キャルスの目的
「消される…?聞いてないぞ!?」
カルマは怒っていた。なぜ自分に相談してくれなかったのか怒りを覚えたからだ。
「言う機会をちゃんと設けようと思ってたんだけど…ごめん。それで主犯はあなたの父親のキャルス•アンナよ」
「な…父上が…?」
カルマは信じられないという気持ちだった。
「カルマには悪いけど、あの人結構やばいわよ。予知であなたと結婚すると知った私はアンナ帝国について調べたの。」
「お前、家出してたのって…」
「それは違うわ。魔物を狩りたくって少し家を出てただけよ。空飛んで」
「そうっすか…じゃあなんで知ってるんだ?」
お前何やってんだ?と思ったが今はそれどころではない。
「雪乃に調べさせたの。あの子すごいから」
雪乃。レベル3の大迷宮の守り人でありリリの妹(仮)だ。レベル3の守り人だったらリリアーナと同等…それ以上の力を持っていても不思議ではない。
「それで、いろいろ裏で揉み消してることを知ったけど…カルマはそんなことしてなかったから大丈夫だと思ったのよ」
「そうだったのか」
(リリって改めて思うとかなりやばいな。まるで魔王だ。敵に回さないようにしないと…)
ずっと聞いているだけの北斗だが、リリアーナの話を聞いてそう思った。
「そんな人が無能と言われている私をカルマの婚約者にする?」
「父上には何か考えていることがあるのか…?」
「その通り。そしてそれは…」
「カルテ王国を支配下に置き、いずれ自分のものにし帝国の領地にするつもりよ」
その場にいたほとんどの人は驚いた。驚いてないのは吸血鬼のアーナとアークレト王国の国王、キーナだけだ。
「じゃあそれがそろそろできる範囲になったから…」
「えぇ、人質になっている私はそろそろ消されるでしょうね。それももしかしたらカルマに…」
「「はぁ!?」」
カルマと北斗は叫んだ。さすが叔父と甥の関係だ。そして忘れかけているがここは王城。侍女が近くにいて、その侍女はカルマのことを知っているのでカルマの声を聞いて倒れかけていた。
「分からないの?王太子であり次期王であるカルマを脅せばすぐに了承せざる終えなくなる。そして私を始末した後あなたの本当の婚約者が来るでしょうね」
「じゃあ婚約パーティーは?嘘だったというのか?」
「そりゃあそうよ。私が疑わないようにやったカモフラージュよ。まぁカルマの妻になってからいろいろ手が打たれていたみたいだけどね」
リリアーナは遠目になった。相当のことをやらされたのだなとアークレト王国の知り合いは思った。
「たとえば?」
「う〜ん、ご飯に毎回風邪をひいたりする弱毒性のものだったり…部屋を覗かれてたり…あ、いやらしいことはされてないし、魔法で隠してたっぽいけど目を向けたらすぐに逃げたわ。後は…」
「もういい!お腹いっぱいだ!俺はなぜ気づかなかったんだ…?」
カルマは相当落ち込んでるようだ。リリアーナを守れなかったからだろう。
「仕方ないわよ。毒を入れられるのはカルマがいないお昼とかだし、部屋を覗かれるのもカルマがいない時だし、その部屋をのぞいたやつも相当のやり手だからね」
(部屋を覗かせるのは流石にやりすぎだし、リリに喧嘩売ったらやばいことになるけど…帝国大丈夫か?リリが本気出したら国が一瞬で無くなるぞ…?)
北斗は違うことで冷や汗をかいていた。
「なら、リリアーナ。うちの学院に入らないか?」
その事情を聞いたキーナが提案をした。
「学院?」
「あぁ、寮生活もできるし、あれだったらここに住めばいい」
「王城は流石に却下で」
そういうと、キーナ、ハルキ、カレン、アーナ、セリン、ナリン、オリカ、リク全員が残念という顔をした。
「それでどういう学園なの?」
「アークレト騎士養成大学校やアークレト経済大学校というものもあるが、リリに合うのは多分アークレト魔法大学校だろうな」
「ハルキとアーナも入るつもりだ。カレンも入ってるしな。試験もあるが昔から政治問題も論文も理解するリリアーナならすぐ合格できるだろう。あ、どうせなら北斗くんも入るかい?カルマくんは流石に無理だろうけど」
(リリ、お前勉学もできたのか…まぁ前世で頭良かったから当然か…)
カルマは昔のことを思い出し懐かしいと思いながらも大変だったなと感じ遠い目を見た。
「まぁ、ありがたい話だし、北斗も何かやらせたかったからちょうどいいけど私ちょっと良くないと思うけど」
「その点は私に任せろ。リリアーナの事を隠していたカルテ王国にはだいぶ前から怒りを覚えていたからちょうどいいし、アンナ帝国はカルマくんはいるが少々危ないからな。」
確かにそうだ。娘のように思う存在が隠されていたことに怒りを持つのは当然だし、娘を消されると聞いてそのままにする父親はいないだろう。
「ただ、問題があるな」
「そうだねぇ」
「ん?何?お爺様、お婆様?」
リリアーナは首を傾げた。
「アークレト魔法大学校に入るということは魔法の才能をキーナとかいう馬鹿げたやつに言わなければならんだろう?」
(一応、息子が目の前にいるんですが…)
カルマは心の中でため息をついた。
「あ〜そういえばそうだね。でも魔力で威圧すれば認めてくれるでしょ」
「威圧ってお前…!」
魔力の威圧は過多だが震えだし、もしその魔力が強すぎたら後遺症や精神的な苦しみが出てしまうこともある。魔力の威圧は魔物や犯罪者(暴行している際)などに使われるだけでほとんどの人間には使われていない。まず使ってもいけないと昔から言われているのだ。
「まぁ、そうじゃのう。手加減はしてやれよ。」
「分かってる。」
(やばい。こいつ、本当にヤベェよ…まぁその近くにいる人が原因だと思うけどな)
「まぁ、父上も犯罪を犯している。後遺症が出ないぐらいならいいだろう。」
「カルマ、いいの?結構尊敬してた気がするんだけど」
その通りだ。キャルスの政治のやり方には尊敬していた。
「政治のやり方が犯罪だと知った以上尊敬の「そ」の字も消えたさ。」
「じゃあおじさん、カルテ帝国のことよろしく…ってあ!」
「どうした?」
「私の苗字どうしよう?」
そういえばそうだ。リリは隠されていた身であるし、消されかけているアンナ帝国のアンナという苗字も使いずらい。かといってアークレトは絶対につけてはダメだ。なんせ権力で合格したと言われてしまう可能性があるからだ。王太子のハルキや王太子妃のカレンは昔から実力があることが認められているので何も言われないだろう。陰で言われている可能性もあるが。
「カルテでいいんじゃないか?」
「え?」
「旧名はカルテだし、隠されていた事実で少しは非難され可能性が高いが、お前の精神なら大丈夫だろう」
「ちょっと、一応妻なんだけど。ひどくない?」
「お前の大迷宮攻略や国王陛下の話し方を見ればそう思うだろ」
「まぁいいんだけどさ」
「その辺は私がどうにかしよう。リリアーナは魔法をアーナ国王に知らせることと試験勉強を進めろ。」
「分かった。北斗はそうね…王城かオリカ達の家かどっちがいい?」
「オリカ達の家で…」
(自分のこと忘れてた…)
リリアーナ達の話が凄すぎて自分が大迷宮でクラスメイトに裏切られたことも忘れていたのだ。
「じゃあ私達は一旦帰るわ。アークレト王国の学校に通うために」
リリアーナは嬉しそうだった。父のように思っているキーナの国でこの世界で初めて学校に通えることになったからだろう。
「北斗、頑張って…」
その瞬間リリアーナとカルマは帝国へ帰った。
「え?」
「じゃあ北斗、いっぱい対戦しましょうね!」
「なんならワシらも教えてあげようかのう」
「嫌だ〜〜!」
住み込むことになった初日からしごかれる北斗だった。
読んで頂きありがとうございました。よければ感想、誤字脱字よろしくお願いします。