過去と現在(リリアーナ・シーネ•カルテ)
数十年前…
リリアーナ・シーネ•カルテの前世、陽菜野舞美は読書好きでアニメ好きのオタクだった。小学生の頃、読書しかしない舞美は友達がいなかった。中学生にあがると同じ趣味の人間を見つけ友達?みたいな子ができた。高校生は同じ趣味を持った人もいなく、陽キャばっかで苦痛の日々を送った。大学生、初めて好きな人ができ、付き合った。愚痴を言ったりすべてを明かせる唯一の存在だった。ずっと一緒にいた。あの時まで。2人は同じ場所で同じ時に死んだ。リリアーナはいつも願っている。彼だけはちゃんと安らかに眠っていてほしいと。
そして生まれ変わり、リリアーナとなった舞美が5歳の頃だった。リリアーナは不思議に思っていたことがあった。
「父上様〜、リリアーナはなぜ門を通してくれないのですか?」
「決まっているだろ。お前は王の娘なんだぞ」
「で、でもお兄ちゃんたちはいつも出入りしてます!」
そう。リリアーナには1歳離れた従兄弟がいた。その彼は出入りできていたのだ。そしてリリアーナの父は溜息をつき、じっとリリアーナを見た。
「お前はレベルが低い。魔法のレベルが低いのだ!」
「それで…私を出さないのですか?」
「あぁ、そうだ。王の娘が魔法レベルが10など引かれるだろう」
魔法レベルは一生変わらず、レベル10は平民が持っている力であって、武士などは70超えまでいる。レベル10でも平民の中だとすごいのだがリリアーナの父は気に食わない。なぜなら彼はレベル91ととてつもない魔法レベルの持ち主だからだ。娘にも引き継ぐと予想していたがそれは不可能だった。
「世間にもお前のことは知られていない。知っているのはごく一部の人間だけ」
「これはお前を守る手段でもある。もし魔法が庶民レベルだと分かったら襲いかかってくる可能性もあるだろう。そういうことだ。分かったな」
そしてリリアーナはコクリと頷きそこから数カ月ずっと父の言うことを守り生きていた。だが、その数カ月後ある者がきた。
「リリアーナ」
「お姉さんだーれ?」
ボール遊びをしていたリリアーナが振り返った。
「それはいえない。けどこれだけは知っていて、’あなた達”しか救えないの」
美人な女性。神様はこのようなものなのかとぽかんとしていたが、この時、前世の記憶が戻ったのだ。陽菜野舞美の記憶が。そして迷った末、リリアーナはこう答えた。
「分かった。救うわ。そして守るわ。この世界達を」
そしてリリアーナは魔法を作りに作った。バレないように、リリアーナはここ数十年で97個の魔法を作った。魔法の作り方は美人な女性にキスされた際、脳内に魔法の作り方を覚えさせたらしく、次はこうしなければいけないなどがすぐわかる。意外とやることがすぐに分かるためありがたいとリリアーナは思ってたりする。
「さて、何をしようかしら」
魔法を作る時間が終わるとやることがない。リリアーナは普通だったらもうすぐ18歳になるただの高校生だ。普通の知識ぐらい持っているし、魔法の知識も研究者と同じくらい腐るほどある。そんな時、リリアーナはキャルルを作り、一緒に遊んだ。キャルルは自分がどういう存在なのかもすぐわかり、魔法の手伝いもするいわばリリアーナにとってペットというよりかは弟子のような存在になっていた。
『リリアーナ様、魔法がバレたらどうするの?』
キャルルはたまに怖い質問をする。
「そうね〜、洗脳する魔法が私にとって一番強い魔法だけど、一応物を作り出す魔法もあるしバレて逃げたとしてもなんとかなると思うわ。知り合いは一応いるし」
『さすがリリアーナ様、僕だったら《皆殺し》なんて考えちゃうかも』
キャルルはたまに怖いことを言う。普通にサラッと口にするのがもっと怖い。
『リリアーナ様はずっとこの魔法を隠すの?』
「多分そうだと思う。強くなって今までずっと隠してたから」
言いたいけどいえない。魔法レベルが10から103になっているなど知られたら無理だからだ。ちなみにレベルはリリアーナ自身で調べた。
『いつか全部本当のことが言える日が来るといいね、リリアーナ様』
「そうね、でも今は神のこともキャルルと私だけの秘密ね」
『うん!リリアーナ様』
2人の仲は家族のようだった。
そして、18歳の誕生日を迎え、変わらずキャルルと魔法を作っていた。さらに予知能力が使えるようになったリリアーナはあることを知っていた。
「相変わらず国が傾いているわね。というか悪くなる一方よ」
『リリアーナ様、心配?』
「そうね、二度目の故郷でもあるし、父上も嫌いではないし」
そう。あんな言い方されたリリアーナだが意外と父上が嫌いではないのだ。その理由は魔法を作るのを邪魔しないからという悲しいものなのだが…
「こっちに火の粉が飛んでこないと良いけど」
その言葉はまんまと起こってしまった。予知を見てしまったのだ。
『リリアーナ様、なんか顔白いけど大丈夫?』
異変にすぐに気づくキャルル。
「名前は分からないけど男性が私の部屋に来るわ」
『え!父上じゃなくて?』
キャルルは驚いたが、リリアーナは放心状態で話すのもやっとと言う感じだった。
「えぇ、顔のいい背の高い男性よ」
『そっか~、でも悪者だったら僕が殺すから安心してね、リリアーナ様!』
「えぇ、ありがとう」
(やっぱり怖いわキャルルって)
と思ったリリアーナだが、さすがにキャルルの前ではいえない。というか言っちゃだめだ。
そして月日が経ち、男性のことも忘れ魔法レベルをどんどんあげていくリリアーナだった。そして男性が現れた。カルマという男だった。だが、彼は私と同じだった。飛行事故で亡くなり、ここの世界に転生し、生まれた。そしてあの美人な女性からお願いされたことも全く一緒。リリアーナは一瞬‘運命“だと感じてしまった。だが、運命だと思ったのも一瞬で…
「彼と婚約か…」
『大丈夫。僕がついてるから』
自信満々なキャルルだが、リリアーナは
(カルマの愚痴はキャルルには言わないようにしないと)
と感じたのだった。
「この世界達を守るのが私が生きているためのルールよ。守らないなんてことがあったら私は自動的に《殺される》」
『そうだね。でもリリアーナ様は約束守るでしょ。」
「えぇ。これからもよろしくねキャルル」
『もちろん!よろしく、リリアーナ様!』
そしてリリアーナは新しい道へ進むのだった。
読んで頂きありがとうございました。よければ感想、誤字脱字よろしくお願いします。
次はカルマ編です。