52.秋の終わりと麗子の怒り
(秋の終わりと麗子の怒り)
愛実は中学二年生になったことで、少しは大人に成長したのか、それとも麗子の努力の甲斐あってか、良子先生の母なる愛情かなのか、愛実は運動会でも、合唱コンクールの伴奏でも喜んで引き受けた。
運動会では、野球部の星野と麗子の活躍で、みごと優勝することができた。
そして、その勢いと団結、愛実のピアノ伴奏があれば、合唱コンクールも優勝間違いなしと麗子は自信を持って望んだ。
しかし、結果は準優勝だった。
では、どこが優勝したかと言うと、なんと正美のクラスだった。
正美のクラスは、自由曲にミュージカル『サウンドオブミュージック』の一場面である『ドレミの歌』をミュージカルの一場面そのままで演技を交えて合唱したのだった。
それも英語の歌詞を使っての本格的なものだった。
コンクールの後で、正美が麗子と愛実のところにやってきて、優勝の喜びを見せつけに来ていた。
「まさか優勝できるとは思わなかったわ!」
控えめに言ってはいたが、その顔は嬉しさを自慢したくて、いたたまれない感じだった。
「おめでとう。まさか合唱コンクールなのに舞台の上でミュージカルをやるとは思わなかったわ」
麗子は、悔しさを言葉尻に隠して笑顔を繕った。
「そうでしょう。ちょっと度胸がいったけどね。アミの伴奏に勝つためには、このくらいの斬新さがないと駄目だと思ったのよー」
愛実も横から、正美を祝福して……
「そんな伴奏なんかで左右されないわよ。ピアノコンクールじゃ―ないんだから。正美ちゃんのミュージカルがよかったのよ。息もぴったり合っていて、プロのミュージカルを見ているようだったわー」
愛実は、麗子より素直に祝福した。
「本当、アミにそういってもらえれば、私たちの合唱も本物ね。練習した甲斐があったわ。なんたって他のクラスの倍くらい練習したわよ。それを考えると優勝して当たりまえなのかな―」
麗子はそれを聞くと、この悔しさを愛実に向けた。
「アミがちょくちょく練習サボるから負けたのよっ!」
「そんな、ちょっと出れなかっただけじゃない。私のせいよりプロデューサーが悪いんじゃないの?」
「それ、私のことっ!」
麗子は向きになって愛実を睨んだ。
「ま―あー、ま―あー、抑えて抑えて、準優勝だからいいじゃないー」
正美が間に入って、気休めを言って慰めようとしたが……
「なにいってんのよっ! 優勝できなかったら、後はみんなゴミと一緒よっ!」
正美は、かっかと燃えている麗子に余計な油をそそいでしまった。
こうして、喜びも悔しさも、あじわった中学二年生の秋も終わろうとしていた。




