AI天使『アリス』さんのありがたいアドバイス
(第二話)
ヒュゴオオオオオォォォーーーッッ!!
俺は物凄い風切り音で目を覚ました。
いや、待て何で俺は寝てたんだ?
だってクソ女神に落とし穴に落とされて、それから––––––
ヒュゴオオオオオォォォーーーッッ!!
「んぎゃあああああぁぁぁーーーッ!!?」
成程ね!? 現在、絶賛落下中ということなのね!?
推定上空一万メートル地点から俺の異世界転移物語は始まったようだった。
始まりと言うか、このままだともう終わりなんじゃないかな?
これエンディングというか、「大地」と言う名のクレジットカードまで一直線になってない? どういうこと!? えっ、これで本当に死ぬの?
ピロリロリーン♪
「なんだこの音は・・・・・・?」
「異世界転移勇者サポートAI天使『アリス』起動しました。」
「うぉっ、なんだこれ!? 妖精?」
「フェアリーではありません。エンジェルです。
このままでは落下の衝撃で絶命してしまいますので、すぐに地面に向けて攻撃スキルを放って落下の速度を低下させてください。
スキル一覧を自動検索して、閲覧モードに致します。」
ヴィンッ。
「うぉっ!? すげーっ、一瞬でゲームのスキル画面みたいなのが開いた!
どれどれ、攻撃スキル、攻撃スキルっと・・・・・・「お料理スキルLv.MAX」、「お掃除スキルLv.MAX」、「お洗濯スキルLv.MAX」、「お庭弄りスキルLv.MAX」・・・・・・おい、攻撃スキルってどれ?」
「・・・・・・おかしいですね。普通は一つくらい攻撃スキルが出るものなのですが、ここまでとなると野生では決して生き残れないレベルで闘争心が欠落していく人間でないとありえないスキル構成ですね。
本当に勇者なんですか? 鈴木一郎様?」
「だから田中なんだって!? 俺、田中太郎!
っていうか、俺どうなんのこれ!? お掃除スキルとかレベルMAXまで到達したら漫画の戦闘メイド的な超人的な動きが出来るようになったりしないの!? お料理スキルも極まったら包丁技術が攻撃スキル並みの威力になったりしないの!?」
「しません。」
「即答かよ!?
どうすんの? どうすりゃいいの!?」
「そうですね・・・・・・レベルマックス状態の「お掃除スキル」は自動発動と発動時間の予約設定が可能なので、自分の死体の後片付けは出来ますね。」
「めっちゃ要らない情報! なに? 異世界転移後、早々に死んだ役立たずなんだからせえて異世界人の掃除の手間を省けってのか!?」
「それ以外にできることとなりますと・・・・・・神に祈るほかありませんね。」
「絶対嫌だ!!」
こっちは、その神のせいで死にかけてんだよっ!
地面に激突するまであと三秒を残して、俺は渾身のキレのツッコミを入れていた。