出会い
『あなたがこの世界にいるにはルールを守りなさい』
『ルール?』
小さな少女が首を傾げる
『えぇ、それは…』
13年後…
「リリアーナ様お食事をお持ちしました。」
「ありがとうございます」
とても広い部屋。1人でこの部屋に住むのは勿体無いくらいの部屋だ。そんなところに2人だけポツンと立っている。1人はメイド服を着た使用人。もう1人は普通の私服の少女だ。(私服と言っても高い服)
「あの、父上は、どうしていますか?」
「旦那様は現在2つ離れた国との交渉に行っています。」
「そう…」
なぜかお嬢様、リリアーナは不安げな顔をしている。
「また連絡があったら教えてください」
「かしこまりました。」
数少ない言葉。そしてドアがしまった。
「はぁ」
その直後リリアーナはため息をついた。
『リリアーナ様』
すると猫が出てきた。ごく普通の猫。グレーの毛でとても綺麗な毛並みだ。
「キャルル、もう出ていいわよ」
『リリアーナ様、今日もやるの?流石に最近やりすぎじゃない?』
「仕方ないのよ。2ヶ月後には完成させないといけないもの」
「キャルル手伝ってちょうだい」
仕方ないな、という顔をしたキャルルだったがすぐに準備を始めた。
《Fragment of Memory》
すると部屋から眩しい光が出た。リリアーナは汗をかいている。
『リリアーナ様、そろそろ』
「えぇ、疲れたわ」
そこでリリアーナはベッドに倒れた。
「でも今日は進歩があったわ。」
『それはよかったね、リリアーナ様』
倒れ込みながらも笑顔で話し合う。
「こんなことがバレたら国中どうなってしまうのかしら…」
『リリアーナ様!誰か、いつも来ている人と違う!』
「嘘でしょ⁉︎ここには特別な使用人か父しか入らないのに!」
リリアーナはとても急いでいた。もしかしたらと思ったからだ
《change 》
服を魔法で変えてすぐに起き上がった。
「リリアーナ」
(父上は交渉に行っていると言っていたけど嘘だったの?…)
とても困惑していたが、冷静に答える。
「父上、今日は?」
空気感が重い。
「お前に合わせたい奴がいる」
リリアーナは困惑している。するとある人影が見えた。少しリリアーナは目を見開いた。
「あの、失礼ですがどなたでしょうか?」
「カルマ・ターニ•アンナだ。お前の’婚約者”にあたる」
「え?」
リリアーナはさらに困惑し、硬直してしまった。だが、心なかではそんなに驚いていなかった。
「すまんな。リリアーナ。だが今、国が傾いている以上必要な結婚なんだ。」
リリアーナは国が傾いているのを聞いていなかった。だが、リリアーナの能力でそのくらいのものは知っていた。そしてカルマという男性も予知能力で見たことがあった。と言っても1、2年前のことだ。
「それでお前は、魔法が’使えない”らしいな」
びくりとリリアーナは肩を揺らした。
「えぇ、私は王女なのに魔法が使えません。なので私は国民に存在を知っていません。」
嘘だ。リリアーナは使える。でも知ってここにいるのはキャルルだけだ。それだけリリアーナは特殊な人間なのだ。
「俺は《脳を洗脳》する魔法が使える。それよりも攻撃魔法の方が得意だがな」
リリアーナが顔を少し光らせた。そして
「そうですか。ちょっといいですか?」
キャルルは止められなかった。リリアーナがカルマの額に手を当てたのだ。
「!」
リリアーナは驚き、声を出せないでいた。
「あなたは…魔法を作りますか?」
すると、隣にいた父もカルマも驚いた様子だった。
「お義父様、2人にさせていただけますか?」
勝手に父のことをお義父様と呼んでいたのがいらついたリリアーナはカルマを睨んだ。そして、父が出ていった直後リリアーナはカルマに額に手を当てられた。
「やはり、同じだったか」
「キャルル、出てきなさい」
『はい。リリアーナ様』
するとキャルルが出てきて驚いたのかカルマは口を噤む。
「あなたも私と同様最初から’この国の者’’ではないわね?」
「あぁ、ビンゴだな」
まさか同じ過去を持つ者がいることに少し嬉しく思ったリリアーナだが顔には出さない。
「このことは絶対に父に言わないで」
「お互い様だ」
そして少し気が楽になったリリアーナだが、カルマはリリアーナに興味津々だ。
「お前は今、どこらへんまで進んでいる?」
「まぁ、伝えてもいっか。キャルル」
『はい。』
するとキャルルからヒカリが放たれた。キャルルの魔力はリリアーナのものだ。そしてカルマが体勢を崩した。
「私が終わっているのはここまでよ」
「そうか。こっちはこの前ぐらいだな。というか同じ日本人なんだな。」
おそらく今こっちの記憶の一部をとれたのだろう。とリリアーナは確信した。
「あら、そっちも?」
リリアーナも元々手に入れていたので別に微動だにしなかった。
「もしかして…」
「「飛行事故」」
ハモった2人の声はとても暗いものだった。
「お前と俺はなぜこんなに共通点があるんだ?」
「さぁね、もしかしたら飛行事故の人間が’あの人”に出会ってしまったのかも…」
『リリアーナ様、この人に僕のこと話していい?』
可愛げのある声で言うキャルルだが、意外と腹黒かったりする。
「えぇ、いいわよ」
『はじめまして、カルマ様。私リリアーナ様と一緒に、暮らしている猫のキャルルです。』
「カルマだ。というかどうやって喋っているんだお前は」
『魔法です』
「私が作った魔法を3つを使ったの」
「3つ?」
「えぇ、1つは体を作るものよ。といってもそんなにうまくいかないし使ったらやばいやつよ」
「そして2つ目は魂を作る魔法。そして3つ目は言語魔法」
ぽかんとリリアーナの話を聞いてるカルマだが感心しているようにもみえる。
「年齢が幼かったから何でも使っちゃえって感じで…そしたら」
「こいつができたんだな」
「えぇ、でも後悔してないわ。というか逆によかったと思っている」
「よかった?」
「えぇ、この子の助言で魔法の作成がうまくいったりもするし、1人で魔法を作り出すのは体力も必要だから。彼にも魔法を使えるようにしてるし。」
キャルルを抱きかかえて言う。抱きかかえられているキャルルはとても幸福そうな顔をしている。
「確かにそうだな。」
「でも、婚約者があなたでよかったわ。」
「なぜだ?」
「結婚はとってもしたくなかったし、今もその気持ちは変わらない。けど、魔法の事を分かってくれる人のほうがマシ」
確かにそうだ。魔法が使えないとか言ってるくせに自分で魔法を作っているのだから。
「それは褒め言葉として受け取っておく。これからよろしくリリアーナ、そしてキャルル」
「こちらこそよろしくカルマ」
『よろしくお願いします。』
そして私は彼との生活が始まるのだった。
13年前…
『リリアーナ』
声を聞いて振り返ると可愛らしい10代後半の女性がいた。
「おねぇさん、だ〜れ?」
『それはいえないわ。でも、これだけはあなたにあげる』
するとその女性はリリアーナの額にキスをした。
その時、リリアーナにある記憶がよみがえった。
『この記憶をあなたが持っている以上この世界のルールを守りなさい』
「ルール?」
リリアーナが首を傾げる。
『えぇ、それは新しい魔法を作ってこの世界を《洗脳》させなさい』
「洗脳って!」
記憶が戻ったリリアーナは状況が把握できなかった。
『この世界を変えなさい。変えないとこの世界は…この世界と地球は’消える”』
リリアーナは硬直した。
「で、でも私は魔法が少ししか…」
するとまた額にキスをされた。
『この力は誰にも言わないこと。わかった?』
すると少し沈黙の時間があったが、リリアーナは口を開いた。
「えぇ。私、守るわ。自分が育った場所達を。」
『では、検討を祈るわ』
そしてその女性は消えてしまったのだ。
(私の名前は陽菜野 舞美。でも、今はリリアーナ。私は昔の私の故郷と今の私の故郷を救う!)
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