47.正美の計画と色鉛筆
(正美の計画と色鉛筆)
翌日、愛実はやはり海にも行かずに、また香奈ちゃんをモデルにして、昨日の絵の中塗りだ。
「アミ、私たちは、どうすればいいのよ?」
麗子は、昨日と同じ質問をした。
「海でも行って来たら、私手が離せないから……」
と愛実も昨日と同じ答え。
「正美、……」と正美に泣きすがる麗子だった。
香奈は、それを見て、くすくすと笑っている。
そんな麗子を見て、愛実は……
「レイも、描けばいいじゃない?」
「私、道具持って来てないもの―」
「色鉛筆なんか、香奈ちゃんあるわよね?」
「うんっ、持ってるよー!」
「色鉛筆ね―え、いいかもしれない!」
麗子は昨日からの愛実の製作風景と、香奈の麦わら帽子とひまわりに刺激されて、少し創作意欲が出てきたところだった。
「正美、モデルやってくれる?」
「いいわよ!」
「じゃ―あ、服脱いで……」
「レイっ、何考えているのよっ!」
正美は横目で麗子を睨みながら怒った。
「やっぱりね……」と、麗子は正美の普通の反応に物足りなさを感じながら、普通でなかった自分を振り返って見ていた。
「ま―いいか、香奈ちゃん。色鉛筆貸してー?」
「いいけど私、動けない……」
「じゃ―あ、少し休憩しましょう。あっ、それと香奈ちゃん、私のバックの中にスケッチブックも入っているから、それも持ってきてー」
香奈は、急いで家の中に入って行った。
しばらくすると、香奈とお母さんが西瓜を持って出てきた。
「今、役場の観光課の人から電話で、日曜日に地引き網をしてくれるっていうの。朝早いけど行って見る……」と香奈の母。
「ホンと、いくいく! これで、アミにお正月の風景を見せてあげられるわっ!」と正美。
「え―え―、どう言うこと?」
愛実は、楽しそうに話す正美を見て、早くその訳を聞きたかった。
「それは、後のお楽しみー!」
正美は、もったいぶって言わなかった。
そして、麗子は正美をモデルに描こうと思ったが、正美も描いて見たいと言うことで、結局、愛実の隣で香奈ちゃんを一緒に描くことになった。
「なんか私、みんなに見つめられて、本当のモデルさんになった感じ―」
「香奈ちゃん、立派なスーパーモデルよ!」と愛実は、うっすらと笑みを浮かべてすましている香奈の表情が気に入っていた。
「香奈ちゃん、どきどきするでしょう。その感じが快感なのよね!」と麗子は、香奈の気持ちがわかるように話した。
「何か、レイちゃん。モデルやったことあるの?」と正美は不思議そうに訊く。
「ない、ない! あるわけないでしょう―!」
麗子は慌てて、むきになって否定した。
「うん、お姉ちゃん、凄く恥ずかしい感じだけど。慣れてくると、嬉しいい気持ちっ!」
「そうよー、みんなの注目を浴びるって、嬉しいことなのよ―」
麗子は、再び香奈ちゃんに言った。
「それなら今度、レイも描いてあげるっ!」
「い、いいわよ。私は、……」
やはり麗子は、愛実の申し出を慌てて拒絶した。
四人は、またも大笑い……
夏の日差しがまぶしく照りつける午後になっても、四人の心の中は、それ以上に燃えていた。




