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魔王様はVtuber  作者: 伊可野万


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7/7

最終回『魔王様、魔界へ帰る』

 Vtuberの研修が終わり、某と娘は無事にVtuberとしてデビューした。初配信から暫くはあわふくうにとのバーターという体裁でコラボをしたのだが、人気が出て次々と案件をもらえてスターダムにのし上がっていったのは娘のフラルの方で、男性Vtuberである某のグッズはこれっぽちも売れず、CD販売の話も無くなり、ある日突然、某だけあわふくうにから業務委託契約終了を告げられてしまった。

 某はうに童に抗議したが、採算が取れないと冷たくあしらわれてしまった。某はならば娘と共に魔界に帰ると脅しをかけたが、娘のフラルは某を裏切り、「人間界でVtuberとして生きていきます」と言われ、親子の縁をあっさりと切られてしまった。

 

 魔界に帰る方法などない。娘のフラルは突然某を煙たがり、「これからは別々に暮らしたい」と告げられ、事実上追い出されることになった。しかし娘と比べて薄給の某に家を借りる金などなく、某は自らの配信で活動終了を告知したが、同接は2人しかおらず、コメントは1人だけ、「ハーラル様の次回作にご期待ください」だけだった。


 日本という国の社会構造を知らず、職歴もない某に出来る仕事などなく、タイムリーという誰でも雇用してくれる隙間バイトで小銭を稼ぎつつ、ネットカフェを転々とし、気が付けば世間でいうネカフェ難民という存在になっていた。

  

 こんな生活、いつまでも続けていられない。

 そう考えた某は全裸になり、渋谷のスクランブル交差点を全力疾走した。当然の如く警察に通報され、捕まった。だが警察は某を刑務所に入れてくれず、書類送検され外に放り出されてしまった。これは不味いと思った某は、再び全裸になり、今度はみずからのイチモツを若い女性の体に押し付けた。女性は悲鳴を上げ警察を呼び、某は再び逮捕された。

 しかし公然わいせつと性加害は刑事罰にならず、某が刑務所に入ることはなかった。


 最後の手段として、某は自らの内に魔力を拡散させて渋谷を火の海にしてやろうと考えたが、そんなことをしたら娘の人生も詰んでしまうため、出来ず、某はコンビニで買った冷たいおにぎりを誰もいない深夜の公園で一人食し、涙を流した。

 

 すると突然某の足元に次元が歪んだ穴が顕現した。どうやら某の涙が土に触れたことで、魔界へのゲートが開いたらしい。

 魔界に帰ったら、性格の悪い勇者に虐められて、また泣かされてしまうだろう。だが、人間界でこんなみじめな思いをするぐらいなら、せめて魔王らしく勇者に挑んでやろうじゃないか。


 そして某は一人魔界へ帰った。ほどなく再び勇者がやってきた。


「あれ、ハーラル君、キミ、人間界に逃げたんじゃなかったの」

「ふふふルクレ何とかとやら、某は、力を蓄えて帰って来た、アイルビーバック、という奴だ」

「ったく、あのさ、俺忙しいからささっとやっつけちゃうからね。」

「ハーラル死すとも大義は死なず! かかってこい、勇者よっ」


 そして某は勇者と真剣に戦い、剣でぶった切られ、血が噴出した。手についた血を見た某は「なんなんじゃ、これはーーーー!」と叫び、そしてうつ伏せに倒れ込んだ。最後の瞬間、脳裏に逡巡したのは、父を容赦なく捨ててうに童と楽しそうにコラボ配信して人気Vtuberとして活躍している娘フラルの元気な姿だった。うにフラ、というコンビを組んでいるらしい。ふふ、ふふふ。


「娘が幸せなら、それで、いいのだ・・・ぐふっ」


 こうして、某の物語は終わった。Vtuberとやらにはなれなかった。結局男性Vtuberなんかに需要など無いのだ。魔王として威厳を持って死ねて本望である。


 魔王様はVtuber。 


 了。


短い内容でしたが、ご愛読ありがとうございました。

 伊可乃万先生の次回作にご期待下さい!

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