特殊魔物戦
リビングアーマーが雄叫びを上げると仲間を呼び寄せた。
ただ来たのは同族では無く、怨念の篭った頭蓋骨『ゴースト』か。
これはもしかして……。
「二人共、アイツ成長するぞ」
「成長?」
今後の為にもここは止めずに様子を伺おうか。
リビングアーマーは自分の頭を外すと地面に転がり、空っぽになった頭にゴーストを取り付けた。
さしずめ『ゴーストアーマー』か?
体は鎧、頭のみ骸骨の不格好な姿をしているが魔物同士の利点が合わさった姿だ。
奴はそれを見せつける様に手から紫の火球を投げつけてきた。
「来たか!」
俺は即座にその火球を剣ではじき返し、打たれた球はゴーストアーマーに直撃し爆発するが、怯みすらせずに煙の中から真っ直ぐ走ってくる。
それを想定していた俺はそれをかわして斬りつけた。
「どうするの?」
シオンが聞いてくる、それに対して俺は叫ぶ。
「囲んで頭を狙え! 弱点は変わってない!」
「了解!」
二人で牽制してセリカでとどめを狙う。
そして俺の読み通りセリカの渾身の右ストレートが頭部に直撃し、ゴースト部分が粉々に砕け鎧も動かなくなった。
「熱っつーーーー!」
セリカが悲鳴を上げて手を抑える。その姿にシオンも狼狽えだす。
「大丈夫⁉」
「ただの炎だ! やけどの手当てぐらいしてやる!」
経験者が言うんだから間違いないない。
ふーふーと自分の手に息を吹きかけているセリカを他所に俺は気になっている事を聞く。
「兜は?」
「それは大丈夫! 私が回収したから!」
「お、ありがとう」
シオンはその証拠にゴーストアーマーが捨てた兜を見せつける。
こうして依頼にあった魔物は全部倒したので、俺達は一度、街へ戻る事にしたのだった。
「二人共、強いんだな」
ギルドで依頼達成の処理を終えて、通りを歩きながら二人に語り掛けていた。
リビングアーマーは中堅魔物と言われるぐらいの強さを持っているからなそれを一人でも戦えている所を見ると、Bランクパーティの名前は伊達じゃないって事か。
「ふふーん!」
誇らし気なセリカにシオンが聞く。
「手はもういいの?」
「思い出させないで……痛くなってきた……」
セリカは顔を歪めて右手をさすり出す。
さっき言った通り、手当てをしないとな。
「良い薬を持ってるんだ。言った通り診てやる」
「待ってました!」
何故か嬉しそうなセリカを筆頭に俺達は噴水広場に来た。
噴水の縁に座ってセリカに言う。
「右手を出して」
「ほい」
俺が懐から出したのは一個の瓶、ラベルには氷晶樹と書かれ中身には透明なジェル。
「それは?」
セリカは知らなかったのか聞いてくる。
「氷晶樹の樹液。それに薬草のエキスを混ぜ込んでお手製やけど直しにしたんだ。ちなみに温暖な場所に行く時に体に塗ると、イイ感じに体が冷えるおまけ付き」
「へぇ~」
「ただ体質は合うか分からないな」
少なくとも金剛爪牙のメンバー、俺自身は問題無かったけど使うべきだったか?
「絶対に合うよ!」
元気よく話し嬉し気なセリカと、ただ薬を手に塗りたくっている姿にシオンは不服そうだった。