって」
「お前は全く…」
なんで異世界召喚されてこいつと出逢っちゃったかな〜と今更だが思っちゃう北斗。
「まぁ、ナルとデートしてからね。魔物がりも大迷宮も」
「そうだな」
…そして、1週間が経った頃
「ホクトくん!」
「ナル!」
久しぶりの私服で会う2人。ジ〜っと見つめ合うこと数十秒。
「似合ってるな…」
「いえ、ホクトくんこそ…」
((何これめっちゃ恥ずかしい!!))
2人とも心の中で思いながらお互いを見て苦笑する。
「行こうか」
「はい!」
そして色々周り、カフェで休憩した。
「ホクトくん、これ…誕生日プレゼントです」
「あ、ありがとう…」
北斗は誕生日プレゼントを同世代の女の子からもらうのは初めてなのでとても嬉しく、恥ずかしかった。
「これっ!」
「あ、あの最初に会った時、ギルドの前で欲しそうにしてたので…」
紙袋に入っていたのは紺のカーディガンだった。北斗は夏季休暇で魔物狩りで稼いだら買おうと思っていたカーディガンだ。服をカルマから借りたりしていたので自分専用のが欲しかったのだ。
「よく見てたな…買おうと思ってたし、ありがとう」
「良かったです…」
リリアーナがいたらなんと初々しい!ということだろう。尾行したかったようだが、カルマにバレて止められた。カルマは妻を監視しているのだ!危ないことをされないように!あと、リリアーナが何かしないように…
「ナル…これ誘ってくれたお礼」
「ありがとうございます!開けていいですか?」
こくりと北斗が頷くと、紙袋の中に入っていたケースを開く。
「髪ゴムとピン?それに付与も…」
「よく気づいたね。錬成して作ったんだ。何がいいかなって思って、知り合いに聞いたんだ。そしたらアクセサリーで何か付与されたものがいいって言われて…ナル、髪長いし付けると綺麗になるやつがいいかなって。下ろす時もあるだろうからピンにも付与したんだけど…」
何をあげればいいのか分からず聞いたのは王城で集まった女性陣だった。男性陣もいたのでそれはもう酷いくらい揶揄われた。それも何時間も。近くにいた使用人が止めるくらいに…
「ありがとうございます!髪の毛には色々困っていたので…嬉しいです」
「良かった…」
そしてナルと北斗は夕方まで歩いたり、たまに休憩し仲良くデートした。
「また、遊ぼうな。後、これリリからの手紙。それと、魔物狩りをリリアーナがしない?って誘いが来てるから考えといて。あいつ、無茶振りしてくるから危ないから来ない方がいいと思うんだけど…」
「いいえ!行きます!ホクトくんにはお世話になりましたし、攻撃魔法を鍛えたいんです。リリアーナさんのおかげで治癒魔法とか魔力探知とかはできますけど…」
「そっか、でも危ないと思ったらちゃんと言ってね。」
「はい!」
実はナル、治癒魔法はリリアーナよりは全然だが恐らく世界でトップクラスに当たるくらいの技量を持っているのだ。それはリリアーナが医療知識というか前世で学校で習ったことをナルにも教えたからだ。ナルは後方支援では恐らくトップクラスだろう。ナルは全然思っていないようだが。
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後日…
「デートは成功かしら?」
「…おう」
ニヤニヤするリリアーナ。オリカ達もいたのでそこにいたものは全てニヤニヤしている。鬱陶しいと思う北斗だが、この人達は何言っても絶対に変わらないだろうともう知っているので何も言わないことにした。
「またデートできるといいわね」
「…あぁ」
それから数日間ニヤニヤされる日々が続いたのだった。
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